ひよこの国

 きいろい車に乗って、私は妹とひよこの国に向かっている。どうしても小さな私の妹がひよこの国に行きたいというものだから、根負けしてパスポートをとったのだ。


 ところで、ひよこの国というのは調べた限りでは相当変な国だ。まず、国民すべてがひよこらしい。ずっと、にわとりにはならないのだ。そして、名物なのが卵料理。この時点で、相当、変わってると言えるだろう。


 その上この国の公用語は「ひよこ語」だが、基本的に「ぴよっ」「ぴよぴよ」で完結する。しかし不思議なことに、この国を訪れる観光客は言語の壁で困る事はほぼないらしい。帰国した者は皆口を揃えて、「副音声が聞こえる」と言うというのだ。そんなことが現実、ありえるのか?私は内心、不安でいっぱいだった。


 ひよこの国まで、もうあと50キロを切った。妹は先ほどまた目覚めてひよこの歌を楽しそうに歌っている。彼女がいうには、この歌はひよこの国の国歌であるそうだ。私は不安を誤魔化すように、まぬけな歌を妹とともに歌うのだった。

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