アナザーエデン 平和への希望

アナザー

第1話 少年との出逢い

~1800文字付近からアルド視点へ~


俺の名は『キロス・カーティス』

魔法学院に通う生徒で冒険者だ。

12歳だけど冒険者の資格は既に取ってある。

学院生徒で冒険者資格を持っているのは珍しくないが、魔物の討伐を行った生徒はまだいないらしい。

俺は既に何体もの魔物を倒している。


今日は週末の連休を利用して、冒険者の活動をする予定だ。

数日前、奇妙な発光現象が起きたと報告があった。

その後から近くの『トリナ村』って所で、ある病気が流行しだしたらしい。

その特効薬となる苔『臨海ゴケ』を手に入れるのが依頼内容だ。

『臨海ゴケ』は海沿いの洞窟から断崖絶壁に出た所で発見できるらしい。

洞窟から断崖絶壁に出る穴は無数にある。

普段からある依頼だけど、洞窟には魔物も出るし、成功報酬は高くないから不人気なのだ。

更に似たような苔もある事から、入手しようとする人が少なく「幻の苔」と呼ばれる品でもある。


しかし、今回は違った。

『トリナ村』で流行した病は結構酷かった。

既にギルド員までもが動いている。

そして昨日の夜、あの発光現象が再び起きた。

事態を重く見た王国とギルドは緊急依頼として大きく宣伝を行った。

俺は緊急依頼が出てたし、誰かの役に立ちたいという思いからその依頼を受けたんだ。

緊急依頼時は「普通の成功報酬+国からの援助金」が貰える事になる。

不人気の依頼もこの時ばかりは人気の依頼となる。

直ぐに『臨海ゴケ』も見つかるだろうと思ってたけど、どうやらいつもと違うらしい。

そこで俺は不思議な出会いをする事となる、、、


・キロス

「ここが『トリナ村』、来るのは初めてだ。」


朝一番で依頼を受けて、準備をしてから村に来た。

時刻は既に昼頃になっていた。

大勢の冒険者で村は賑わいを見せている。

しかし、村の一角では凄まじい怒号が聞こえる場所もある


・ドンク(ギルド員)

「そこ、しっかり押さえてろ。

鎮静剤で落ち着かせるんだ、絶対に興奮させるんじゃねぇぞ。」


今回の病の症状として、「近くの人間を襲う」という特性があった。

最初の被害で「夫が嫁を攻撃した」と言う報告がある、腕に受けた引っ掻き傷で出血したが、大怪我にはならなかった。

しかし問題は別にあった。


・「攻撃された嫁が別の人間を攻撃し始めた」


これは初めて聞く症状で、恐ろしい事にこの病は伝染するらしい。

ギルド員のドンク報告書によれば「攻撃を受けた際、傷口に感染者の体液が入ると感染する」と言う所まで突き止める事が出来た。

傷を負うと唾液の飛沫からも感染する。

元々、似たような病は有った為、『臨海ゴケ』を使った特効薬を使用してみたところ症状は完治に向かったという。

そこで、『臨海ゴケ』を取って来て欲しいという依頼が舞い込んだのが始まりだった。


・キロス

「さてと、早速取りに行こうかな、、、ん?」


冒険者が多数いる中で、見慣れない装備の冒険者が居た。何故かな、どうしても気になってしまう。

気付けば俺は声を掛けていた。


・キロス

「あの、初めまして。

俺、キロスって言います。

あなたは冒険者の方ですか?」


・???

「ん?俺かい?

俺の名はアルド。

えっと、、、、冒険者だ。」


何故だろう、とても不思議な感じがする。


・アルド

「この騒ぎが何か、君は知ってるかい?」


依頼で来たわけではないんだな。


・キロス

「人を襲ってしまう病が流行り始めたんです。

そこで特効薬を求めて冒険者に依頼が出てるんですよ。いつもは閑散とした村らしいのですが、依頼の関係で賑わいを見せているって所ですね。」


・アルド

「人を襲う、、、、」


何か知っているのかな?


