マスターエンディング『閉幕:世界の守護者』

GM:最初はマスターシーン扱いのエンディングだ。


 若き守護者たちの活躍により、世界の危機は回避された。

 病室の窓から光条の走る夜空を見上げた後、壮一は手元の写真に――若き日のアッシュ・レドリックと、生前の白辺奏しらべ・かなでの写真に視線を落としている。


壮一:「……奏。私は、お前を守ってやる事が出来なかった。

 より多くの名も知らぬ人々を救うため……お前を犠牲にする選択を、誰よりもお前を愛していたアッシュ君にさせてしまった。

 だが、彼らは違った。大切な人を守り、世界を救った。強欲にも双方に手を伸ばし、望む結末を勝ち取ってみせたのだ」


 再び視線を上げ、遠く、空に浮かんだ月を見る。


壮一:「"操演者"は人の可能性に価値を見出した怪物だったようだが……進化の果てに目を向けるばかりで、今を生きる者に足元を掬われたか。

 ふっ……FHの王ともあろう者が。灯台下暗しとはこの事だ。そう思えば、少しは溜飲も下がるな。

 さて……若い者たちが世界を救う働きを見せたのだ。老兵の、最後の使命を果たすとしよう」


 静かに呟き、壮一は仕事用の端末でUGN中枢評議員アッシュ・レドリックへと連絡を取った。


アッシュ:「……何の用かね"拳聖"。私が事後処理に忙殺されている事くらい、理解しているだろうに」

壮一:「貴重なお時間をいただき感謝致します、レドリック評議員。先に私の端末へと誤送信されたコード……その私的利用について申し述べたく」

アッシュ:「ああ、その件か……あれは私の勘違いだ。キミに送りつけたコードは、機密情報でも何でもない、ただのメモ書きだったと後で判明してな」

壮一:「……は?」


 思いがけない返答に、壮一の口から間の抜けた声が漏れる。


アッシュ:「即刻、訂正の一報を送りたかったのだが……何せあの状況だ。そのような猶予もなくてな。

 いや、病床のご老体に余計な心労をかけてしまった。赦せ」

壮一:「……まったく、貴方という人は。私の心労などと……お気遣い、痛み入ります」


 少しの沈黙。幾分か、音を和らげたアッシュの声が電話口に響いた。


アッシュ:「もう若くはないのです。少しは自身を労り……赦してやって下さい、養父上ちちうえ

壮一:「……ありがとう、アッシュ君」

アッシュ:「ふん……UGN最強の"拳聖"を手放すには時期尚早。これは、それだけの話だ。

 世界を守るため、レインズ隊長としての変わらぬ奮戦を期待する。では」


 通信が終了し、壮一は黎明へと移りゆく空を見上げる。


壮一:「……見ているか、奏。お前が選んだ男は……間違いなく、世界を守って見せたのだ」


 その言葉に、応える者はなく。

 病室にはただ、消毒液の香りが漂い……誰かが鼻をすする音が、僅かに響くのみであった。

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