喰人

にゃ者丸

プロローグ

 大自然が支配する大陸。そこは、人が生きていける環境ではなかった。


 桁外れの強さを持った怪物共が跋扈し、日々、熾烈な生存競争が繰り広げられている。謂わば、ここは弱肉強食というたった一つのルールで支配された闘技場なのだ。


 しかし、例外はある。


 その大陸には、たった一人の人間が生きていた。


 彼に呼ばれる名前は無い。彼に家族と呼ばれる繋がりは無い。


 彼を形作るものは、ただ一つ。


 〝他を喰らい、生きる事〟


 それだけが、彼の存在理由であり、それだけが、彼の生きる、目的。


 彼は怪物共の骨を纏い、怪物共を狩り殺す。


 そして、戦いの果て、自らが狩り殺した怪物を喰らうのだ。


 彼は戦士。彼は獣。



 彼は人であったが、同時にこの大陸の中の怪物共と同様の獣なのだ。



「生きろ、獲物を殺し、獲物を喰らい、ひたすらに闘争を求め続けよ」


「殺した怪物の肉を喰らい、腹を満たせ」


「殺した怪物の血を飲み、喉を潤せ」


「餓えよ、更なる肉を喰らい、満たされるために。飢えよ、更なる血を飲み、潤うために」


「喰らえ、喰らえ、喰らえ」


「我が身が獣と成れ果てるまで、貴様の闘争は終わらぬ」


「貴様に名など与えぬ、しかし、貴様という存在を示す通り名は与えてやろう」


「これより、貴様は戦士であり、獣となる」


「さあ、刻もう。貴様の鼓動が鳴る度に、その文字が震えるように」




その者は――――――――〝喰人ガジン



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