ドラゴン転生 ~やがて最強へと至る者~
滝千加士
01話 転生、そして目覚め
迫り来る巨大な鉄塊。
視界に満ちる眩い光。
驚いている暇もなく、俺は死んだ。
と思っていたのだが何故か洞窟で目が覚めた。
それだけじゃなく、俺のスタイリッシュなボディとイケてる面(自虐)もどこかへ行ってしまったのだ。
その代わりに手に入ったものは、鋭い爪と牙に身体を覆う白い鱗。そして、背に生える小さな翼だった。
そう。
何の因果か俺は、ドラゴンになっていたのだ。
それも卵から出たばかりの赤子に。
「きゅいいー!?(なんでだあああァァー!?)」
思わず声を荒げる。
まぁ実際に音として洞窟に響いているのは、それはそれは可愛らしい高めの鳴き声なんだが。ちなみに雄だからメス堕ちを期待するなよ?
どうやって自分の姿を見たか? 実に簡単で、目が覚めた場所の近くにたまたま水場があったからそこで見た。ただそれだけである。
順番としては、
目が覚める→混乱しわたわた暴れる→疲れる→喉渇いた→水場はないかと辺りを見渡す→たまたますぐそばにあったぜラッキー♪→なんじゃこりゃああ!?
こんな感じである。
いや、あの時は本当に驚いた。
いつも通りのイケてる面を拝めると思って完全に気を抜いていたからだ。驚きのあまり危うくう○こ漏らしかけた程である。
クールでスタイリッシュな俺がう○こ漏らしたのなんて、6歳以来だからあともう少しで11年ぶりのお漏らしをやらかす所だった訳だ。
……まぁ、こんな洞窟にトイレなどある訳がないので、お漏らしならぬ野グソは近い内しなければならなくなる訳だが。
はぁ、それにしてもまさか本当に異世界転生なんてものが起きるとは。
異世界ものの小説で恒例のアレもあったりするのだろうか?
「きゅい!(ステータス!)」
若干の期待を胸に、俺は叫んでみた。
すると、
====================
名前:なし ♂ レベル:1/5 GP:0
種族:ベビードラゴン ランク:D-
加護:女神の寵愛
最大HP:135
最大MP:80
STR:7
AGI:6
VIT:2
INT:100
MND:100000
DEX:10
LUK:500
技能:種族スキル『竜鱗Lv1』
リミットスキル『創造の種(5)』
ユニークスキル『色欲者』
エクストラスキル『超直感』
====================
期待通りそれは眼前に現れた。
「きゅいい……(おいおいマジかよ……)」
分かりやすいイメージとしては、パソコンのウィンドウだろうか。
俺が触れると反応し、配置する場所の操作やサイズ変更が出来る。
それにしても……創造の種って一体何なんだ? そりゃなんか作るってのは分かるけど、全然意味不明なんだが。
(クッソ、誰か教えてくれよ! ヘルプミー!)
心の中で助けを求める。
まぁだからといって答えるものなど、いる筈も無いのだが。
そう、その筈だったのだ。
――問。創造の種を一つ消費し、スキルを創造しますか? YES/NO
こいつ直接脳内に!? ……って、そうじゃなくて。スキルを創造だと? めちゃくちゃ凄くないかそれ。もしかしてこの創造の種ってのは、望んだ効果を持つナニカを全部で5回作ることが出来るって意味なのか?
恐らく、いや絶対にそうだ。
証拠もないのに何をと言われるかもしれんが、俺は自分の直感が絶対を告げてきたことには必ず従う。そして一度も外したことがないのだ。
今回もそれだ。
直感が絶対を告げている。ならば、創造の種が俺の考えている効果であることは必定だ。そして情報を制す者は世界を制すると聞く。
ならば俺の答えは一つ。
(あぁ、YESだ)
――承諾を確認。スキルの創造を実行……成功しました。新たにユニークスキル『叡智者』を獲得しました
(叡智者か。では早速、お前について教えてくれ)
《解。ユニークスキル『叡智者』の詳細を開示します。
世界書:アカシックレコードへのアクセス権
解析鑑定:対象を解析・鑑定する。解析に成功したデータを記憶する
並列演算:解析したい事象を思考と切り離して演算を行う
記憶再現:必要条件が揃っている場合、解析に成功した記憶データを再現する
以上の4つが主な能力です》
(アカシックレコード、だと……。このスキルは神か何かか!?)
