第二話 次!
奴隷商会で案内してくれた受付の人から、また後日「放出日」が設けられているということで、その日を教えてもらい帰路についたアリエス。
死んだ魚の目は変わらず感情のない顔をしたキートにアリエスは、「何をしたら反応するだろうか」と、思考がサプライズの
しかし、アリエスが何かする前にパーティーメンバーと顔を会わせただけで反応した。反応したというよりはガタイのいいオッサンたちにビビったと言った方が正しいかもしれないが。
ビビって泣きそうになっているキートに「ここは、僕の出番でしょ!」と、万年幼児のホムンクルス、ブラッディ・ライアンが話しかけた。
未だに少年のような見た目のミストと、その彼をパパと呼ぶブラッディ・ライアンにキートは泣いてしまった。
「あれ?何故に僕で泣く!?」と、ちょっとビックリしたブラッディ・ライアン。
キートの泣きながら紡がれる言葉を繋ぎ合わせると、どうやら父親らしき人から「俺の子じゃねぇ!」と拒絶され、母親はそれにブチ切れ、「あんたの子じゃなければ、誰の子だっていうのよ!!」と、大喧嘩の末になんと「あんたなんか産むんじゃなかった!」と置き去りにして行った。
そして、その騒ぎを見ていたダメ人間が「お母さんを追いかけよう」などと言ってそこから連れ去り、奴隷として売り払ったとのこと。
その様子に子だくさん兄貴のルシオが手際よく宥めすかし、寝かせた。
鮮やかな手つきであった。
泣き疲れて眠ってしまったキートを見て一安心したメンバーは、起こすといけないからと静かにリビングをあとにしたのだが、何故かスクアーロだけはキートのそばに残っていた。
キートを起こさないように声を落としたアリエスが、どうかしたのかとスクアーロに問い掛けると、「ガキの頃の弟に似てんなぁと思ってよ」と、懐かしそうに目を細めた。
ふむ、と少し考えたアリエスは、「ゾラという名前に心当たりは?」と聞いたのだが、それを耳にしたスクアーロは目を見開いた。ザバーーーっ!と出て来た
アリエスが万物鑑定しまくった結果、キートの両親の名前まで判明したのだが、それが思わぬところで繋がったのだった。
しかし、だからといって早々に奴隷から解放するのも何か違うだろうと判断したアリエスは、ある程度仕事が出来るようになるまで、そのままでいさせることにした。
そして、キートにスクアーロと血の繋がりがあることを伝えるのも、彼がここにもう少し慣れてからになった。
大泣きして少しスッキリしたのか、ご飯が美味しくてテンションが高いからなのか、一生懸命お手伝いをしているキートを見て、スクアーロは首を傾げていた。
彼が言うにはキートの父親であるスクアーロの従弟は、「俺の子じゃねぇ!」などと言うタイプの人間ではない、ということだった。
なので、キートが落ち着いた頃を見計らって、父親だとされた人物がどのような容姿で、なんて呼ばれていたかをルシオが聞いてくれた。
「んっと、おかあさんはあの人のことを『チェン』と呼んでた、ました。見た目は、水色の髪に緑の目でした」
「そうか。てことは、キートの髪はお母さんに似たのか?」
「うん。僕よりもう少し濃い色、でした」
「そのチェンという人の背は、どうだった?高かったか?」
「うーん。えっと、アリ……エス様?より、ちょっと
ルシオはキートを膝に乗せ、頭を撫でながら少しずつ情報を引き出していった。
それを少し離れた位置で腕を組み、頭を
話を聞き終えたルシオは、チラリとアリエスに目線を寄越し、彼女が頷いたのを確認すると、「さぁて、少し休めたか?次の仕事はムーちゃんの散歩だぞ」と言ってキートを連れて行った。
キートがコテージの外へと出たのを確認したアリエスは、スクアーロに尋ねた。
「キートの言っていた『チェン』という男の特徴は、従弟に当てはまるか?」
「いや、全く。従弟のゾラは青に灰色を混ぜたような色で、ガキの頃の話になるが、背は俺より少し高かったからな。あのまま育ってりゃあ、アリー様より少し高いなんてもんじゃねぇと思うぞ」
「私の鑑定に間違いはないだろうから、母親が二股か何股かしていて誰の子か分からなくなったってオチか?んで、同じ水色を持ったチェンとかいう男の子供だと思ったってことか。それともソイツが金を持っていそうだったから、ふっかけたということもありそうだな」
「アリー様……、しばらく抜けていいか?」
「ばーか。捜すんなら"ギベオン"で捜すっつーの」
キートの顔が幼き頃の弟に似ていて、父親の名前が鑑定の結果「ゾラ」だと判明したのならば、十中八九、キートの父親はスクアーロの従弟であるゾラなのだろう。
ならば、種を撒いた責任をゾラに取らせなければと思ったスクアーロは、私事だからとパーティーから抜けて活動しようとした。
しかし、それをアリエスが許すはずがなかった。
メンバーが困っていれば手を差し出すに決まっている。
「アマデオ兄貴に走ってもらった方が速ぇしな」
「ククッ、そうだな。俺が一人で捜すより断然に早く終わるよな」
「てことで、次の目的地は……!どこになるんだ?」
拳を掲げて気合いを入れたアリエスだったが、向かう先が分からず首を傾げるのだった。
スクアーロとゾラの共通の知人を探すか、彼らの実家へ行けばいいと思うぞ?
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