・キロス

「何かご存じなんですか?」


・アルド

「いや、実は昨日の夜にここに来たばかりなんだ。

仲間の一人が似たような症状になってね、どうすればいいか途方に暮れていた。その時、偶然出会ったドンクって人に助けられてこの村に来たんだ。

その人が治療をしてるらしいから仲間を預けているんだけど、心配で落ち着かなくてね。

良かったら特効薬の場所を教えてもらえないか?」


成る程、この人も困っていたんだな。

村人の分は他の冒険者で何とかなるだろう。


・キロス

「実は俺も特効薬の依頼で来た冒険者なんです。

アルドさんさえ良かったら一緒に探して貰えませんか?」


ダメもとでお願いしてみた。

見たところ剣士の方だろうし、なにより腰の大剣には凄まじい力を感じる。


・アルド

「ん~そうだな、、、

流石に土地勘もないし、お願いしようかな。

キロス君だったね、お願いしても良いか?」


・キロス

「ありがとうございます。

改めて自己紹介します、

キロス・カーティス 魔法使いです。

属性は火です」


・アルド

「剣士のアルドだ。

属性は、、、火でいいのかな。

よろしくキロス。」


~ここからは、アルド視点~


知らない時代に来て困ってたけど、なんだか良い子に巡り合えたな。

しかし、ここはどの時代だろう?

建物の雰囲気からして現代に近いんだろうけど。


・アルド

「なぁ、キロス。

ミグランス城って知ってるか?」


・キロス

「ミグランス城、、、?

いえ聞いたことはありません。

このから一番近いお城は『オルドラ城』になります。ミグランス城は学院の授業にも出て来ない名のお城ですね。」


やはり知らないか、ここは別世界という事なのか?

断定は出来ないが次元の穴の色がいつもと違っていたから怪しいとは思っていたんだ。


・キロス

「特効薬ですが、海沿いの洞窟で入手出来ます。

『臨海ゴケ』と言う特殊な苔が必要となりますので、早速取りに行きましょう。」


・アルド

「助かる、案内をお願いしていいか?」


・キロス

「もちろんです。」


キロスに案内してもらい、問題の洞窟にやってきた。多数の人が居るのは皆『臨海ゴケ』を狙っているからか?


・キロス

「行きましょうアルドさん。

『臨海ゴケ』は洞窟内部から多数ある海沿い出口の断崖絶壁に生えていると資料にありました。

オルドラギルドから参考資料も持ってきましたので、似たような苔をある程度入手したら村に戻りましょう。」


・アルド

「本当か?凄い助かる。

キロスの事は俺がしっかりと守るよ、早速取りに行こう。」


頼りになる子だ、ありがたい。

しかし似たような苔もあるのか、厄介だな。

早く見つけなれば、、、

キロスの案内で洞窟内を進む。

他の冒険者も探索しているようだ。


・キロス

「この様子だと入り口付近は既に無さそうですね。

そうなると奥の方も怪しいのかな?

ギルドの知り合いから別入り口を聞いて来たのですがそちらに行きますか?

そっちは中々強い魔物が生息しているらしいのでお勧めはしないと言われましたが、その分空いている可能性が高いです。」


・アルド

「そっちに案内してもらって良いかな?

腕には少々自信があるから。」


キロスは快く案内してくれた、途中で止めてくる冒険者もいたが気にしている暇はない。

しかし、この世界の冒険者は優しい人が多いな。

暫く歩く、前から現れる冒険者の中には怪我をしている人もいた。


・冒険者

「あんたら、この先の別入り口から入るつもりか?

やめとけ、見たことのない敵がいるぞ。

人型でかなり強い、、、しかも喋る。

まさかとは思うが、魔族ではないかと言う奴もいた程だ。資料とは違って何故か人間を殺さなかったが、余程な腕がないと勝てないぞ。」


・キロス

「情報ありがとうございます。遠くから確認して無理そうなら直ぐに撤退します。」


・冒険者

「無理だけはするなよ」


キロスの対応がしっかりしている。

お陰で助かる。


・アルド

「色々とありがとうキロス

君のおかげで助かるよ。」


・キロス

「アルドさんが一緒に居て下さるので僕も助かります。情報をくれるのも僕ではなくアルドさんに与えてる感じですしね。

アルドさん見た目から強そうだし、、、」


オーガベインの事を言ってるのかな?

