クライマックス1-3『最終幕:福音と歌声』

 マリーへの攻撃に剣を振るうアルギウス。その更に後ろに立つエイルに向けて、稀生は疾駆する。

 そのまま彼女の両肩を掴んで振り向かせ、虚ろな目を真っ直ぐに見つめて語りかける。


稀生:「エイル。お前に伝えたかった事がある!」

 それはいつか、彼女が謝った事。

「確かに俺は操られたかもしれない。始まりは歪な、作り物の絆だったかもしれない」

 だからこそ、伝えなければ。

「けどな! 俺は操られなくてもお前をたすけたぞ! 今だってそうだ!

 操られても頼まれてもいないけど……それでも俺は、エイルを救ける!」


 稀生の言葉に、エイルの虚ろな瞳から溢れる一筋の涙。

 そして――福音が、止んだ。

 世界に静寂が満ちる。しかしそれは、長くは続かなかった。


エイル:《……どうして》

 呪われた声で、問いかける。

《どうして稀生は、こんな……私なんかに、そこまで言ってくれるの》

稀生:「理由なんか、ない」

 それは真っ直ぐで、本当に単純な、答え。

「誰かを救けるのに理由なんか必要ない。ただ救けたいから戦うんだ」


 その言葉にエイルは驚いたような表情を浮かべ、そして嬉しそうに目を細める。


エイル:《……そっか。誰かを想うのに、理由はいらないんだね。

 ありがとう稀生、マリー。2人がいてくれるなら、私だって……まだ戦える。

 だから――》


 エイルの足元から立ち上がった影が、彼女の全身を包む。一瞬の後、影が晴れた先には。


エイル:《――届け。私の歌》


 純白の衣装を纏ったエイルの意志が、新たな歌声となって世界に響く。

 その旋律が、彼女の願いが、純粋な想いが。ニュクスによる干渉を中和し、稀生とマリーに戦うための力を与える。


GM:では、新たなNPC効果を公開する。




◆NPC効果:エイル(真)

・『黎明の歌声』

 ニュクスのNPC効果を無効化する。

 PCが行なうあらゆる判定のクリティカル値を-1(下限値2)する。

 『NPC効果:エイル』に記載された《原初の紫:妖精の手》のLvを+1する。つまり、追加で1回、エイルのNPC効果を使用出来る。




エイル:《お願い。勝って》

 そんな声が、確かに聞こえた気がした。

稀生:「決まってる!」

 歌を背に、刀を手に、力を胸に、"操演者"へと相対する。




GM:さて、残りのエネミーが全て行動済みとなり、イニシアチブプロセスを経てクリンナッププロセスに入る。エネミーは宣言なしだが、PCからは何かあるかな?


PC一同:宣言なし!


GM:了解だ。では、ラウンドが回るぞ。

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