第3章 獣人族の町〈フュユク〉
第28話:病気対策の旅【前編】
ドワーフ国イルーヴァタールを出発してから約3日。
なんやかんやで獣人族の町〈ヒュユク〉に到着した。
ロビンは毎度の事、ぷくぷくで俺作の薬を酒のように飲んでいる。
クリハは俺と一緒に町の様子を眺めている。
「暗い」
俺は率直の感想をため息のように零す。
「暗い、ですね」
クリハも俺に頷く事しかできないようだった。
「なあ、ロビン。獣人の町ってこんなに暗いのか?」
「ぷはー!ん?ああ、この時期はこんな感じだよ」
薬を飲み干したロビンが答える。
この時期?他の時期は違うのだろうか。
とりあえず俺たちは町に入ろうとするがすぐに門番に止められる。そして荷物チェックをされた。
何事もなく門をくぐった俺は町の雰囲気に呑まれそうになる。
「なんでこんなに暗いんだ?」
あまりの暗さに俺は耐えることが出来なかったので、俺はこっそりとロビンに話しかける。
「この時期、と言うより少し前が全盛期かな。感染病が連続的に出るんだ」
感染・・・・・・。
嫌な文字が浮かべ上がる。
前世の俺の結構風邪とかには強かったけど、なぜか毎年インフルエンザにかかって寝込んでいる。
「その症状が、高熱、吐き気、頭痛、咳とかかな?」
それ絶対インフルエンザ!
思わず突っ込みたくなるけど何とかこらえる。
「それ、季節性インフルエンザじゃないでしょうか?」
え、この世界にインフルエンザって存在するの?初耳。
クリハの言葉に驚きを隠せているか俺は心配になった。
「少し前ってことは、寒期のですよね?」
「そうだぞ」
クリハの質問に答えるのロビン。
「多分ですが、寒気に暖を取る事によって空気中の水分が下がります。それが感染原因だと本で読んだことが有ります」
クリハの知識量に俺は思わず感心する。
「詳しいんだな」
「一様、医療師になりたかったので」
ロビンの問いに答えるクリハ。
「それにしても寒気は越したけどここは寒いな」
ロビンの言う通り、北側にあるこの町はアルフやイルーヴァタールに比べて寒い。
「見ろよ!」
ロビンは何かを見つけて指を指す。
「人だかりができてるぞ。きっとおいしい物があるに違いない!」
食べ物しか頭にないロビンは俺たちを置いて先に人だかりの中に入ってきた。
俺とクリハも後を追う。
人ごみをかき分けてたどり着いた場所は人気店ではなく、顔色を悪くした獣人族が数人寝込んでいる。
「どうやら、さっき部屋で倒れているの見つけたらしいんだ」
ロビンがこの状況を説明してくれる。
「タクミ、何とかできないか?」
ロビンは俺に頼み込む。どうして俺なんだろうか。この町にも医者くらい一人や二人いるだろうに・・・・・・。
「まあ、やるだけやってみるよ」
俺はロビンの頼みを断れず、倒れこむ人たちの様子を窺う。
魔法スキル、解析。
魔法でこの人たちの状態を調べる。状態は全員同じで中毒性で倒れたみたいだ。
中毒性・・・・・・。
考えられる中毒性は、食中毒、アルコール中毒、他には・・・・・・。
知っている中毒性を考える。辺りを見渡して何かヒント担うようなものを探す。
その時、冷たい風が俺たちを吹く。薄着の俺は凄く寒い。
家の中は多分、暖で充満しているだろうな。速く終わらして暖を取ろう。
暖を・・・・・・。
不意に窓から漏れ出ている黒い煙が目に入る。
確かロビンが部屋で見つかったとか言っていたな。
なら考えられるのは、一酸化炭素中毒か。
俺は原因が一酸化炭素中毒と分かったので治療にあたる。
魔法スキルで半径1km内に存在する酸素を抽出し、倒れこむ人たちに吸わせる。
高濃度なので慎重に吸わせる。
大量の酸素を取り込んだ人たちは顔色がましになってきた。
「とりあえず、あとは様子を見よう」
全員呼吸がしっかりしているのを確認したら、俺はこの場を離れ、この町に存在する悪物質を魔法スキル、抽出を使って集め、魔法スキル、消滅空間にいれる。
悪物質は、今頃、消滅空間で徐々に消えていくだろう。
だが、これは一時的な応急処置に過ぎない。何か対策を立てないといけない。
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