思わず突っ込む。
アカシックレコードの印象が強すぎて一瞬薄れていたが、それ以外の能力もかなり便利そうだ。
上手く使うことが出来れば、情報面以外でも活躍してくれそうな感じがする。
(さて、他の創造の種はどう使うか。……いや待てよ? そもそも一気に使う必要がないじゃあないか。後は保留にしておいて、必要になったら使う。これだな)
一人得意げに笑う。
そして、ふと思い出した。
(そういえば異世界もののラノベで、スキルに名付けしてみたら進化したみたいな展開があったような気が……しないでもないような気がする)
記憶はかなり曖昧だった。
それでも、俺はやろうと決意した。
またしても直感が絶対を告げていたからだ。もしこの行為がとんでもないリスクを負うことだったとしても、この感覚は八神創哉という人間が物心ついた時から信じ頼ってきた相棒の如きものであるから。
(さて、では名付けるか。しかし……どうするか。やはり名前であるからには、そいつを象徴していなければならないしな。叡智、叡智か)
叡智という言葉から連想ゲームのように言葉を広げていく。
(叡智があるなら、賢い。そして女のような声だから、賢い女。そして俺を助けてくれる相棒、じゃあギルガメッシュの補佐だったというシドゥリにするか? いや、違う。もっとこいつには相応しい名があるような気がする。ではどんな名前なら相応しいんだ? 少しスケールを大きくしてみるか。ん? いや待て。スケールを大きくだと? そういえばこいつの能力を見て何か言ったような? そうだ神か何かかと言ったんだ。ではどんな神だ? 知恵だ。叡智とは優れた知恵。知恵の神、いや女神と言えば……)
その時、電撃が走る。
まるで絶頂のような感覚に身を悶えさせながら、俺はその名を思い浮かべる。
(ソフィア)
これ以上の名があり得るだろうか。
俺は自信をもってあり得ないと断言出来る。
(叡智者、お前の名はソフィアだ)
そう心の中でハッキリと宣言したその瞬間、
――告。ユニークスキル『叡智者』へ名付けを行いました。
――告。条件をクリアしている為、進化が実行されました。
――告。ユニークスキル『叡智者』が限壊能力『叡智之女神』へと進化しました。
――告。限壊能力『叡智之女神』より、バランスブレイカー:ソフィアが誕生しました。
――告。以上の宣告は、バランスブレイカー:ソフィアにより秘匿されました。
叡智者を創った時の声が何度か響いた。
そして何事もなく、名付けと進化は終了したのだった。
(ふぅ、無事成功か。良かった。それにしても条件ってのは一体何なんだ?)
何の気なしに心の中で呟く。
すると、
《まず、実行者のMNDパラメータが10000を超えていること。次に実行者が何かしらのリミットスキルを所持していること。そして名付けの際強力な想いを籠めていることが進化の条件です。マスター》
美しい女性の声が脳裏に響いた。
(……ソフィア、なんだな?)
《YES,マスター》
数分前までの機械的な、自動音声のような声とはまるで違う。
それは、正しく生きた女性の声だった。
(ふっ……なんとも凄まじいものだな。名付けとは)
《正にその通りです。以降は軽々しく行わないことをオススメします。マスター》
(それは周囲にバレると、目を付けられ危険だからか?)
《はい。分かっていたのなら何故実力もないのに行ったのです?》
(別に分かってはいなかった。ただ、さっきお前とは違う声が以上の宣告はソフィアによって秘匿されたと言っていたから、何故隠したのかなと考えてみただけだ)
《……なるほど。では、以降は実力が付くまで行わないのですか?》
(あぁ、暫くするつもりはない。が、もしもの時は頼らせてもらう)
《承知しました》
(まぁなんだ。これから宜しくな? ソフィア)
《YES,宜しくお願いします。マスター》
こうして俺は、転生初日にしてチートを更に進化させ強力な相棒を手に入れるのであった。
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