風船

僕を風船に例えるならば、

子どもに与えるために百均で買ったお徳用風船だ。ドギツイ緑色で、雑に膨らませて、雑に遊ばれて、テレビの裏とかに行って見つからなくなるんだ。そんで、代わりがあるから探してなんてくれない。


で、年末とかの大掃除の時に、しわしわベトベトの亡骸が見つかる。


「ああ、あんときのやつか」


って買った親には思い出してはもらえるけど、ゴミ袋に入れられて今年最後の燃えるゴミの日にポイだ。その後はもう、思い出すこともない。


だけども、君を風船に例えるならば。

八景島シーパラダイスの世界一高い(と買った親が思い出すたびに言う)特別な風船だ。なにしろ、ひとつ2700円もする!一番安い風船でも1000円する中で、君は一番グレードが高いワケ!


風船の中に風船が入ってて、キラキラしてて、そしてヘリウムガスが入ってる。ヘリウムガスは大事だ。だって、勝手に風船が浮くんだからね。子どもは大喜びさ。


家に帰っても大事にされて、いよいよ最期だという時には泣きながらお別れまでしてくれる。


その後だって、君はキラキラした幸せな記憶の象徴になるのさ。


幼い日の、家族の思い出。


大きくなった子どもにも、親は度々話すしね(なにしろバカみたいに高い風船だから)


それぐらい、それぐらい、特別な風船。

「風船」という価値以上の価値を持つ風船。


それでもさ、僕はまだ、君のそばにいたいんだ。身の程知らずとは知っていてもね。

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