確かに見た目がごついから強そうに見えるか、、、


・キロス

「ここですね。」


入り口を発見。

すると中から数体の魔族が出てきた。


・アルド

「まて、魔族だ。

何故この世界に居るんだ?」


・キロス

「魔族、、、、資料と違う姿だ。」


・アルド

「キロスはここに居ろ。」


そう伝えて前に出る。

数は3、一気に叩いてやる。


・魔族①

「ギャギャギャ、人間がまた来たぞ!」


・魔族③

「何しにきやがった、帰れ帰れ!」


魔族との戦闘が始まる。

構えると同時に後方から火球が飛んでくる。


・キロス

「援護します。」


・アルド

「ありがたい!いくぞ」


初めて一緒に戦うキロスとの息はピッタリだ。

アルド達の攻撃で3体の魔族は直ぐに倒される。


・アルド

「こんな場所に魔族とは、、、

一体何が起こっているんだ?」


・キロス

「アルドさんはこの魔族を知ってるんですか?」


キロスが疑問を投げかけてくる。

当然か、仕方ない答えてあげよう。


・アルド

「キロスはこの魔族に見覚えないのか?」


・キロス

「ありません。

魔族がこんな所に居るとは思いませんでした。資料で見た魔族の姿とは少し違うようですし、、、」


気絶した魔族を真剣に調べるキロス、しかし直ぐに魔族が光と共に消滅した。


・キロス

「消えた、、、?これは一体どういう。」


・アルド

「消えるなんて初めて見るぞ。

どうなってるんだ?」


2人して困惑の顔をする。

しかし考えたところで答えは出ない。


・キロス

「気絶させただけだったんですね。

消えてしまったのが謎ですが、、、

とりあえず、先に進みましょうか。」


・アルド

「まあね、アイツらも人間を殺さなかったと聞いたから話が出来るか試してみたかったんだ。

消えてしまったのなら考えていても仕方ない。

急いで『臨海ゴケ』を見つけよう。」


慎重に洞窟に入っていく2人。

洞窟内には冒険者の姿はなかった。

入り口を魔族が守っていたからか?


・キロス

「あそこに出口がありますね。」


・アルド

「本当だ、光が差し込んでいる。

ちょっと覗いてみよう。」


光の差す出口へと向かう。

そこは断崖絶壁に出来た穴だった。


・アルド

「おぉ、すぐそこは海だったのか。

だがここなら条件にあう場所だ。

『臨海ゴケ』はあるか?」


それらしい物を探すがイマイチ解らない。

そこでキロスに見てもらうことにした。


・キロス

「資料と同じ様な苔が有りますね。

とりあえず保管箱に入れて持ち帰りましょう。

保管箱は5個ありますので、念のため後4カ所調べてから帰りましょう。」


準備周到で助かる。

この子に声を掛けて貰えたのはラッキーだったな。

この調子で探していこうか。


・キロス

「アルドさんはどうしてこの村に?」


洞窟を探索しながらキロスが質問してくる。

これは困ったな、どうやって説明しよう。


・アルド

「なんて言えばいいのかな、、、」


・キロス

「あ、言いにくい事なら言わなくても大丈夫です。無神経な質問してすみませんでした。」


なんて良い子なんだろう。

何だか黙っている事が悪い気がしてきた。


・アルド

「いや、話すよ。

実は昨夜、次元の穴っていう光の渦に吸い込まれて別の世界からこの世界に来たばかりなんだ。

この世界に来て森で彷徨ってたら仲間がおかしくなってね。それで途方に暮れていた所、たまたまドンクと出会ったんだ。」


キロスは少し黙ってしまう。

無理もない、こんな突拍子もない話誰が信じる?

別世界から来たなんてさ、、、


・キロス

「成る程、アルドさんは異世界人なんですね。」


通じたよ、凄いよキロス君。


・アルド

「こんな話を君は信じるのかい?」


・キロス

「嘘を言ってるとは思えませんし、、、

僕の恩人に異世界の方が居ますしね。」


既に居たのか異世界人。

おかげで信じて貰えたから良しとするか。


・キロス

「次で5カ所目ですね、そこの苔を取ったら一旦戻りましょう。」


・アルド

「そうだな、しっかりと守るからよしく頼むよ」


遂に保管箱5個分の『臨海ゴケ?』を入手した。

そしていったん村に戻ることにした。

帰り道は特に問題なく戻る事が出来た。

そして村につきドンクの元に行く。


・ドンク

「お?ニュートのPTメンバー、キロスだったか?

『臨海ゴケ』を取って来てくれたのか?」


・キロス

「こんにちは、ドンクさん。

こちらのアルドさんに頼んで一緒に取ってきました。どれが『臨海ゴケ』か解らないので見て貰えますか?」


保管箱を5個渡すキロス。


・ドンク

「他の冒険者が結構な数を持って来てるんだが全て『海ゴケ』なんだよな。

今までこんな事なかったのによ、、、、」


そう呟きながら保管箱を調べるドンク


・ドンク

「おいキロス、これはどこで手に入れた?」


・キロス

「え?どこって海沿いの洞窟ですよ。

入り口はギルドで教えてもらった裏口だけど。」


・ドンク

「あそこには入り口に見たことのない、かなり強い魔物が居ると聞いたが。」


・キロス

「アルドさんが倒してくれました。

お陰で入る事が出来きました。」


・ドンク

「ほほぅ、あんたがか。

確か、昨夜森で会った奴だったな。」


ドンクが俺の事をじろじろ見る。

なんか変な気分だからやめてほしい。


・ドンク

「アルドとか言ったな、頼みがある。

お前たちが持ってきたのは紛れもなく『臨海ゴケ』だ。これで7人程の治療が終わる。

だが病人はまだ居るんだ。

至急必要な『臨海ゴケ』が後10箱は欲しい。

俺は治療の為にここから動けない。

頼む、キロスと一緒に取って来てくれないか?」


真剣に頼むドンク。

俺がこの世界に来たのも何か理由があるのだろう。


・アルド

「わかった、あと10箱取りに行くよ。

その代わり俺の仲間を治してほしい。」


・ドンク

「本当か?ありがたい。

あんたの仲間は一番最初に治すと約束する。

だから頼む、至急10箱取って来てくれ。」


気が付くとキロスまでも頭を下げていた。

これは断れないな、急いで取って来る事にしよう。


・アルド

「じゃあ、仲間の事は頼みます。

キロス、もう一度案内して貰っていいか?」


・キロス

「もちろんです、アルドさんありがとう。」


俺とキロスは再び洞窟へと向かった。

『臨海ゴケ』を入手するために、、、

そして俺達は再度洞窟までやって来た。

洞窟の内部には相変わらず魔物が徘徊している。

キロスと共に魔物を退治しながら進む。


・アルド

「魔物自体は見たことない敵が多いな。

しかし、最初に洞窟の入り口に居たのは紛れもなく俺たちの世界の魔族だった。

やはり、何かありそうだ、、、」


・キロス

「アルドさん、こちらです。」


最初の階層では5個までしか苔を見つける事は出来なかった、仕方なく下の階層に進む。

先に進めば進むほど敵が強くなる、それがこの世界の洞窟らしい。


・キロス

「1階層違うだけで急激に敵が強くなる時があります。洞窟によっては偶数階で強くなったりと法則が変わりますので、実際に戦闘して確かめるしかありません。

いつでも逃げれる態勢を整えつつ戦うのがこの世界の戦い方です。」


キロスがこの世界での戦い方を丁寧に教えてくれる。まだ少年なのにこの落ち着きと知識、この世界の冒険者は質が高いって事か?

この子が凄いだけなのかもしれないが、、、


・アルド

「慎重に進んでいこう。」


階層が変わり敵と遭遇するまでは慎重に進む。

洞窟内の造りはあまり変化はないようだ、、、

2階層には外に出れるような穴は無かった。

敵の強さはあまり変わらないのが救いだろう、、、

結局そのまま次の階に進む事となってしまった。


・キロス

「仕方ありません、このまま進みたいと思います。

アルドさん、準備は良いですか?」


・アルド

「あぁ、敵を見つけたらすぐに俺の後ろに。

進軍速度はゆっくりで行こう。」


3階層に降りたアルド達、洞窟の壁の色が変わる。


・アルド

「少し雰囲気が変わってきたな」


・キロス

「海も近いですし、地層がはっきり見えますね。

細かい貝などの化石も見られます。

元々はここも海の中だったのかもしれません。」


たいした観察眼だ、周りの状況を掴むことは冒険者にとって大事な能力の一つだ。

この子に出会えたのは本当にラッキーだったな。


・アルド

「洞窟の内部の空気が変わった、先程よりも感じるプレッシャーが違う。

キロス、気を付けて進もう。」


キロスに声を掛ける。

この子はしっかりと守らないとな。


・キロス

「はい、わかりました。」


暫く進むと魔族を発見する。

こんな奥にも魔族が、、、


・キロス

「アルドさん。魔族が、、、」


・アルド

「わかっている、少し下がっててくれ。」


何故ここに魔族が居るのか、、、

今は考えてもわからないだろう。

締め上げて情報を入手する方法もある、とりあえず気絶させるだけにしよう。

敵の数は3体。

そう言えば入り口も3体だったな。

3体1チームで動いているのか?

指揮官がいる可能性も有る。


・アルド

「俺が先に斬りかかる、キロスは援護してくれ。」


剣を握りしめて走り出す。

斬りかかり1体倒すと同時にキロスの魔法攻撃も別の敵に着弾する。

その後は敵を拡散するように放たれる魔法。

援護射撃としては最高だと思う。

お陰で難なく1対ずつ倒す事が出来た。


・アルド

「ナイス援護だキロス。」


・キロス

「アルドさんこそ流石です。」


お互いを称えつつ奥の穴を確認する。

構造は1階層と同じ様な形だ、ならば『臨海ゴケ』もあるはずだ。


・アルド

「俺はここで見張る、キロス苔の採取を頼む。」


『臨海ゴケ』の探索はキロスに任せる。

キロスは穴から外に出て捜索を開始する。

暫く待っているとキロスが戻ってくる。


・キロス

「すみません。

『臨海ゴケ』は見付かりませんでした。」


・アルド

「仕方ないさ、じゃあ別の場所を探そう。」


俺は先に進もうとした。

しかしキロスが疑問を投げかける。


・キロス

「何かおかしいんです。」


・アルド

「何かあったのか?」


・キロス

「苔を削り取った様な跡があるんです。

ここまで他の冒険者と会っては居ないのですよね?

真新しい痕跡があるのはおかしいと思うんです。」


確かに、ここまでの道のりは左程入り組んではいなかった。それなのに真新しい採取跡があるのか。

何故だ?俺達のほかに誰が取る?

少し考えてみる。

ふと思いつき、倒した魔物の方を見る。

倒した敵は既に消えていた、しかし鞄らしきものはその場に存在している。


・アルド

「まさか、、、」


俺は急いで敵の鞄を拾い上げて調べる。

中には苔があった、、、


・アルド

「キロス、来てくれ。」


まだ崖の方を調べているキロスを呼び、中身を確認してもらう。


・キロス

「これは、『臨海ゴケ』に非常に似ていますね。

これをどこで?」


・アルド

「魔族が持っていた、、、

何故この苔を魔族も集めている?

何かあるのか?」


不思議な事もあるもんだ。

この苔は魔族も欲しがっていると考えて良いか?

わざわざ別の世界に来てまで欲する苔か、、、

これは偶然なのか?それとも必然?


・キロス

「とりあえず回収します。

この量では恐らく3人分しかありません。

後2人分集めて一旦戻りましょう。」


キロスの言葉に俺は次の行動に移る。

なんだ、、嫌な予感しかしないぞ。

嫌な予感はすぐに的中する。


・アルド

「この世界の魔物と、俺たちの世界の魔族が戦っている?」


よく見ると魔族はやはり3体1組で動いている様だ。腰には先程の魔族持っていた鞄がぶら下がっている。


・キロス

「アルドさん、あの魔族も。」


・アルド

「あぁ、あいつも同じ鞄を持っている。

どうなってるんだ?

