8 目的
第一話 気になる
マルテリア王国を出発したアリエス御一行様。
ハインリッヒたちが加わったことでパーティー登録をし、名前を「ギベオン」とアリエスが名付けたのだが、この「ギベオン」とは彼女が前世の仁だった頃にいた世界の鉱物(隕石)なので、こちらの世界には存在していない。
彼女が前世で兄の康一へのプレゼントに、姉の茉莉花と時計を見に行った際に一目惚れしたのが、文字盤にこのギベオンが使われた高級腕時計だったのだ。
茉莉花は、仁がその高級腕時計に見とれていたのに気付いて、それをバージョンは異なるがお揃いということにして3人分購入してくれたのだが、金額を覚えていた仁は普段に使うには高すぎて怖すぎて、タンスの引き出しに片付けていた。そして、たまに出してニマニマしていた残念な子である。
康一と茉莉花は平気な顔をして普段使いしていたが、それは、二人がそれだけ稼いでいたから出来たことなのだろう。
何せその高級腕時計1個だけでも田舎の安い家が一軒買えてしまうのだから。
そんなパーティー"ギベオン"は、マルテリア王国の東にあるメルクリア王国へ向かっていた。
メルクリア王国は湿地帯が多く、ここへはカエルのタマゴを取りに来たのである。
カエルといっても魔物なので大型犬ほどの大きさがあり、そのタマゴもそれなりのサイズなのだが、
ブラッディ・ライアンが組み立てたレシピなので間違いはないだろうが、完成後はアリエスが万物鑑定をして問題がないことを確認するつもりでいる。
クリステールとクイユのためにも頑張ろうと気合を入れているアリエスだが、カエルは苦手なため、恐らく出会い頭にアブソリュートゼロをブッパするだろう。いや、恐らくというより、確実にやる。やっても良いがタマゴは
ちょっぴりソワソワ気味のアリエスに苦笑するルシオは、メンバーに任せて隠れていても大丈夫だと言ったが、それだとリーダーとしてカッコ悪いから嫌だと頬を膨らませた。
「物理攻撃があんまり効かないんなら、遠距離から魔法でやればいいんだろ?気持ち悪そうだから、その方が助かるよな」
「今回必要なのはタマゴだからな。本体ならいくら凍らせても大丈夫だぞ」
「あー、ルシオ、そういうこと言う?丸焦げにするよりかはマシだろー?」
「ははっ、そりゃそうだけどな」
和やかに会話をするアリエスとルシオ。
二人がいるのはディメンションルームなのだが、入り口は馬車内に開けたままなのでアリエスが馬車にいなくても大丈夫だ。
この馬車は、ロッシュの個人所有なので、ロシナンテから何かを言われることはないし、今、馬車をひいているのも彼の所有するお馬さんなのだが、実はお馬さんの見た目をした精霊である。
真っ黒な身体に
このカッコイイお馬さんもロッシュがクラン"ロシナンテ"のために置いてあったのだが、ブチ切れた彼がクランから引き上げたのだ。
クラン"ロシナンテ"にとっては可哀想かもしれないが、お馬さんはロッシュと契約しているので、彼と行動を共に出来てとっても喜んでいる。
誰も乗っていないから気にしなくてイイ!とタッタカターーー!!と街道を爆走するお馬さんの名前は、アマデオ。
アマデオ兄さんの向かうところ敵ナ……、あ、何か踏んだ。そして、蹴った。そうだね。馬車が乗り上げちゃうものね。
あ、何か踏んだよね?と、ちょっぴり気になったアマデオは、ゆるゆると速度を落とし、停止した。
それに気付いたロッシュがディメンションルームから出てきて、御者のフリをしていたミロワールに声をかけた。
「ミロワール、どうしました?」
「あ、ロッシュさん。何か、踏みました!」
「……は?え、何を踏んだのです?魔物ですか?」
「分かりません。アマデオの行動があまりにも速かったので、私では視認できませんでした」
魔物ならば構わないが、通行の邪魔になるかもしれないと判断したロッシュは、護衛にハインリッヒとチェーロを伴ったアリエスを連れて確認に行くことにして、その間、他のメンバーは馬車の外と中から周囲を警戒し、彼らが戻って来るのを待った。
周囲を警戒しながら後方へと戻ってみると、街道の茂みから曲がってはいけない方向に曲がった足が見えた。
十分に鑑定できる範囲まで来たアリエスは、その恐らく人であろう物体に万物鑑定をかけた結果、人であることが判明したが、重体である。
アマデオに蹴られりゃそうなるだろうな、と思ったアリエスは、気を失っている上に衰弱しているので治療しても大丈夫だろうと、ロッシュへクララを呼んでほしいと頼んだ。
内蔵破裂に複雑骨折、肩の脱臼、出血多量、過労、衰弱と、あとちょっと放置したら天に召されるよね?という状態だったため早急に治療を施した。
クララによって一命を取り留めた被害者は奴隷の男性だった。
ティーナの置かれている状況やこの奴隷が何故ここにいるのかよりも、カエラルン領とオタマジャルン街に意識を持っていかれたアリエスであった。
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