第32話:盗賊団拘束の旅【前編】

凍っていた足は溶けて、痛みもだいぶ引いてきた。


俺は今足をお湯に付けながら、盗賊団の居場所をマップに映し出していた。


無属性魔法、創作魔法でGPSを作って荷馬車に仕込んでいたのだ。


それが今、アジトの場所を知られている事に気づかない盗賊団。


GPSはヒュユクとアルフの直線状に結びその真ん中あたりで停止していた。


確かこのあたりにはロビンが罠に引っ掛かった遺跡があったはず。


場所は分かれば後は盗賊団全員を拘束するだけ。だけど、問題はあの氷属性の男。あの結界が厄介だ。


せめてあの結界を破れる力、または魔法があればいいのだが・・・・・・。


「タクミ~」


ロビンがふらふらと俺の元に来た。


真っ赤に膨れ上がったロビン。全身に火傷を負ったのだろう。


クリハがアイスロビンを煮込んだから・・・・・・。


俺は時空間収納魔法から万能薬を取り出してロビンに渡す。


ロビンは薬を受け取って一気に飲み干す。


痛みが引いて来たのか、ため息を一つ零して


「どうするんだ?」


「そうだな。あの結界を破れる魔法があればいいのだけどなぁ」


「そうだぁ。クリハみたいな魔法があればいいんだけどなぁ」


沈黙がしばらく流れ込む。


あれ?これクリハを連れて行けば万事解決じゃね?


俺は窓を開けて外で弓を連続で放ち魔力障壁結界を付与させた魔石から出る結界を一瞬で破壊するクリハ。


うん!クリハを連れて行こう!


「クリハ!」


「何でしょうか?ご主人様」


クリハが俺の声にすかさず反応した。


「盗賊団を捕まえに行くか?」


「行っていいのですか!行きます!絶対行きます。ご主人様を傷つけたこと後悔させてやります!」


うん!最後の方の言葉は無視して、本人は了承という事だそうだ。


「作戦を伝える!部屋に戻ってきてくれ」


「分かりました!」


クリハは慌ただしく部屋に戻ってきた。しかも嬉しそうに。


「まず、場所はここ」


俺は地図に表示されている赤い点を指した。


「俺の推測だと遺跡の中だと思う。あらかじめ、遺跡の出入り口を一つにして、それが完了後すぐに攻め倒す。前衛は俺だけ。ロビンとクリハは後衛を頼む。クリハは主に氷の結界を破壊だけしてくれたらいい」


「分かりました」


「おいらはどうしたらいいんだ?」


ロビンは片手をあげて発言する。


「ロビンはこれを盗賊団に当ててくれ」


俺は鉄の塊をロビンに見せる。しかしいつもの鉄の刃物ではない。俺の無属性魔法、拘束が付与されてある。


それはロビンは見ただけわかったようだ。


「俺は二人を守りつつ、近接攻撃を仕掛ける」


「分かった」


「分かりました」


作戦は以上だ。


だけど、盗賊団を捕まえた後どうしたらいいのだろうか。


この町、ヒュユクにはアルフ同様、警察官のような者はいない。人間には人間の罰を受けるべきだし。


「イルーヴァタールに預けたらどうでしょう?あの国は人の法もあるので」


唐突すぎるクリハの発言に俺は驚きが隠せない。


心を読まれたのだろうか?


「ご主人様はもうちょっと顔に出さないようにした方がいいですよ」


なるほど、俺の表情一つでそんな簡単に読み取ることが出来るのか。クリハの言う通り気を付けよう。


「ならトーリンに後を任せよう」


ロビンは羽筆を持って紙にトーリンさんに来てもらう様に書いて、それをロビンは窓から風属性魔法でトーリンさんの元へ運んだ。


紙は風に身を任せるようにゆらゆらとトーリンさんの元へ向かって行った。


さて、第2ラウンドだ。





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