Fourth revenge

 =Now Loading=


 ピピピピ!


 ピピピピ!


「ん……」


 目覚ましが鳴っている。

 昨日かけたんだった。

 初めてジェクオルと会ったあの日も目覚ましをかけて、一人で洞窟に向かったっけ。

 なぜか似たような状況になっちゃったな。


「シャロール……ごめんよ」


 つないだ手をそっと離す。


 やはりこの戦いに彼女を連れて行くことはできない。

 例え彼女が望んでもだ。

 僕は彼女が傷つくのを見るのが一番嫌だ。

 だから、置いていく。


 次に会うとき、僕はどうなってるかな。


「さよなら、シャロール」


――――――――――――――――――――


「来たな、佐藤」


 洞窟をしばらく進むと、こんな声が聞こえた。


「ああ」

「決着のときだ」


 お前を倒して……。


「だが、忘れていないか?」


「何をだ」


「貴様と結んだ協定を」


「あんなもの……」


 あのときは結ばざるをえなかったからだ。


「お前と協力する気なんて、毛頭ない」


「勇者が裏切るとはなんて滑稽な……」


「もういい……」


 僕はカームソードを構える。


「まあ、待て」

「最後に我の話を聞いてくれ」


 命乞いか?

 いや、そんなことないよな。


「共に管理人を倒そうじゃないか」


 最初にそんなことを言っていたな。


「それで、僕になんの得がある」


「仮にお前が魔王様を倒したとして、管理人に支配されたままなのだぞ?」

「それでいいのか?」


 確かに、管理人はこの世界を支配し続けるだろうな。


「だが、それでいい」

「僕はシャロールと一緒ならどんな世界だって!」


 目の前のモヤに向かって、走り出す。


「決裂か。仕方ない」


「くらえ!」


 ガキィ!


「なっ……!」


「さすが勇者の剣だ、素晴らしい」


 ジェクオルは金色の剣で、僕の剣を受け止めた。


「ファイウルを殺す以外にも使えるようだな」


「なに!?」


「魔王幹部を倒すには勇者の剣が必要なのを知っているだろう?」

「ちょっと小細工をして、手に入れたんだよ」


 こいつは……そこまでしてファイウルを……!


「許せない」


 僕の中に、怒りが燃え上がる。


「そんなんじゃ我を倒せないぞ」


 クソっ!

 力負けする……!


「ぐわっ!」


 僕は地に叩きつけられる。

 ジェクオルはそのまま僕の体を押さえて、問いかける。


「さあ、早く管理人を呼べ」


 こいつの言いなりになるのはしゃくだが、このまま死ぬくらいなら……。


「わかった、呼ぼう」


「いい心がけだ」


 僕はスキルを選択して、叫ぶ。


「管理人が出てこない!」


 フォン。

 <スキルが使用されました>


「ったく、君達はどこまで僕を困らせればいいんだよ」


 久しぶりに彼が目の前に現れる。


「来たな……」


「ジェクオル、ダメじゃないか」

「ストーリーの本筋を破壊するような行動は……」


「死ね」


 僕から離れたモヤは管理人に向かって飛んでいき、その剣は彼の腹を突き刺す。


「ガハッ!」


「どうだ? 特別仕様のこの剣は」


「なんて……やつだ……!」


 管理人はそれだけ言うと、跡形もなく消えてしまった。


「案外あっさり死んだな」

「まあいい、続きを……」


「おりゃー!」


 僕は体勢を立て直し、ジェクオルに斬りかかる。

 今がチャンスだ。

 直感的にそう感じた。


「ふん、勇者のくせに不意打ちとはな」


 ガッ!


 あっさり対処される。


「管理人がいなくなった今、お前の力も機能しないだろうな」


「それが……どうした……!」


「気づいていないのか?」

「お前はもう生き返ることができないんだよ」


「あ」


 僕が驚いたすきに、ジェクオルは剣を弾く。


「残念だったな、勇者君」


 そして、後ろに回り込み、僕の喉元に剣を突きつけた。

 もう無理だ。

 僕の短い人生はここで終わりみたいだ。


「これで……」


「負けないでー!」


 走馬灯だろうな……。

 シャロールの声が……。


 違う!

 力が溢れてくる。

 これはシャロールのスキルだ!


「む?」


 シャロールに気を取られ、ジェクオルの力が緩んだので、脱出する。

 そして、後ろに剣を振る。


 ガッ!


「ほう、少しは強くなったようだな」

「だが、この程度では……」


「佐藤! 頑張ってー!」


 ありがとう、シャロール。

 お前のおかげで、僕は再び勇気を奮い起こすことができた。


「おまえなんかに……」

「負けてたまるかー!!!」


「ふん、威勢だけは……なに!?」


 ジェクオルの黄金剣が輝き出した。


「ク、クソっ!」


 ジェクオルの力が緩んだ。


 今しかない。


「トドメだー!」


「ぐはー!!!」


 カームソードの青い輝きが洞窟を照らし、次の瞬間にはジェクオルは消えていた。


「……やったか?」


「佐藤ー!!!」


 シャロールが目に涙を浮かべて、駆け寄ってくる。


「シャロール……!」


 勢い余って、僕に激突したシャロールを優しく受け止める。 


「どうしてまた私を置いていったの!」

「私……心配したんだから……!」


「シャロール、ごめんよ」

「どうしても……巻き込みたくなかったんだ」


「私は……どんなときだって……!」


 シャロールが嗚咽を抑えて、必死に声を出していたそのときだった。


 ゴゴゴゴゴゴ!


 洞窟が大きく揺れる。


「しっかり捕まっとけよ!」


 揺れが収まると、不快な音があたりに響き出した。


 ザザザザザザ。


 これは……。


「さ……とう……?」


 意識が……。

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