『小さなお話し』 その261………『みんな宇宙人』

やましん(テンパー)

『みんな宇宙人』


『この、お話しは、フィクションであります。


 現実とは、一切、無関係です。』




       🌃✨





 ぼくは、ある、友人と別れて、住み替えしたばかりのマンションに帰りました。


 両親と、奥さまが同居しております。


 しかし、帰ったとたん、ぼくにはわかりました。


 みんな、もはや、宇宙人なのだと。


 テレビでは、大パピリオン国の、独裁的大統領が、わが国の、大統領にも就任したという、その記念演説を中継していました。


 このひとは、たぶん、宇宙人の回し者です。


 彼は、このところ、たくさんの国を統合していました。


 『あなた? なんで、見ないの?』


 包丁を持ったまま、奥さまが詰め寄ります。


 『なんか、頭いたい。』


 『いつもの、偏頭痛か。薬のんで、寝なさい。いっしょに寝たげるから。』


 お手洗いは、父が占領しています。


 ぼくは、ステントのせいで、待てないので、紙パンツ内で済ませました。


 母は、独自の川柳を捻っております。


 時々、会報に掲載されるから、まあ、ましなものもあるらしい。


 『ごはん、たべなさい。』


 ああ、もう、夜の8時か。


 ここには、居たくないな。


 ぼくは、寝床にひっくり返りました。


 居場所がないから、僕の寝床は、通常玄関です。


 『だから、今日は、こっちに来なさい。ごはんは?』


 ぼくは、無視しました。


 お布団のなかで、いっぱい、泣きました。


 『あらら。ねた。また。病院行かせる?』


 奥さんが、奥で話しています。


 『あなた、こんどタルレジャの王女さまが、来るんだから、見に行きましょう。』


 無視したまま。


 ジョバンニの気分だなあ。


 ああ、今から開いてる美術館とか、図書館があったかな。


 あの、巨大モールなら、いつも、やってるな。


 なんで。ぼくの、居場所はなくなるのだろう。


 職場も、こっちから、おん出てやった。


 もう、ここも、国からも、追い出されるのだろう。


 ぼくは、鍵のたばを持って、家を出たのです。


 しかし、自動車の、ドアは、接着剤で固めたように、なぜかだか、開きませんでした。


 捕まらないうちに、ここから、離れよう。


 と、思いましたが、べつに、誰も、追っても来ません。


 そうか、そういうことか。


 宇宙人の魂胆は読めたのです。


 ぼくは、海に、向かいました。


 それが、皆の希望なのです。


 いや、せかいが、そう、望んでいるのだ。


 

 しかし、そのとき、激しい揺れが来ました。


 地震です。


 それも、大地震であります。


 周囲の建物が、がらがらと、崩壊して行きます。


 マンションも。



 やがて、海が襲ってくるでしょう。


 宇宙人のやることは、理解を超越していました。


 ああ、だって、みんな、宇宙人なのに。



         🛸


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 

 

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『小さなお話し』 その261………『みんな宇宙人』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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