第17話 のじゃロリ×機械少女②

 ー工房ー

「ここに置くよ?」

「うむ。」

 ガシン

 機械少女を床に下ろすとすごい音がした。実際はかなり重いのだ。


「よし。じゃあ始めるわ」

「おぬし、機械もいじれるのか?」

「まぁ、多少はね。でも、ちょっとかかるかも。」

 機械少女は装甲がよごれ、傷つき、腕が片方取れている。

 幸い取れた片方も残っていたので接続できれば直りそうだ。

「右手と同じように、取れた左手を繋げればいけるはず。」

「顔はきれいなもんじゃな。」

「確かに。可愛い顔してる。」

「これ、動力源はなんなのかしら……電源とか無さそうだし。」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?なによ?」

 ラニャ、サロ、ルーの三人は不思議な顔をしていた。

「いや、この少女」

「どっちかっていうとぉ」

「神秘側(こっちがわ)の子だよね?」

「……え?」

 ナタリアだけがよくわかっていなかった。

「よく考えてみよナタリア。世の中にある機械と、この機械少女。技術差がありすぎる。明らかにオーバーテクじゃ。」

「つまり、人間が作ったものじゃないってこと?」

「じゃろうな。十中八九、動力は魔力じゃ。」

「あー確かによく見たらとんでもない精巧な作りね……。」

「どうする?やめるかぇ?」

「いや、ドワーフの意地にかけて直してみせるわ。」

「腕がつながったらとりあえず教えてくれ。」

「わかったわ。」


 ラニャは機械についての知識はあまりない。なのでここはナタリアがかかりきりになる。


「にしても、なんでわしの周りには神秘側(こっちがわ)のもんがこう集まってくるんじゃろうな。」

「みんなご主人様に助けを求めてるんですよぉ♪」

「でも師匠、嫌じゃないんでしょ?」

「……まぁ、のぅ」

「最近気づいたけど、師匠は子供に甘いよね。」

「あ!確かにそうですねぇ♪」

「うるさいうるさーい!ハンバーグ作るぞー!!」

「あ、逃げた。」

「あーん、私も手伝いますよぉ♪」


 夕飯は牛肉多めハンバーグ。

 ナタリアには食べやすいようにハンバーガーにした。

「うまいわね……あんた料理出来るのね。」

「一応、母だったこともあるんでのぅ。」

「世の中見た目じゃわかんないことだらけね。」

「うっさいわ。」

「あ、ワイン持ってきてよ?」

「酒のんで作業は出来んじゃろ?」

「いいから!」

 結局強引にワインを奪われ、ナタリアは酔っ払い、作業は中断した。




 ー翌日ー



 引き続き作業を続けるナタリア。

「さて、構造はわかったけど、頭痛い……」

「あんなに飲むからじゃ。」

「いいじゃない。……友達の家で飲むのって憧れてたのよ。」

「目的が変わりつつあるな……」

「大丈夫、もうすぐ繋がるから、午後には動かせるはず。」


 宣言通り午前中に腕がつながった。


「じゃあ、移動させるぞ?この台車に乗せよう。せーの」

 ガシン

「どこにもってくのよ?」

「聖域の森じゃ。」

「?なんで師匠?」

「あそこは空気中の魔力が段違いじゃ。動かせ続けるなら、あそこがいいじゃろ。それに動き回るにしても開けてるし」

「確かにそうですねぇ。もし暴走とかしても、家の中じゃなければ安心ですし♪」

「サロは新しいオーブンの心配じゃろ?」

「あは♪バレましたぁ?♪」

「さ、行こう」

「私が押すわよ。」

「鍵鍵~っと」

「あーん!皆様が冷たいですぅ~泣」


 あーだこーだいいながら、四人は聖域の森へ向かった。



 ー聖域の森ー


 湖のほとりまできた。

「ここらへんにするか。」

「魔力って与え続けなきゃいけないのかな?」

「高い技術じゃから、おそらく一度動き出せばそれなりに無尽蔵じゃと思うぞ。」


「そういうものなのかな?」

「うむ。では、やるぞ。」

「いよいよね。」


 ラニャは少女の背中に手を当て魔力を流した。


 ガタガタガタガタ

 ピー…カシュカシュカシュカシュ

 ヴォーン

 キィーーン………


 身体の中心で動力が回り出した感じがあった。


「動いたな!」

「すごい……」

「一体どうなってるのかしら……」

 ナタリアが不用意に近づく。

 嫌な予感がして

「ナタリア!不用意に近づくと!」

「え?」

 ナタリアが機械少女にふれると

「自動防衛システム作動シマス」

 とナレーションの後に

 ナタリアの腕をつかみ後ろに回して

 地面に押さえつけた。

「ちょっ、ぐえっ!」

「言わんこっちゃ、ない!!」


 というとラニャはポケットから小さい鉄球を3つ取り出した。鉄球は自ら動き出し、機械少女にくっつき、体をナタリアから引き剥がした。


「な、なんなのよ……」

「敵性対象ヲ検知。排除シマス。」

「まだ、人格の方が目覚めんか。すまんがおとなしくさせる故、危ないから三人とも家に戻れ!」

「師匠!大丈夫!?」

「こっちの空気は少し濃すぎたようじゃ。おとなしくさせたらそっちに連れて行って再起動させる。ルーも家で待っとれ!」

「わ、わかった。待ってるから!」

 グッと親指をたてるラニャ。


 三人は家に戻った。


「さて、傷つけんように止めんとな!」

 鉄球が飛んでいき少女の周りをぐるぐる回る。


鉄球は囮で、実際は


「拘束(バインド)!」


魔力の鎖で少女を拘束した。

そこへラニャが近づき

「おぬしの動力源は魔力。ゆえに魔力を活動に必要量以上に吸い取れば自動で止まるはず!吸魔(ドレイン)!」


「警告。魔力不足デス。魔力不足デス。緊急停止シマス。緊急停止シマス。」


 プシュー……


 かくして、機械少女は停止した。


「さて、これをひとりで運ぶのか……いやだなー……」


 ガラガラ…


 ここまげ台車にのせてきたことで最悪のパターンは免れた。ラニャは機械少女を台車に乗せながら家に戻った。



 続く

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