第4話 紹 介

Introduce


◆宇宙日誌◆ 西暦2201.4.16 ログイン⇒

今日は、本船新型スターシップについて記しておく。


因みにBGMは、私の大好きなアルバムから一曲、 ♯ Well Come to My Ship ♪ をセレクトした。

ドライブの効いたエレキギターに、シンセサイザーの唸り声が絡み、こころも踊る軽快で楽しい曲だ。


本船SSアーク号(Star-Ship ARK)は、その名が示す通りの箱型で、宇宙船にはふさわしくないフォルムだ。奇しくも旧約聖書の『ノアの方舟』伝説を参考に設計された。


全長120m、全幅20m、全高12m。黄金比と呼ばれるもので、伝説の方舟と同じ比率で建造されている。設計者は私の父である。


父は、「旧約聖書の記述は科学的根拠に基づく」という説を支持していた。聖書の伝説の多くは、超古代文明の実話が時を経て神話化したのだという。父は信者というより聖書マニアで、私の名前の由来もしかりである。


宇宙船内部は三層構造をとる―――

最上層は、オペレーション・フロア

最先端には、司令塔のブリッジやコックピットが納まるOPEルーム。

中央部は、ミーティングをはじめ、各種軽作業を行う、MEETルームを広く取る。

船尾は、天体物理学者のアルバート・フォレスト博士自慢の展望室。透明特殊合金製で覆われた繋ぎ目のない丸天井からは、360度のクリアービューで星々が広がる。まさに深宇宙天文台だ。


中間層は、コミュニティ・フロア

家族ごとに個室で区切られたハウスと呼ばれる居住区が占める。各ハウスは、ファミリー向けの構造。一家族5人平均の6家族が集まる当コロニーでは余裕充分。

更には、医療施設や娯楽設備も完備。メディカルルーム(MEDルーム)は、各種検査はもとより、外科手術も可能で、移動する小さな病院だ。


最下層は、サイエンス・フロア

科学実験ラボや貨物室などがある。特筆すべきは、ハイドロゲルフィルムで植物栽培を行う『食糧プラント』がフロアの大半を占める。

そして、地球生物を代表する貴重なDNAサンプルも、フロア中心に位置する保管庫に、大切に納められている。


SSアーク号の推進装置は―――

最新型のCF-PREを搭載。夢の低温核融合(Cold Fusion)が生むプラズマ放射を用いた、最新のPlasma Rocket Engineだ。有害な放射線の放出を完封する磁気シールドも完備し、放射能の問題も無い。


「慣性質量を考慮しても、光速度の半分は、楽に超える!」

チーフエンジニアのジョー・ヤシマは、腕組みをしながら明言した。


ロケット工学の第一人者である彼の計算によると、1億kmを超える火星航路は、3週間を要する予定だ。人類初の有人飛行が行われた21世紀当時では、300日にも及ぶ長旅だったと言うから、この数字は驚異的。


CF-PREは長時間に亘り連続噴射が可能で、宇宙船を加速し続けることができる。それによって、星間航行コスモ・ドライブが可能になった。


『物体の運動加速度から生じる慣性力は、重力と同等のはたらき……』

この等価原理で、加速度からを生む。

地上と同じ1Gとなるように、宇宙船は等加速度飛行をする。火星に到達する頃には、光速度の3.9%にも達する計算。


遠心力を利用した既存の重力発生メカニズムより優れ、船内すべての場所に一様な重力場が生成される。


SSアーク号は、最大面積の天井面を進行方向に向けて横に飛ぶため、逆の床面垂直下方向に慣性力が働く。これが人工重力となる。

空気などの流体抵抗が無い宇宙空間ならではの飛行姿勢だ。


地球上で見慣れた飛行物体の常識からすると、縦長の箱が横向きに飛ぶ姿は、とても奇妙に映るだろう。

==以上、ログアウト ◇◆


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