主従

 ロメリア王国第3王女専属侍女という肩書を持つリゼであるが忘れてはいけないのは彼女も1王国の王女様…


そりゃ普通に考えて余所の国の王女に仕えていると言うのがおかしい話。何が言いたいかというとリゼにもホフマン家から一緒に来た侍女がいるという事。


 彼女は自分が「従」である主従関係と「主」である主従関係を同時に持っているということになる。

本人はどちらの立場でも、上手いこと関係構築ができているので全く問題がないと思っているが案外この世界では主従でコロッと番になってしまうことが少なからずある…


ので本人の知らないところで彼女を取り合う牽制がバチバチしていたりする。


 そもそもホフマン家の侍女ルイーズ、彼女はなかなかに癖が強い。何を隠そう彼女はαであり、リゼッタがΩである事を知っている。なぜαである彼女がわざわざ余所の国に行く人質のお姫様にホイホイと付いてきたか…?

   




“リゼ様大好きなド変態だから”




その一言に尽きると言えよう、この変態を説明するには過去に遡る… 


ルイーズは愛すべきお姫様が喃語をお喋りになられ始めた頃に姉的な存在として宮廷にやって来た貴族の子供である。年の差、実に10歳…

まずルイーズはお姫様をひと目見て自分の父に言った

「私を離縁してください!貴族やめます!」

もちろん父は非常に困惑した


「何を言ってるんだい??どうしちゃったのかな?ルイーズ???」


「私、たった今リゼッタ王女様に一生お使えすることに決めました!貴族は義務が多すぎて王女様のお側に24時間営業365日居られないので嫌です!」

今までどういう教育を受けてきたのかと言う疑問が全員の共通意識になるような発言


そして数日後ごねる父親を説き伏せて(物理)宮廷にリゼ様の侍女としてやってきた

と言うなかなかの過去を持つ。見上げたバk…変態が、この侍女ルイーズである。


 

リゼ様の起床の時間を予測し一時間前から枕元に立って寝顔を舐め回すように見るし

リゼ様が使い捨ての食器などを使った日には俊足でルイーズの懐に消えたり

リゼ様がカレンに仕えると決めた日から毎日血涙を流しながらも気配を消してリゼの後ろにぴっとりくっついていたり


数えればキリのないほどの奇行を繰り返しているが、まぁリゼ様本人が鈍感に輪をかけてさらに輪をかけてふわっと包んだようなお方なので気づかない。クールに見えるがそれは外見だけの話でこの姫なかなかに鈍感ゆるふわポンコツである。

端から見たらかなりドン引きするほど気持ち悪いのがこのルイーズ

だが普通の侍女が数週間かかる仕事はその日中に誰よりも完璧に処理するし、武力もそこらへんの騎士なんかよりよっぽどある。えっへん。


まぁ全てはリゼ様のお側にできるだけ長くいる為、リゼ様に何人たりとも触れさせないため…と残念な理由がついてまわるのだが


そしてリゼッタの父親ミカエラ国王はあわよくばルイーズをリゼの番にしようと企んでいる。


変態は変態でもやはり優秀なαという事実は覆らない

国王も父親として将来娘の番になるなら優秀で誰よりも娘を守ってくれる人を望む

つまりまぁ残念な事にルイーズは番候補として十分条件を満たしていることになる。



もちろん「番候補なので一緒にロメリアに行くの許可しました♪」

なんて言った日にはルイーズが何するかわからないし、もしかして愛する娘がロメリアでいい人見つけるかもしれないもんね♪と思ってミカエラ国王はロメリア国王にしかルイーズが番候補なことを教えていない。


ミカエラとロメリアは戦争勝った負けたの関係だが和平したとき国王同士はお酒飲んでマブダチになったので正直人質とか属国とかいらないんだけど…そんなこと言ったら両国とも大臣に絞られるから一応体裁としてあれこれやっている…

と言うなんともまぁふわふわした国王達である。


そんなこんなで「発情期はリゼ任せたよ♪」と国王から直々に命令を受けたルイーズは

何も知らない一回り年下のお嬢様のケアを月1でしていたりする。  


「もちろん主従なの手は出してませんよ!ただαのオーラとフェロモンで少しは楽になるそうなので!いつもより甘えてくるお嬢様と触れ合えるいい口実だとかは別に思ってませんよ???」


変態ではあるが発情期のオメガのそばにいても襲わないぐらいには理性が強い、本当に変態なことが惜しまれる優秀なαである… 


そして月1で休暇を取って自分の侍女と自室に引きこもるリゼを見てカレン王女が

面倒臭い勘違いをすることになる。


「リゼは絶対月1であの侍女と自室で休暇を取るんだよね…あの侍女ってΩでリゼの番だったりするのかな?なんかイライラする」

凄く勘違いだし実に面倒臭い王女である


「なんかカレン王女が面倒臭い勘違いしてる予感がするけどまぁ目の前のリゼ様が可愛いから何でもいいや!」


この優秀な変態がもう少し空気が読めるタイプの変態だったら今後のこじれがマシになっていたかもしれなかった

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