噂される祟り
ゆーり。
噂される祟り①
“悪口を言われた子は自殺する。 悪口を言った子は山の神に祟られる” そんな噂が伝わる一つの街がある。 と言ってもいつからのことなのか不明で、ただそうであるということが分かっているだけだ。
友絆(トモキ)は目覚めると、鬱々とした気分を隠そうともせず高校へ登校した。 自身の教室へ向かう途中、仲のいい岩太(ガンタ)が丁度やってきた。
「あ・・・」
今までなら笑顔で軽口と共に挨拶をしているところだが、目をチラリと合わせるだけで言葉を交わすこともなく通り過ぎる。 それはお互いに同じで、どこか気まずい空気が廊下を流れていった。
―――そりゃあ、気安く話せる感じではないよな・・・。
―――細雪(サユキ)は・・・?
そのまま隣の教室へ目を向ける。 彼女は友達が多いわけではないが、優しく気遣いができるためいつも人に囲まれているような子だ。 だが今日も彼女は一人席に着き静かに読書をしている。
グループの心がバラバラになっているのを見て溜め息をつくと、友絆も自分の教室へ向かった。
―――どうして・・・?
―――どうしてなんだよ・・・ッ!
―――どうしてよりによって、有純(アスミ)が・・・。
友絆はいつも仲のいい友達六人――――いや五人と集まって行動を共にしていた。 だが丁度一週間前に、五人のうち一人が行方不明になったのだ。 今も捜索が行われているが見つかっていない。
―――有純はあんなにいい奴で、男女共に好かれるような優しい子だった。
―――だから、そんな・・・!
―――悪口を、言われるようなことなんて・・・。
まだ本当のことは分かっていない。 大人でも祟りを信じている者は多いが、警察は流石に祟りが原因と結論付けることはしない。
ただ行方不明になった人間がいた場合、そうではないかと考えられることが多かった。 考えれば考える程悪い方へ思考が傾いてしまう。
一週間前の夜、リビングでテレビを見ていると家の電話が突然鳴った。
「友絆、今手が離せないから代わりに出てくれる?」
「分かったー」
皿洗いをしている母の代わりに廊下へ出て電話を取る。 何気なく出た電話だったが、どうせ大したことのない内容だと思っていた。 今時固定電話にかかってくる電話なんてプライベートなものは少ない。
「もしもし?」
『もしもし、友絆くん? 有純の母なんだけど、有純は今友絆くんの家にいたりする?』
だから相手が友達の母親ということで、頭の片隅に何かが引っ掛かった。
「え? いえ、いませんが」
『そう、おかしいわね・・・。 姫依ちゃんとかに聞いても、みんな有純を見ていないみたいで・・・。 放課後、どこへ行ったのか分かる?』
「放課後は確か、やることがあるからとか言って一人でどこかへ・・・」
嫌な予感がした。 友絆は仲間に連絡をし一緒に街を捜し回った。 岩太、姫依(キイ)、細雪と友絆の四人。 夏のため外はまだ明るく捜しやすいが、念のため二手に分けて捜し回る。
「そっちはいた!?」
「ううん、駄目」
友絆は岩太と共に行動し、女子二人と落ち合ったが手がかりは見つかっていないようだ。 警察に相談することも考えたが、まだ今日の今日ということで仲間だけで探すということで落ち着いた。
「こっちも見つからない」
「・・・ねぇ、本当に有純ちゃんは行方不明なのかな?」
そんな中、細雪がポツリと言った。 皆一様に不安を抱えていたのかもしれない。 明らかに顔色が変わっていく。
「は? どういう意味だよ」
「だ、だって、一度行方不明になった子は自殺――――」
「そんなわけねぇ! 有純は悪口を言われるような奴じゃねぇだろ!」
「ッ・・・」
岩太の怒声に皆黙り込んだ。 女子二人が涙ぐむところを見て友絆は言う。
「・・・まだ明るい。 捜索を再開するぞ」
捜索を再開したが、それでも見つからなかった。 最終的には『これ以上暗くなると危ないから』という理由で強制帰宅することになったのだ。 もしかしたらひょっこり戻ってくるのかもしれない。
そのような期待を抱きつつ―――― だが翌日になっても有純が戻ってくることはなかった。 警察に相談し、捜索してもらうも全く手掛かりすら掴めない。
―――あれから一週間も経ったというのに・・・。
一人席に着きぼんやりしていると姫依が近付いてきた。
「友絆。 ・・・話があるの」
約一週間ぶりに仲間から声をかけられた。 姫依が神妙な面持ちをしていたため、二人は廊下へと出た。 幸いなことに人が少なく、姫依は誰にも聞かれていないかを確認している。
「話って?」
「・・・うん。 有純がいなくなったの、アタシのせいかもしれない」
「は?」
聞き返すと彼女は突然泣き出した。
「アタシ、有純の悪口を言っちゃった。 だからやっぱり有純は、今頃――――」
「ッ・・・」
突然打ち明けられた内容に冷や汗が流れる。 悪口を言われたら自殺する。 そして言った相手は祟られる。 つまり目の前にいる姫依は、噂通りなら大変なことになるかもしれないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます