第34話 のじゃロリ×少女ドラゴン②

今日の夕飯はラニャのハンバーグ。

これだけは他の誰よりもうまく作れる。


「ハンバーグ?」

「そう!お肉を固めて焼いた食べ物だよ!」

「お肉を……固めて……」


「ティア。今日は夕飯にそれを作るが予定はあるかぇ?」

「いえ!ドラゴンなので自由です!」

「そうか。じゃ、世間話でもしながら見学して夕飯まで過ごそうのぅ。」

「はい!お願いします!」

「師匠のハンバーグは最高だからね!」

「まったく。はしゃいじゃってのぅ。」


ルーとティアが肉をこねる。

並ぶと弟妹のようだが

ひとりは犬耳で

ひとりは角がでている。

普通ではない。


「うわーなんか面白い!」

「でしょ!混ざり終わったら好きな大きさに丸めていくんだよ!」

「大きくてもいいんですか?」

「さすがにフライパンにはいるくらいの……」


「楽しそうですね、ルーちゃん♪」

「じゃな。同じくらいの友達が出来てよかったわい。」


人外の間では、年齢というものはあまり意味を持たない。

それぞれ尺度が違う。

というより、数えていない。

精神的に、会話的に、波長が合えばそれがいいのだ。ティアの実年齢は本人も覚えていない。


「そうそう!いい感じだよ!ティアちゃん

!」

「ルーちゃんはさすがにうまいね~」

「まあね♪」


「ふふっ。」

それを見守るラニャは優しい目をする。

母のような祖母のような。


「キューン♡ご主人様!もう一度今の流し目を……!」

「ん?なんじゃ?」

「今、すごくいい顔でした……♡聖母のような微笑みと流し目……」

「……サキュバスも悪魔なんじゃから、聖母とかいうんじゃないの!プライドもとうよ~?」

「んー別になんでもよくありません?」 「よくなーい!」


「師匠ー!丸めたよー!」


「あ、できたみたいですよ?ご主人様!(すっとぼけ)」


「あーはいはい、今いくぞー」


大小さまざまなハンバーグ(生)が並んでいる。特に大きいのが2つ。


「これは……おぬしらのか?」

「「うん!」」

「そうか。ま、生でも2人は平気じゃったな。」

「うん!さー師匠!出番だよ!」

「お願いします!」

「はいはい。」


ジューー……

パチパチパチパチ……


「おおー!!」

「美味しそう……」

二人はラニャにくっついてフライパンの肉を見守る。

「ほれ二人ともくっつくと油がはねて危ないぞ?」

「大丈夫だよ、それくら、あちっ!?」

「私はこう見えてもドラゴンなのでだい、あちゅい!!」

「だからゆうとるじゃろまったく。はは。」


まるで親子の台所。

サロは後ろから見ていてジーンときていた


「ほいっとな。」

フライパンでハンバーグをひっくり返す。

空を飛ぶハンバーグ。


「「おおーー」」


「ほれ、二人はサロとソース作っとくれ。サロー?」


「あ、はーい。」

「えー、もうちょっとみていたーい!」

「後でいくらでも見れるわい。ほれほれ。」


ラニャは二人をサロの方へうながす。

内心では2人がくっついている姿は形容しがたいほど愛おしい。でもそれでは料理がすすまないのである。


ー数十分後ー


「「「「いただきまーす!」」」」


「「おいしーーー!!!」」

「んー、どうして私のとは違うのでしょう?負けた気分です……おいしいでしゅ……」

「どうじゃ、ティア?自分でできそうか?」

「はい!何とか作り方はわかりました!」

「そうか。それはなによりじゃ。」


食事をしながら談笑を楽しむ。

そこで一つ聞きたいことを挟んでみる。


「つかぬ事を聞くが、ティア、おぬし妖精の剣という言葉を最近どこかで聞かんかったか?」

妖精王の行方と、剣についての問題もほっておけないため、こうして神秘達には毎回聞くことにしている。


「妖精の剣ですか……んーどうでしょうか。」

「最近なにかドラゴン界で変わったこととかなかったかぇ?」

「んー、あ、ラニャさんと同じ、賢者ってひとは最近来ましたよ!」

「なんじゃと!?」

「はい。会ってはなしたわけではないのですが、賢者を名乗る男が来た話を仲間から聞きましたね。どうやらドラゴンを探してたみたいですがみんな見えぬふりでやり過ごしたらしいです。」

「ま、賢明じゃな。関わらん方がいいぞ。おぬしも気をつけるんじゃぞティア。」


「はーい。あ、そうだ、お代です!」


ゴトッと重い音で何かが机に置かれた。

石?