魔族が『臨海ゴケ』を集めているって事か?

一体何のために、、、」


・キロス

「戦闘が終わります。

この機に魔族を倒しませんか?」


・アルド

「よし、考えるのは後だ。

まずは敵を倒そう。」


魔物と魔族の戦いが終わった瞬間、キロスの魔法を叩き込む。

それを合図に斬りかかり魔族3体を倒すことに成功する。


・アルド

「キロス、やはりこいつらも『臨海ゴケ』を採取している様だ。」


暫く考えてから結論を出す。

つまり、洞窟を占拠する為、最初の3体は先行して入り口を封鎖。

その後、別チームが『臨海ゴケ』を採取する。

そんな流れなんだろう。

入り口の3体が鞄を持っていなかったのはそう言う訳だろう。

明らかに指揮している存在が居る。

どうする、この先の『臨海ゴケ』は既に入手済みかもしれない。


・キロス

「アルドさん、魔族も苔を狙っているとみて間違いなさそうでしょうか?

だとすれば、この先の苔は、、、」


・アルド

「そうだな、既に大半が採取されたとみて間違いないだろう。」


でも変だな、この状況だと魔族は一体どこからこの洞窟に入ったんだ?


・アルド

「キロス、この洞窟の入り口はいくつあるんだ?」


・キロス

「2カ所しか確認されていない筈です。

でもギルドも万能ではありません、まだ発見されていない入り口があるのかもしれません。」


確かにそうだ、これは調べる必要がある。


・アルド

「キロス、もう少し奥まで調べないか?」


・キロス

「はい、そうしましょう。

『臨海ゴケ』もまだ10箱には足りてませんし。」


・アルド

「一応、崖の状況も確認しながら進もう。

状況次第では魔族の鞄を手に入れる事も視野に入れて行動しよう。」


PTの行動方針は決まった。

今後は魔族の討伐をメインに考えていく事になる。

『臨海ゴケ』の採取状況も確認する必要もある。

魔族の奴ら、一体何を考えているんだ?


・キロス

「アルドさん、あそこに外に出れそうな穴があります。確認してきてもいですか?」


・アルド

「頼む、十分に気を付けて調べてくれ。」


キロスが外に出る。

俺は敵が出現しないか、襲ってこないかを警戒しつつも考える。


・アルド

「(もし魔族がこの苔を狙っているのならば、何のために集めているのか調べる必要が出てくる。)」


・キロス

「ダメです、やはり採取された後でした。

採取方法が荒かったので少しだけ入手できましたが、まだまだ足りないと思います。」


・アルド

「そうか、一度整理しよう。少しでも疑問を解決してから行動した方が良いだろう。」


・キロス

「苔を採取するのは不可能かもしれません、現状では魔族を倒して入手する方法が一番可能性が高いのではないでしょうか?」


・アルド

「それが一番可能性が高いか、、、

よし、この階層の探索を終えたら一旦村に戻ろう。

魔族を発見したら殲滅して苔を入手だ。

どこかに持って行かれたら緊急で必要な10箱分も確保できなくなるかもしれない。」


急ぐ必要がある。こうなると倒した魔族の身体が消えるのはありがたかったな、しかし時間を掛ければ何者かに倒されているとバレて此処から居なくなってしまうかもしれない。


・アルド

「少し急ごう、キロス十分に気を付けてくれ。」


PTは進行速度を上げる。

魔族を見かければ即倒して鞄を回収。

崖に出れそうな場所があれば確認の為に調査。

その繰り返しで3階層を調べつくし、次の階層の階段まで来る。


・アルド

「キロス、苔の状況はどうだい?」


・キロス

「採取場所では殆ど入手できませんでしたが、魔族の鞄からそれなりの数を入手できました。村で確認してもらわないと分かりませんが10箱分を差し引いてもかなりの量があると思います。」


・アルド

「よし、一旦村に戻ろう。

結構奥まで来たから、日が暮れるまでに帰れるといいが。」


PTは入り口まで進む、帰りは元々いた魔物を倒すくらいで特に危険はなかった。

洞窟から出たときには既に日が暮れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る