第30話 のじゃロリ×夜刀神(やとのかみ)の女②
ネムコは
妖精王を
一刀両断してしまった!
「ぎゃぁあぁああ!!!!」
「なっ!?」「えっ!?」「ち、父上!?」
「ふぅー……」
ネムコは角が少し高くなり、長い銀髪は蛇の鱗のような模様ができている。
『みな、よく見よ』
「「「えっ?」」」
頭の内側に直接話しかけられたような感覚だった。声はネムコのものだ。
「うううう……」
もう一度よく見ると真っ二つにされた妖精王が治り始めていた。
「えっ!?父上……?」
「ひぇえええ!おたすけぇ!!!」
それは女の声だった。
「なんなんだ?一体……」
「体がぐにゃぐにゃで、液体みたいに……」
「命だけはおたすけぇ!!!私も呪いに逆らえなかったんですぅうぅう!!」
妖精王の姿はなくなり一度ドロッと液体化してまた人型になる。今度は女の姿だ。
「おぬし、スライムじゃな?」
「はい……。妖精王になりすましてここにいろと……仕方なかったんですぅぅー!!命令に逆らえば呪いで焼け死んでしまうんですー!!!」
スライムは切られても死なないが燃やされるとさすがに死ぬ。その自動的な呪いをかけられていたらしい。
「なるほどのぅ。だいたい話が見えてきたわい。」
「??師匠どういうこと?」
「そうだラニャ。説明してくれ。」
「父上は一体……。あれは誰なの……?」
「あれはな……」
『魔を、払った。』
ネムコは一言、そう言った。
「魔を……払った?」
「……あの偽物妖精王、もといスライム女には呪いがかかっておった。それを一刀両断したんじゃろう。このネムコが。」
少し身体が元にもどるネムコ。
角も小さくなる。
「ああ。ついでに、名前も自分がなんなのかも、思い出した。」
「おぬしは誰なんじゃ?」
「私は
「「「「………神?」」」」
「カミサマ?」
「そうだ。ゆえに、あの妖精王の偽物を見破り呪を切った。」
「………(一同顔を合わせる)」
「「「「すいませんでしたー!!!」」」」
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「ネムコとかいってごめんなさいなのじゃ!もう言わないから許して……」
「まさか、神なんて……本当に?」
「なんか俺も謝らなくちゃいけない気がしてきた……ごめんなさい。」
「?皆、なぜ謝る?頭を上げてくれ。神なんてそのあたりにたくさんいるだろう?」
「「「「いやいやいやいやいいや」」」」
「む……そうなのか。それは知らなかった。だが、今まで通りにしてほしい。」
「ははーっ!」
一番ひれ伏しているのはラニャだった。
「それで、ヤトノカミ様?あれが偽物なら本物は?」
「ネムコ、もしくはヤトでよいぞ、ルー。そのあたりはラニャが何かを掴んでいるようだぞ。なぁ?」
「アッハイ!おそらく、妖精の剣ごと連れ去られたっていうのが妥当な線じゃと思いますはい!」
早速権力にひれ伏しているラニャ。
のじゃロリは気が小さい。
「おぬしも普通にしゃべってくれ。他の者も。よいな?」
「「「「はーい」」」」
「よし、皆いい子だ。そろそろ、ネムコにもどる。あとは皆でどうにかせよ。ではな。」
「戻るって?」
「……ん?どうした皆?」
「あ、ネムコお姉さんだ。」
「………zzz」
「あ、寝た。」
「ネムコじゃな。」
「ネムコだな。」
「あいつね。」
「一度話をまとめよう。どこか座れる場所はないか?ルインよ。」
「うちがあるわ。行きましょう。そのスライム女も連れてね?」
「アッハイ」
ルインの目が怖すぎる。
恨み骨髄である。
ルインの家にて状況を整理する。
スライム女の自白によると
妖精王と剣は共に連れ去られ、スライム女も操られ、呪いでしばられていた。
誰が連れ去ったのか、今どこにあるのかはわからないが、結界がなくなった原因はわかった。
「さすがにこの事を妖精達に伝えなくてよいのか?ルイン。」
「伝えるつもりよ。……わかってるだろうけど、わたしは妖精王の娘だから、この場合妖精王の代理として行動する責任がある。」
「うむ。」
「だから、代理だけど、妖精王として改めてあなた達に協力をお願いしたい。父上と剣を探すのを手伝って……ください。」
「もちろんじゃよ。依頼じゃしな。」
「うん!」
「ま、ここまでつき合ったなら最後までやるさ。」
「zzz………はっ。なんだ?」
「もういいわよ、あんたは……」
「「はははは!!」」
「あのーあっしはどうしたら……?」
スライム女はひとり、ノリについていけないでいた。
その後、ルインの号令で妖精達が集まり、妖精王と剣の事が知らされる。初めは皆困惑したが「全員で力を合わせて、妖精王を探すのよ!」というルインの力強い演説でのんびりした妖精達も気持ちを新たにした。
ー帰路ー
ルインは妖精の森に残り
一行は森を後にする。
「………さて。わたしは、ここでお別れだ。」
「えっ!?ネムコお姉さん、一緒に行かないの?」
「わたしはわたしで、この件を調査しながら旅をするよ。ルー。色々優しくしてくれてありがとう。」
「そんなぁ……」
しょぼーんと耳が垂れるルー。
やはり犬系怪物。人なつっこい。
「これを、ルーに。」
ネムコはルーに二種類の小さい笛を渡した。
「これを使えば私を呼び出せる。」
「えっ!?いいの?」
「ああ。こっちの青い笛なら吹いてから1日~3日でルーに追いつく。こっちの赤い笛はお急ぎ便で、吹いたらすぐに駆けつける。すごいだろ?もちろん無料だ。」
「な、なんかすごいね……でもありがとう!また会いたくなったら呼ぶよ!」
「ああ。わたしもまた会いたい。ではな。」
ネムコは森のわき道へ入っていった。
ー2日後ー
「ただいまー!」
「帰ったぞー」
「おかえりなさい皆様♪って?あれ?新人さん?」
「ど、どーも。スライムのミルカでーす。今日からこちらで働くことになりましたー!」
「色々と成り行きでな。助手二号じゃ。」
「変装から、鍵をなくしたときのスペアキーまで何でもできますよ!スライムならね!」
「じゃそうじゃ。では、スラ子さっそく風呂の準備じゃ。」
「合点承知って、スラ子!?しかもわたし熱いと溶けるんですけどー!ラニャさーん!」
「あらあら、また賑やかになってきましたねぇ♪」
「そうだね。でね!サロ!あっちですごい出会いをしちゃったんだよ!誰だと思う!?」
「あらら、ルーちゃん大興奮ですねぇ♪」
「そりゃそうだよ!だって!神様に会っちゃったんだもん!それでね!……」
再び日常が帰ってきた。
新たな神秘の出会いを経て
ラニャの占い屋はさらに賑やかになっていく。
続くのじゃ!
ーメモー
夜刀神(やとのかみ):
※この世界での解釈。
蛇のような髪に角の生えた神。この世界では魔を切る神として世の中を旅している。持つ刀は石動(いするぎ)といって魔を払う聖剣。聖剣のため刃こぼれはしない。神速の居合い切りで切った瞬間は見えない。
※この物語はフィクションです!
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