「?なんです?」

「こっ、これは……」

「??」

ラニャだけは何かを知っていた。

「これはドラゴンから一生に一度、一体に一つしか取れない龍核石りゅうかくせきといいます。」

「へぇ~」「あらあら」

「おぬしら、これの価値がわからんようじゃのぅ……」

「そうですね……」「うん……よく知らない。」

「これはドラゴンの魔力の塊。持ってるだけで魔力を補充し続けられます!」

「魔道具店に売れば、家二つぐらい買えるぞ」

「「えええー!?」」

「今の状況下だと非常にありがたいアイテムじゃ。マジで。でも、よいのか?」

「はい!まだいっぱいありますから!それはあんまり仲良くなかったドラゴンの物なのであげます!それで足りますか?」

「いや、足りるって言うか、お釣りがでるが……」

「それならよかった♪」

「まぁ、他にも困りごとがあったらまたくるとよい。歓迎するぞ?」


ラニャは優しい顔で微笑む。


じーー…

ティアはラニャを見つめる。

見つめ合っているとティアの顔が少し紅くなる。

「??」

ガシッ

ティアはラニャの隣に座り腕にすがりつく。そして顔をラニャにスリスリし始めた。


「な、なんじゃ!くすぐったいぞ!?」

「私……ラニャさんが好きになってしまいました……!ここにおいてください!」

「はっ!?」「へっ!?」


突然の告白。

これは

ライバル登場の予感!?


サロとルーは密かに警戒度をあげた。


「ラニャさんと暮らせばハンバーグ食べ放題だし……ラニャさんは優しくてきれいだし……食べたくなっちゃうけど我慢するから私をおいてください!」


「いやーうんーそうじゃなー」

「……だめ……?」

かわいい顔で上目づかいをする。

あざとさのない子なのでこれは本気で好意を向けているのだ。


「ヒュッ……あ、どうしょっかな~?エヘヘエヘヘ」

ラニャは気持ち悪い顔をまたしている。


「ご主人様、悩む必要はございません。」

「へ?」

「そうだよ、師匠。なぜなら」

「なぜなら?」

「「部屋がもう空いてないから!」」

(※一部屋開いてます)


「あれそうじゃっけ?たしか」

「はい、ご主人様~あっちで楽しいことしましょうよ~♪」

「えっ!?なになに楽しいことって!?」

「ふふ♪それは~行ってみてからのお楽しみ~♪」

ラニャをうまく誘導し、目でルーに合図を送るサロ。


「あぁー待ってー!!」

「ティアちゃん。今日は僕の部屋で泊まっていこう?ね?」

「う、うん……。」



翌日もティアはずっとラニャにくっついていた。ルーの部屋を抜け出してラニャの布団に潜り込んだところをサロに見つかっていた。


ドラゴンの愛情表現はわかりやすく、スピーディーで、そして、激しい。


なんとか帰すことには成功したが、2日に一回くらい通ってくるそうだ。


「(通い妻か……)」

「ご主人様?」

「(幼妻で通い妻……)」

「まーたろくでもないこと考えてますね?」

「一夫多妻っていいよね……」

「口にでてますよ?」

「あっ」


ラニャのハーレム生活は賑やかさを増していく。




つづくのじゃ!






ーメモー


ドラゴン

:幻想種の頂点。世界中に伝説の残る巨大神秘。現代ドラゴンは共生をはかるため人型に化ける事ができる。そもそもドラゴンは魔力タンクなので、魔術師が契約する場合も多い。尻尾は隠せるが、角だけはなかなか隠せない。主食は肉で大食い。




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