第49話 のじゃロリ元賢者×新・賢者③


ーゾンビ博士の根城ー



「王都に行きたい?んーそれは難しいんじゃないかなー?」

「そんな!この前の魔道具でなんとかいけないの!?」


ルーはゾンビ博士に頼み込む。ベルを、ならすと一瞬で指定した目的地に飛んでいける魔道具を博士は持っている。ゾンビ博士はゾンビ研究家であり、魔女なのだ。


「うーん正直難しいんだ。魔力が減った範囲もこの前よりも広がってる。王都を目的地にしてどこに落ちるかわからないんだよ。」


「そんな……」


「それに大勢で行ってもし捕まったらそれこそラニャくんを助けられないんじゃない?」

「……じゃあどうしたら……!」

「ラニャくんはどうやって王都に向かったのかな?」

「多分ドラゴンのティアに乗せて貰って……」

「つまり、空からか。それなら同じように空からいける人しか無理だね。長距離飛行ができる種じゃないと」


「そんな……」

「私はほうきも使えるけど、魔女らしく飛ぶよりもバジリスクで地面を這ってったほうがはやいし……」

「誰か……」

「私も飛べはしますが、王都まではさすがに無理ですぅ~……」


ルーとサロは悩みこむ。


そこにグレイがやってきて


「飛ぶなら~ナタちゃんもできるよね~」


秘策を述べた。



「「……それだ!!」」



「あー確かにあの機械の子なら行けるかもね~偉いぞ~さすがはグレイだ!」

「えへへ~」


猫なでされるグレイは心底うれしそうだ。


「彼女はナタリアくんに聞いたところかなりの戦闘能力だっていってたね。彼女に一任するのが今回は得策かもしれない。力になれなかった代わりといってはあれだけど、複数名を遠くへ遅れる魔道具も考えておくよ。」

「ありがとう!博士!グレイちゃんも!」

「「いってらっしゃ~い」」

どこまでもマイペースな二人だった。




ーナタリアの工房ー


「ラニャが出てどのくらいなの?」

「多分半日くらいかな……」

「うーん、さすがにちょっと遅いわね。わかった。ナタ、行ける?」

「あたりめーだろ。」

「お弁当ももってね。随時連絡もすること。ハンカチ持った?」

「母ちゃんかよ。目的地は王都ガラルド、任務はラニャを連れ帰ること。敵はぶっ殺すのか?」

「だからなんでいきなり物騒な……制圧優先で殺さないようにして。ラニャの立場もあるからね。」

「ラニャが死んでたらどうすんだ?」

「!!」

「……」


単身で王都に向かったのだから正直ない話ではない。それはナタ意外が頭から避けていた可能性だった。


「……ないわ。あいつがそんな簡単に死ぬわけないわよ。生きたままつれてかえって」


「了解」


カシュカシュ

ゴー


背中のブースターが起動状態にはいり


ブォッ!!


ナタは勢いよく空へ消えた。







ー王都ガラルド・賢者の部屋ー


「……んん?」


ラニャは目を覚ました。

五体満足で身体に異常はない。

むしろ手すら縛られていない状況が恐ろしかった。


どうあがいても、手中にあると言うことを自覚させたいのだろうか。


「悪趣味じゃな」

ガチャッ


「やあ、起きたかい、ラニャ」

「レイス……なんでとどめをささん」

「久しぶりに話がしたくてね。昔話を出来る者はもう君しかいないからね。」

「そうじゃろうな。おたがいに年をとったからのぅ。」

「そうだね。もう50年か。」

「じじばばの昔話に茶も出んのかここは。」

「ははは。ごめんごめん。忘れてたよ。」

「まったく……なんでこんな事をしてるおおぬし」

「……復讐以外にあるかい?」

「復讐?……もしやエリザのことか


ラニャとレイスが出会ったのは軍人時代。


レイスはエリザという酒場で働く女性と仲が良かった。白い長い髪の女だった。


戦争は激しさを増し、彼女の酒場も戦火に飲まれ、噂によると彼女は戦争で亡くなったらしい。


そしていつの間にか、レイスは軍人をやめた。


ラニャと出会ったのもこの頃。


初めは白髪のラニャをエリザと勘違いして声をかけた。らしい。



「新手のナンパにしては下手じゃと思ったのぅ。顔はいいんじゃが、おぬしが見てたのはわしじゃなく、わしに似たかつての恋人じゃろ?」

「ははは。あの頃のラニャは若くて元気だったなぁ。ところでエリザってだれ?」


「そうじゃろそうじゃろ。じゃが、わしも軍人を辞めて娘の事で一杯一杯じゃったから、お互いに距離ができ……え?」


「え?」

「え?」



どうやら話がかみ合っていない。

過去の恋人絡みの話ではないらしい。


「エリザが死んだ恨みでこんな事をしとるんじゃろ?」

「エリザ……あー酒場の!彼女は別に死んでないよ。それにそういう仲でもないし。」

「え~……」

「僕が復讐したいのは君だ。僕は君が欲しい。だから、君を殺してそのまま君の死体を使役する。そのために君をおびき寄せるための作戦が妖精王と剣なんだよ。」


「え~……」


……狂っている。かみ合わない。


他人からみたら全く支離滅裂な話でも本人の中では筋が通っているのだから。ラニャは純粋な殺意に恐怖した。


「さて、どうしようかな。媚薬で痛みを和らげながら毒で死ぬか。んー1番きれいに死ねる方法でいきたいから~……」



「……」


黙って目を閉じるラニャ。

かける言葉は見つからない、でも、止められるのは自分だけだとも思う。


「(どうするかのぅ……)」


ラニャは考える



そんなこともお構いなしに、嵐がやってきた。


ババババババ

ドーーン!!!

ガラガラガラガラ



レンガの壁をぶち破り何かが部屋に侵入、それは銀色の翼。



「予定通りだ。」

「ナタ……!?」

「ずらかるぞ。ラニャ」

「やだ……かっこいい……」

「馬鹿やってんな。ひとりで帰るぞ?」

「やーだー!」


ガシッ

ラニャはナタの腕を掴む。


「待ちたまえ。君。」「お前動くなよ」


ほぼ同時にお互いに警告した。


ナタの左手は指先から銃弾が連射できる。それを今、ナタはレイスに向けている。臨戦態勢。


「すまんな、レイス。わしは女の子が好きなんじゃ。」

「……」

「今の生活を手放すわけにはいかんのじゃ!さらばっ!」


「……残念だよ。ラニャ。」


ゴー


と音を立て空へ消えていくラニャを後ろに載せてナタは帰る。


「だが、王都からは逃がさない」 


ガン!!


「いてっ!」

「!?」


飛び去ろうとするラニャ達を防ぐように、王都をかこうように結界ができていた。







続くのじゃ!


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