リトル・ブレス/かける愛(「蒼葬の片」収録)

それでも、祝福を祈った。


 彼を初めて見たのは寒気が身を切る、ひと月に一回か二回は白雪のちらつく季節だった。一目見たとき鳥と見紛うほどの翼を持って、彼は飛んでいた。否、思い返すと飛んでいたとは言いがたい。風の一吹きごとに煽られて、重たげに飛ぶ姿は今にも落ちんと見えて、私は気が気ではなかったのだ。地上に落ちるならまだ良い。この地帯は亀裂の多い荒野で、深い溝の底は餓えた魍魎の住処だ。彼が鳥であれ、それ以外の飛行動物であれ、落ちたが最後身体の一片も残らないことは間違いない。せめて私のところに落ちてくるようにと、その時は誠実に、ただ純粋な心配から願った。


 彼を再び見たのは、崖下が残らず雪に覆われて、しんしんと冷えるころだった。積雪で地面が上がって、少しだけ地上が近くなるその時期に感謝するのは、それがきっと最初で最後だった。空気が澄み、空を行くものの姿がはっきりと見える。その時に、彼は片翼だと知った。相変わらずの危うい飛行で私の狭い空を横切る彼の行き先が、少しだけ気になった。

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