第29話 のじゃロリ×夜刀神(やとのかみ)の女①
ラニャ、リリー、ルー、ルインの四名は結界の消失した妖精の森へ向かっている。
野宿をしながらの2日目。目的地はもうすぐだった。
「このあたり、ずいぶん緑が多いのぅ。やはり土地が肥沃なのかぇ。」
「緑の匂いがすごいよ。」
木漏れ日が気持ちのよい森の中
そんな中に一人立ち尽くす者がいた。
「………」
「……?」
「なんだ?」
「……あの~」
反応がない。日の射す方をぼーっと見ている。
「あれー?」
「どうしたんだ?」
「………」
「おい、おぬし、大丈夫かぇ?」
するとゆっくりと頭を下げラニャを見る。
綺麗な銀髪で片目は前髪で隠れているが切れ長の美しい目と長いまつげで腰には刀。
ただならぬ雰囲気を感じさせる。
「えっ、めっちゃ美人じゃ……」
「…………寝てた。」
「え?」
「ん?なんだって?」
「寝てたじゃと?」
「……ああ。つい、日差しが気持ちよくてな。おまえたちは……誰だったか。」
「いや、初対面じゃよ……。」
「……そうか。」
そういうと女は近くの古株に腰を下ろし足を組む。腰の刀は古株に立てかけた。
立てば
座れば
歩く姿は百合の花
一つ一つの所作が絵になるような、そんな女。
「こんな所で一人、何してるのかしら?」
「……お前は……虫……?」
「妖精よ!!失礼ね!」
「妖精……ああ。そうなのか。」
「……」
「なんなのこのマイペースさは……!」
「まぁまぁ……」
イライラを隠せないルイン。
それをなだめるルー。
「おぬし、人ではないな?」
よく見ると小さい角が二本、頭にひょこっと出ている。神秘側の者だった。
「ん?……ああ。えっと……」
「……」
「……zzzz」
「「寝た!?」」
ラニャとリリーは声を合わせて驚いた。
「すごいマイペースだね……」
「イライラするわ……」
「おい、起きるんじゃおぬし」
「……はっ。なんだ、お前たち……?いやさっき会ったか?」
「ボケボケじゃな……」
「とりあえずおぬしここで何をしてたんじゃ?」
「……わたしは旅をしている。多分。うん。歩いていて一瞬、嫌な氣を感じ取ってここで調べていたが……何となく日差しが気持ちがよいのでここにいた……気がする。」
「ふーん。名は?」
「名前……なんだったかな……うーん……」
「……」
「あっこれ」
「……zzz」
「やっぱり寝た……」
「おーい、起きよ!」
ラニャはユサユサと女を揺さぶる
揺さぶって揺れるのは頭と大きい胸。
「おお……でっk……」
「……はっ。また寝ていたか。」
「おぬし名前忘れとるじゃろ?」
「……そうだな。思い出せない。」
「なら、いつも眠そうだからネムコとかネムとかでいいじゃろ。」
「そうか。お前が名付けてくれるのか。ネムコ……うん。いいな。」
「ま、仮の呼び名じゃ。ネムコ。」
「ああ。わたしは、ネムコだ。それで、お前たちは何をしてるんだ?」
ラニャたちは妖精の森の件を話した。
「なるほど。嫌な氣は、まだ、消えていない。そこにあるかもしれないな。私もおまえたちについて行ってもいいか?」
「行こうよ行こうよ!ネムコお姉さんも一緒に!」
「い、一緒にきてもいいけど、べ、別についてきてほしいわけじゃないんだからねっ!!」
「師匠……」
ラニャは、突然のツンデレ伝統芸を繰り出す。どうやらラニャはこのネムコが気になるらしい。もちろん性的に。
「ありがとう。では、ゆこうか。」
立ち上がりスタスタ歩き出すネムコ。
「お姉さん!?武器の剣忘れてるよ!?」
「ん?……ああ。わたしのか。すまない。」
古株に立てかけた刀を完全に忘れていた。
「んもーぼーっとしてるなぁ……」
その後も飛んでいる蝶を追いかけてふらふらといってしまったり、脇道に入ってしまったり、また日向でぼーっとしたりと彷徨が過ぎるので
「ほら、手をつないで行こう?」
「ん?ああ。行こう。」
ルーが手をつないで進むことになった。
・・・・
「ここよ。」
「ここよ、といわれても……なぁ?」
ここは普通の道の途中だ。
特になにがあるわけでもない。
「いつもはここから結界があるの。あれが印の石」
ルインが指さす方には確かに石が積んである。
「いよいよか。」
「妖精王さん、あえるかな?」
「………z」
「ちなみにじゃが、妖精王って強いの?」
「……並みの魔術師じゃ束になっても話にならない。賢者のあなたでも全盛期ならともかく今じゃ多分難しいんじゃないかしら?」
「い、いうのう……ふーん!わし負けないもんね!」
「というか戦うつもりなのか?ラニャ。」
「出来れば、というかお願いだから穏便にいきたい。」
「そ、そうか。安心したよ。」
「ふ、ふーん!びびっているとかではないんだからねっ!?」
「いや、びびっていてくれ……」
印の石を後に中へ進むと開けた場所にでた。
「うわぁ~……」
大きな樹が広場の中心にある。
周りには妖精たちがふわふわ飛んでいる。
「人間だわ!」「いや、狼だよ!」「耳生えてる!」「あれはエルフじゃない?」「あら?ルインじゃない?」「ルイン!おかえりー」「ルイン!お客さん?」「珍しいお客さんだねー!」
「「「かっ……」」」
「「かわいい~♪」」
ルーとラニャは声を揃えた。
ふわふわと飛ぶ妖精たちの姿は愛くるしい。
「なんか皆、ずいぶん明るいんだな。」
「危機感ってのがないのよ。」
「虫がいっぱい……」
「妖精だっての!!」
「ルインー!おかえりなのー!」
「アイラ。ただいま。」
アイラと呼ばれた妖精がこっちに向かってくる。
「お客さまなの?」
「そうね。妖精王に会いにきたってかんじ。」
「そうなの。皆様ようこそなの!わたしは、アイラなの!よろしくなの!」
「「よろしくなのー!」」
ルーとラニャはすっかり感化されている。
「早速、妖精王様に会いにいくの!あの大きな樹の所にいるの!」
「そう。今日はいるのね。」
「いるの!こもってるの……」
「そう……。」
「なんだか、浮かない感じだな?」
「ここ最近妖精王は籠もりがちなのよ。なかなか姿も現さない。」
「妖精王もきっと、眠いんだな。」
「あんたはいつも眠そうじゃない……」
「……たしかに。ネムコはいつも眠い。」
「話はまとまったの?それじゃいくの!」
ふわふわと飛んでいくアイラを追いかけていく一行。
遠くで見ているとそうでもなかったが、近くで見ると中央の樹はとてつもなく大きい事がわかった。
「でかいな……樹……」
「うん……大きい……」
「はぁ~見事なもんじゃわい……」
「関心してないで行くわよ。」
「「は~い」」
樹の中は空洞になっている。
真ん中に大きな丸い広場。
その奥に妖精王の玉座の間がある。
そこに
妖精王はいた。
「妖精王!!」
「……んん~……?おお、ルインか。戻ったのだな。」
妖精王というだけあって老体の妖精だ。白い髭が長くしわも深い。
「妖精王。この者達が賢者とその従者たちです。」
「おお、そうか。よくぞ参られた。」
「わしはラニャ。元賢者じゃ。妖精の森の結界がなくなって人が迷い込むようになったと聞いて、現地調査にきたんじゃ。」
「そうであったか。遠路からご苦労であった。」
「妖精王。この森に起きている現象は妖精の剣が失われたからなのではないのですか!?」
ルインがまくしたてる。
「妖精の剣か。妖精の剣は、確かにここにはない。」
「やっぱり!」
「もっと大儀の為に役立てる者へと譲り渡した。」
「!?」
「妖精たちも、もう世界に出て行くべきだ。ここもいずれ人間達に暴かれ、力を失う。ならばもうここにあの剣がある必要はない。」
「そんな!めちゃくちゃです!ここの者は誰も望んでおりません!」
「たが、皆拒んでもおらんだろ?何事もなかったように生きておる。ゆえに、この里に妖精の剣は必要ない。」
「そんな……」
「どういうことじゃ?」
「つまり、意図的に妖精王が誰かに妖精の剣をってこと?」
「……」
「今日は客人たちをもてなし、明日帰ってもらうように。よいな。」
「お待ちください!父上!」
「「「父上!?」」」
ルインは妖精王の娘だったのだ。
チャキン
「父上って……」
「?……ネムコお姉さん……?」
「……嫌な氣が、する。」
そういうとネムコは一番前に歩いて、でる。
刀に指をかけながら。
「ネムコ?」「どうしたんじゃ?ネムコ?」
「あんた、一体……」
「ふぅー……」
ネムコは息を吐く。
刹那。
「ーー
チャキ
-ーーーーーーーーーー
キィン
一瞬、刀を抜いたように見えた
右足だけ少し前にでていた。
ネムコは既に納刀している。
カチン。
スパーーーン!!!!!
「ぎゃぁあぁああ!!!!」
妖精王は玉座ごと
縦に
真
っ
二
つ
になった!
続くのじゃ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます