Fourth target

 =Now Loading=


 ここは……。


「シャロール!? 大丈夫か!?」


 目の前でシャロールが横たわっている。


「ふぇ? どうしたの、佐藤?」


「おっ、二人共起きたのか~」


 この感じ、もしかして朝に戻っているのか?


「佐藤、具合悪いの?」


「本当だ。顔が真っ青だよ、佐藤君」


 とりあえず、シャロールがまだ無事でよかった。


「悪い夢でも見たの?」


 シャロールが心配そうに僕を見た。


「……ええと、今から大事な話をしていいですか?」


「「大事な話?」」


――――――――――――――――――――


「つまり、このままではシャロールが行方不明になると」


「そうです」


 信じてもらえるかな?

 正直、時間が戻るってだけでも疑われるだろう。

 僕はヒュイさんの顔色をうかがった。


「……勇者の佐藤君が言うのだから、信じようじゃないか」


「本当ですか!?」


「ああ、シャロールもそうだよな」


「うん、佐藤を信じるよ」


 ありがたい。


「でも、キノコ狩り行けなくなっちゃうんだ」


「そうだな……」


 本当は僕も行きたいのだが……。


「いや、これはチャンスでもあるよ。佐藤君」


「「え?」」


「シャロールを襲った何かを確認する絶好のチャンスだよ」


「そんな危ないことにシャロールを巻き込みたくありません!」


「佐藤……」


 シャロールが僕をじっと見つめた。


「君の我が娘を思う気持ちには感謝する。しかし……」



「今日やり過ごしたからと言って、明日の安全が確保されるわけではない」


 確かにそうだ。

 敵が何者かがわからない以上どうしようもない。


「どうだい? 今日の依頼には私がギルド職員として同行できるように頼んでみるよ」


「だから、敵の正体を暴いてみないかい?」


 それは頼もしい。

 けど……。


「シャロールはそれでいいのか?」


 僕がシャロールを見ると、彼女は目を閉じて何か考え事をしているようにふるまった。


「う~ん」


「嫌なら……」


「佐藤とお父さんがいるなら大丈夫でしょっ」


 そう言って、微笑んだ。


「ありがとう、シャロール」


「本当にいいんだな? シャロール?」


「もー! やるって言ったのはお父さんでしょー!」


 こうして僕達は犯人探しに乗り出した。


――――――――――――――――――――


「今日はヒュイさんがついて行くのですね。わかりました」


「本当は僕が行く予定だったんですからね」


 前回キノコ狩りに行ったときのギルド職員がそう言った。


「悪い、悪い」


「それにしても、親ばかですね~」


「はっはっは。娘がかわいくてかわいくて」


「もー! お父さん、早く行くよ!」


 シャロールが照れ隠しで歩き始めた。


「わかったわかった」


――――――――――――――――――――


「もうすぐ着くが、改めて確認だ」


「はい」


「うん」


 僕達に緊張が流れる。


「シャロールは敵に怪しまれないように自然にキノコ狩りをやってくれ」


「うん」


「その様子を私は監視するが、ときおり佐藤君の方を向く。敵が来るならそのときだ」


「だから、佐藤君はキノコ狩りをするふりをしながら、敵の出方をうかがっていてくれ」


「はい」


「私が君を見たときは特にシャロールに気を配るんだよ」


「わかりました」


 これから何が起こるのか。

 僕の心臓が緊張で大きく脈打っている。

 その音を聞きながら、僕はキノコを採り始めた。


――――――――――――――――――――


「誰も来ませんでしたね……」


「そうだね……」


「キノコがいっぱーい!」


 神経をすり減らし、疲れ切った顔の僕達とは対照的にシャロールはニコニコだ。


「もう暗くなってきたし、帰ろうか」


「はーい」


 こうしてなんだか拍子抜けのままキノコ狩りが終わった。


――――――――――――――――――――


「どうして、佐藤君の知らない未来が訪れたのだろうか」


 家に着くと、ヒュイさんはそう言った。


「どこか違うところがあったとかですかね?」


「例えば?」


「ヒュイさんがついてきたから?」


「う~む、それは一理あるかもしれんな」


「明日はどうします?」


「どのみち私はいつもの仕事に戻らねばならないから……」


「明日、ヒュイさんが来なくなったときに何が起きるか……」


「まだわからないことも多い、気を付けるんだよ」


「はい。シャロールは絶対に僕が守ります」


「佐藤君……」

「佐藤……」


 二人が僕を何とも言えない表情で見つめる。


「え……何かまずいこと言いましたか?」


 しかし、ヒュイさんは僕の質問には答えずに微笑んだ。


「ふふ、頼もしいねぇ。佐藤君は」


「さ、もう寝る時間だよ」


――――――――――――――――――――


「佐藤、私も頑張るね」


 シャロールが布団の中で語りかける。


「ありがとう」

「けど、無理はしなくていいんだよ」


「ううん、佐藤が頑張ってるから、私も頑張る」


「シャロール……」


「だって、私は佐藤の彼女なんだもん」


 そう言って、シャロールが僕の腕に抱きついてきた。


「彼女……いつから……?」


 この前は返事をせずに終わった気がするが、どうなってるんだ?


「……」


 シャロールはじっと僕の顔を覗き込む。


「えと……あの?」


 どうしたらいいのかわからない。


「違うの?」


 シャロールが一言そう口にした。


「違うってことは……」


「はっきりして!」


 シャロールが珍しく真剣な目で僕を見つめる。


「僕は……」


 どうしよう。

 でも、昨日考えてたじゃないか。

 僕はシャロールのことが……。

 だから……。


「ああ、そうさ!」

「シャロールは僕の彼女だよ!」


 ああ、言ってしまった。

 なんて言われるかな……。


「ふふふ、うれしい♪」


 シャロールはそれだけ言うと、目を閉じた。

 なにはともあれ、喜んでくれてよかった。

 僕は彼女の幸せそうな顔をしばらく眺めた後、目を閉じた。

 シャロールが抱きついている腕がとても暖かい。

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