第10話

 先ほどマーキスと決闘することになり、俺たちは訓練場にきていた。


 ミリアに話を聞くとこの町一番の実力者であるマーキスは隣町の近くに出現した魔物を退治に行っていたらしい。ようやく退治して帰ってきたらこんなことになっていて大変ご立腹のようだ。

 俺は何も悪くないと思うんだが…。


「安心しろ、殺しはしない。半殺しくらいにしといてやるよ」


 殺る気マックスだな。

 マーキスを見てみるとこの町で一番強いというだけあって、すでに結構な魔力を体に纏っている。

 この自然な魔力の流れを見ると、魔力操作の方も上手そうだ。


「出来れば今からでも止めたいんだが」


「うるさい!それじゃあ俺の気が済まん!」


 話を聞く気はなさそうだ。諦めて戦うことにするか。


「お姉ちゃんはどっちが勝つと思う?私はロイドさんが勝つと思うなぁ」


「兄上に勝って欲しい気はするが、ロイドが負ける姿は想像がつかないな」


 俺の気も知らず離れたところでヒルダとミリアが勝敗予想をしている。

 話を聞きつけた防衛隊のメンバーも何人かきて様子を見守っている。


「勝利条件は行動不能にするかどちらかが降参するまでだ。兄上、命は取らないようにな」


 ヒルダがそう言うとマーキスはにやりと笑った。


「行動不能まではボコボコに出来るな。妹たち近づく気が失せるくらい打ちのめしてやる」


「それでは始め!」


 開始の合図でまず俺は魔力を防御に回す。戦いたい訳ではなかったがどうせならマーキスの力を見極めてみたい。


 そして殺意を放ちながらマーキスが魔力を込めたパンチを放ってきた。


 さっと躱すとマーキスは表情を変えてこちらを見た。


「今殺すくらいのつもりでいったんだが、余裕で見えているな?ミリアが強いと言ったのはどうやら嘘ではなさそうだ」


「俺が弱いとは一言も言ってないからな」


「久しぶりに本気でやれそうだぜ!」


 マーキスはそういうと魔力の出力を高める。これほどの魔力が出せるとは想像以上だったな。

 すると先ほどよりもかなり早いスピードで殴りかかってきた。


 受けれないことはないが腕が少し痛くなりそうなのでこれも躱す。さらに追撃してくるが俺には一発も当てることが出来ない。


「マジかよ!?最大出力でも躱されるなんてあの人と戦ったとき以来だぞ」


 これ終わらせるにはどうしようかな?マーキスは打たれ強そうだから力加減が難しい。


「お前のスピードがかなりのもんなのは分かったがどうして反撃しない?」


「こちらには戦う理由がないからな」


「妹達が欲しくないのか?」


「そもそも誤解なんだけどな」


「可愛い妹達が欲しくないだと!!それはそれで許せん!」


 会話が少しもかみ合ってない。話をするためにも戦いを終わらせなければ。


 悪いが少し痛い目に遭ってもらうぞ!


「魔力弾。全方位展開!」


 威力を抑えた魔力弾をマーキスの周りに逃げ場がないように展開する。これを躱すのは不可能だ。


「なんだこれは!?」


「行くぞ!魔力解放!」


 俺の合図で魔力弾がマーキスを襲う。防御に徹しているがダメージはかなり入るはずだ。


「ぐぉあーー!」


 マーキスの叫び声が聞こえる。すべての魔力弾を放ち、それがすべてマーキスに当たると彼は倒れた。


「そこまで!ミリア!兄上に治癒術を」


「やっぱりロイドさんの勝ちね!ここは抱きつきに行くとこだけどお兄ちゃんの回復が先ね」


 ミリアに任せればマーキスは大丈夫だろう。


 相手が悪かったが、マーキスの実力はかなりのものだ。

 ミラやジュリアスには敵わないだろうが。王国騎士団にもこれだけの戦士は数えるほどしかいない。

 ここから鍛えていけばまだまだ強くなるだろう。


 するとマーキスの回復が終わったようで、起き上がり話しかけてきた。


「俺が負けるとはな!いいだろう、ミリアと付き合うのを認めてやる。義弟よ!」


 話を聞いてもらうなら今だと思い、ミリアと付き合っているというのは誤解だと説明する。

 戦いも終わったのでヒルダも一緒に説明してくれて何とか誤解をとく解くことが出来た。

 その流れで俺がこの町に来た経緯と、防衛隊で働きミリア達家族の離れに住まわしてもらっているのも説明した。


「そうだったのか。戦いをふっかけて悪かったな。ロイド」


「誤解が解けて良かった」


「それにロイドの強さはハンパじゃないな。以前、六神将と手合わせしたときくらいの恐怖を感じたぞ」


 ヒルダもマーキスの言葉を聞いて驚いている。


「六神将って何なんだ?」


 俺が聞くとミリアが答えてくれる。


「六神将っていうのは、この国で女王様に次ぐ強さを持つ六人の戦士のことですよ!この国ではかなりの人気がある方々です。ただ先日一人の方が引退しちゃったので今は五人なんですよね」


「なるほどな。俺もいずれ手合わせしてみたいものだ」


 この国にはかなりの強者がいるようだな。


「ロイドは防衛隊の訓練に参加してるんだろ?俺にも稽古をつけてくれよな!」


「ああ、これからよろしく頼むよ」


 そう言って右手を差し出すとマーキスは力強く握り返してくれた。


 どうなることかと思ったが丸く収まって良かった。

 落ち着いて話すとマーキスも良いやつそうだし上手くやっていけそうだ。




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