第2話 のじゃロリ×魔眼の少女

 -2年前-

 3人で暮らす少し前


 ある依頼での話。


「わっわたし、女の子がすきなんです!!」

「……は?」


 酒の瓶を片手にラニャ・オウルは依頼人の少女に素で返してしまった。


「ああ、いやワシが聞きたいのは今日の依頼の話で、おぬしの性的嗜好ではなくてな……」


「えっああ!ごめんなさい!気持ちが先走っちゃって!」


「まあわしも美しくて若ければどっちもいけるが。おぬしは……若すぎじゃな。」


 依頼主のオッドアイの少女は十代ぐらいの学生で、今日は占いではなく神秘系の相談できたらしい。


「で、依頼と女が好きなのと何が関係するんじゃ?」


「はい……。私、昔から男の子より女の子が好きで、意中の子もいるんです。後輩なんですけど・・・・」


「うむ」


「でも昔から男の子が言い寄ってくる事が多くて…私、美人でも、可愛くもないのに……」


 確かに見た目は普通の少女。これといって特徴がないモブ顔だ。


「最近は年上の男の人にも声かけられて……どうしたらいいかわからなくて……」


「ふむ」


「なるべく男性を避けているのになぜか声をかけられてしまうんです……」


「その意中のおなごのどういうところがええんじゃ?」


「それはもう、語りつくせないですよ。顔が好みで、雰囲気も声も好きで、話しやすくていい匂いがして柔らかくて、この前なんて一緒に・・・・・・・・・・・・・・・」




 ~5分後~




「……です。しかも、あの子ったら…」


「(まだしゃべる気か……?)あーわかった。大体わかった。完全に理解したぞえ。」

「まだまだ私語りつくしてない……」

「もういいのじゃ!その話は!!」

「ああ、ごめんなさい。でも占い師さんも結構かわいい……かも?」

「わしは見かけよりも数倍年上じゃぞ?」

「ホントですか!?でも、そんなの関係ないですよ~お名前教えてください。」

「あとで名刺でもくれてやるから、依頼の話をするぞー」

「はーい!」

 なんだか妙に好かれてしまった。

 なぜかラニャは女性に好かれる体質だった。


「……はあ。一つ聞くが、おぬしのその目」

「?」

「それは昔からそれなのかのぅ?」


「えっあ、はい。昔から左の瞳が少し色が薄いというか」


 彼女の目は左目が右に比べて少しうすい茶色だった。よく見ないとわからないくらいの違いだったが。


「なるほどの。だいたいわかったわい。こっからは仕事の話じゃからいくらなついても、金を貰わんと話はできん。」


 少女は小さい袋を出してきた。


「これだけなんですが。」


「ふむ」


 銀貨、銅貨が混ざった袋だった。

 きっと少ないお小遣いをためたのだろう。


「おぬしの真剣さは、確かに受け取ったぞ。」


 といってラニャは中から一枚の銀貨をとって袋は返した。


「えっ……?」


「子供の小遣いから巻き上げるほどわしは悪人じゃないのでのぅ。取りあえず手付け金じゃ。問題が解決したらもう一枚もらうぞえ。」


 というと、ラニャはソファーから立ち上がり何かを探してもってきた。

「とりあえずこれじゃな」


「眼帯……?」


「説明すると、おぬしのその薄茶の目は【魔眼】じゃ。」


「魔……眼?」


「信じるかどうかは無視して話を進めるぞ。」

「どうやら人を魅了する類の魔眼、あまり強くはないが。異性には多少効きが強いようじゃ。」

「じゃから、とりあえず一週間眼帯をつけて過ごすんじゃ。その間にこちらで色々準備しておくでな。一週間たったらまた来い。」


「先天的なのか最近発現したのかはわからんが、常人が魔眼を持つなどめずら」

「この眼が」

「……?」

「この眼のせいで…!」


 少女は怒りに震え、近くの鉛筆で自分の眼を刺そうとした。

 さっきの明るいトークとは裏腹にそれほど実は追い詰められていたのだ。


 しかし、


「待たんか!」

 ラニャが叫んだ瞬間、少女の身体が動かなくなった。


「!?」


「はあ。話を聞かんかばかたれ。こちらも対策を用意しておるから待つのじゃ。この店での刃傷沙汰はやめてくれ。」

 と怒ったように言いながら少女の隣に座り


「落ち着くのじゃ。魔眼といえど換えの利かぬ乙女の目じゃ。なくせば一生後悔するぞ。気を付けさえすれば普通の生活を送れる。わしを信じてみんか?」

 ラニャは頭をなでながらやさしく諭す。

 その姿はまるで祖母のような、慈愛あふれる女性だった。


 なにせ、ラニャは【のじゃロリ】だ。

 おばあちゃんのやさしさと、少女の可憐さを持つ存在ゆえ、当然である。



「……からかってはいないんですよね?銀貨一枚だから……」


「わしを信じて、一週間まつんじゃ。」


「……はい。」

「いい子じゃ。そういえば名前きいとらんかったのぅ」


 その少女は優奈という名だった。




 ~ 一週間後 ~





 ガチャ

「おおきたか、ユナ」


「こんにちはラニャさん。この前はどうも。」


「今週はどうじゃった?学校は?」


「なんか、変でした。普通に一週間が終わって……」


「少しは信じる気になったかえ?」

 クックックッと酒の瓶をあおるラニャ。


「はい。お願いします。」


「うむ。素直でよろしいぞ。で、これが用意したものじゃ。」


 それは黒縁のメガネだった。


「メガネ…?」


「度は入っとらんがそれをかけてるときは男に対して魅了の効果は出ぬ。」


「ホントに!?」 

 ぱぁぁぁあと少女の顔が明るくなる。


「しかも、その眼鏡をしても、魔眼の【女に対しての魅了効果】は消しておらんでな、それほどではないが効くようにはなっとる。おぬしの恋もうまくいくじゃろうて。」


「ありがとうございました!」


「これにて解決じゃ。ほれもう一枚銀貨を出すのじゃ」


 これほどのマジックアイテムが銀貨二枚のはずもない。

 こういうところがこの占い処が儲からない理由だった。


 ・・・・


 しばらくして少女がまた店にきて、

「今度は女の子にモテすぎてどうにかなりそう」

 と相談しにきたので、結局、【魔眼を抑えるメガネ】に作り直したのだった。


「これもなんかの縁じゃ。おぬしが大人になったらまたおいで。」


「はい!お世話になりました!」


 するとラニャが立ち上がり少女の耳元で


「(なんなら大人になったら女として真剣に相手をしてやるぞ?イロイロとな?)」

 と小声でささやき、少女は顔を真っ赤にして帰って行った。


 ラニャは「はっはっは!!」と大きく笑った。


 結局、優奈は色々理由をつけては定期的にここに通うようになった。


 よく女をたぶらかす自堕落な元賢者だが、やけに女にモテるのだった。





 「魅了の魔眼」- 解決!



ーメモー


魅了の魔眼:淫魔などが持つとされる見た相手を虜にする魔眼。チャーム。男女は問わない。人間で持つものも稀にいる。


金縛りの術:一時的に身体の自由を奪う術。魔術抵抗(レジスト)のない者には声だけでも術にかけることができる。


魔眼封じの眼鏡:レンズのみ特注。魔眼からでる魅了の効果をレンズで四方八方に拡散させる。これで見た人を虜にするのは防げるが魅力が散らばって本人が多少輝いて見える。結果、モテる。




※この物語はフィクションです。

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