噂される祟り②
友絆は姫依から有純がいなくなったであろう真実を打ち明けられ、何も言葉が出なかった。 彼女たち二人の仲が普段から悪いということはない。 いや、友絆が見ている限りではよかった。
だが見ていないところで、二人が何を考え何を話しているのかまでは分からないものだ。
「・・・はぁ」
長い沈黙を置いて出たのは大きな溜め息。 それを見た姫依は慌てて頭を下げた。
「本当にごめん! ずっと、言えなくて・・・」
「・・・」
―――そりゃあ、俺たちには言いにくいだろうな。
―――でも、俺に謝られても・・・。
いつの間にか友絆は姫依の腕を掴んでいた。
「ッ、友絆?」
「岩太と細雪にも、このことを話しに行くぞ」
友絆一人で飲み込むことは流石にできなかった。 二人も未だに心配しているのだから。
「え、そんなッ、無理だよ! 友絆なら、受け入れてくれるかなと思って・・・。 友絆なら話せると思って、思い切って打ち明けたの!」
「俺が代わりに話してやるから」
「そういうことじゃ、なくて・・・!」
「嫌だよ。 俺だけがそれを知っているのなんか。 二人だけの秘密なんてごめんだ」
「・・・」
そう言うと流石に何も返せなくなったのか黙り込んだ。 その隙に強引に腕を引っ張り隣の教室へ連れていく。 こういうことは早めに打ち明けた方がいい。 時間が経てば経つ程言いにくくなってしまう。
「岩太! 細雪!」
大きな声で叫ぶと二人は反応してこちらへやってきた。 静まり帰る教室を二人を連れて抜け、人気の少ない場所へと移動する。
あまり時間がないため遠くまではいけないが、四人集まればそこらの場所では目立ってしまう。
「あまり目立ちたくないんだ。 大きな声で呼ばないでくれるか? 俺たちが固まると、みんな神経質になるんだよ」
岩太は辺りを気にしながら言う。 ここ一週間、有純がいなくなってから四人は集団で行動することが難しくなっていた。 有純が行方不明なのは学校中知れ渡っているし、噂のことも当然知っている。
「分かっている。 だけどごめん、大事な話があるから」
「・・・久しぶりだね、この四人が集まるの」
細雪は久しぶりの集まりに少しだけ明るい表情を覗かせた。 友達がいなくなり、一人で行動することが多くなれば寂しくもなる。
「それで、話って?」
「単刀直入に言う。 ・・・姫依が、有純の悪口を言ったって」
「はぁ!?」
「え、姫依ちゃん本当なの?」
姫依は泣きそうな顔で答えた。
「ご、ごめん・・・。 有純はみんなにいい顔をするから、それが見ていて気に入らなくて・・・」
「直接じゃなくて陰口で言ったのか?」
「ううん」
岩太の疑問に首を振ると、取り出した携帯であるページを開いた。
「鍵は付けておいたんだけど、見ちゃったみたい・・・」
悪口を言ったツウィッターのアカウントで、いわゆる鍵アカというヤツだ。 友絆は縁がなかったが、それの存在は知っている。
日頃の不満などをぶちまけるために、誰にも見えない、または許可した人だけに公開する特別なアカウントだ。 岩太が大きく溜め息をついてみせた。
「鍵アカで呟いてバレないだなんて、そんなのは甘い考えだぞ。 直接口にしなくても、悪口を言ったことには変わらない」
「うん、分かってる・・・」
「確かに有純ちゃん、最近様子がおかしかったよね。 何を言っても、上の空っていうか・・・」
「まだ自分の身に災いは起きていないのか?」
岩太の問いに姫依は頷く。
「でも、いつかは来るって覚悟はしている」
「何か、四年前を思い出すね」
「あまり思い出したくはないけど、強制的にな」
「水都(ミズト)くん、まだ見つかっていないんでしょ? 行方不明になった子は、みんな見つかったのに・・・」
「「「・・・」」」
細雪の発言に三人は黙り込んだ。 水都は四年前までこのグループにいた仲のよかった一人の男子だ。 有純のように突然消えた。 しかも水都がいなくなってから、あの噂が広まったのだ。 同時に事件も。
噂と水都には何か関係があるのかもしれないが、現在自殺者の出る森は一般人立ち入り禁止にされていて調べる術がなかった。 ただ友絆だけは一つだけ気になっていたことがあった。
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