数秒間先の未来を予知できる女子高生、別守懐。ある日彼女はほとんど接点のなかったクラスメートの逢木直流に大胆に告白される未来を予知する! なのに逢木は告白をしてこない! その後何度も逢木が告白してくる未来を見るのだがいつまで経っても逢木は告白をして来ないし、予知能力も逢木関連以外ではしっかり働いている。かくして何度も告白されて(実際にはされてない)ちょっと自意識過剰モードとなった懐はこの予知の真相と逢木の本当の想いを探るべく自分から逢木に接近するのであった。
冒頭からシチュエーションが特殊すぎて一気に引き込まれるし、その後も懐の女子高生らしい軽妙な語り口もあってすいすい読み進んでしまう。特に残念なキラキラネーム持ちの親友との会話がとても楽しい。不発に終わった予知の謎もラストで思わぬ角度から真相が明かされとてもエンタメ性の高い内容になっている。予知能力だけに頼った話作りではなく、部活のちょっとウザい先輩との絡みを通じて人を好きになることの理由や意味など等身大の恋愛論が語られたりもしていて、青春恋愛小説としてもクオリティが高い一作だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)