第25話:彼女の旅【前編】

奴隷として彼女を買ってから2日が経った。


未だに彼女の意志を一言も聞いていない。全部「ご主人様の命令なら」で返されてしまう。


まあ、どちらにしても、彼女の見た目をどうにかしないといけない。


ぼさぼさに伸びた髪の毛。ボロボロの服。他人が見れば俺たちが彼女をいじめているようだ。


「と、言う事でとりあえず散髪しよう」


俺は彼女に言った。


ロビンは拍手をする。


「まず、この見た目を何とかしないとな。で、どこの散髪屋にするんだ?」


「え、俺が切るつもりだったんだが・・・・・・」


「え⁉」


ロビンが俺の言葉を聞いて微妙に後ろに退いた。


俺はそんなにおかしいことを言っただろうか・・・・・・。女の子の髪なんて切ったことはないが、今まで自分の髪は自分で切ってきたんだ。多分何とかなると思っている。


「それにもう、道具も買ってある」


目を移すとそこには普通のハサミとすきバサミと櫛がある。


「だ、大丈夫なのか?髪は女の命だぞ」


確かにロビンの言う通り失敗は許されない。適度に髪を整えて、前髪は、目が見えるくらいまでカットしよう。


「それじゃあ、やるよ」


こうして、彼女の散髪が始まった。


1時間後。


「お、おわ、おわわわ」


ロビンが言葉を失うほどの光景となった。


俺が散発した結果、彼女は凄く可愛く美化された。


それはもう今すぐお嫁に行けるくらいにだ。最高に可愛い。


「タクミにこんな才能があるなんて」


ロビンに言われると認めるしかないようだ。俺の散髪力を。


まあ、彼女の顔が元々整っているから普通にカットするだけで可愛くなる。


「これなら、いろんな服が似合いそうだな」


俺は彼女を鏡の前に立たせて、自分の顔を見せる。


「どうだ?」


彼女は鏡の自分を見ながら、前髪や横髪を触る。


俺が作ったシャンプーとリンスのお陰でぼさぼさだった髪は綺麗に整っている。


「あ、ありがとうございます」


彼女はそう言った。


さて、髪が整ったところで次は服を買いに行こう。


「近くに服屋ってあったよな?」


「ああ、国維が運営している店があったぞ」


ロビンに言われたところに足を運ぶ。その店に並ぶ服はどれもドレスやスーツのようなまるで貴族が着るような服ばかりだ。


「くる場所を間違えたみたいだな」


この場所を提案したロビンが言った。俺も頷くしかできなかった。


しかし、どこの店に行ってもいい服、高い服しか売っていなかった。


そして、結果一旦宿に戻ることにした。


宿で昼食を取っているとある男が俺たちの隣に座った。


「よう、隣失礼するぜ」


俺の魔法石の額を作ってくれたトーリンさん。


「暇そうだな」


ロビンが嫌味のようにつぶやく。確かに毎日毎日こう俺たちのところに来られるとそう言わざる負えない。


「まあ、普段の仕事は、報告書を見るのと、さらに上に渡す報告書を作るだけだからな。暇と言えば暇になるかもな」


そう言った後、酒を一気に飲む。ドワーフは酒好きと聞くがどうやら本当だったようだ。


「それにしてもそっちは疲れた様子だな」


「まあな。良い服がなかなか見つからなくてな」


「まさか、貴華街に行ったんじゃないのだろうな?」


貴華街?なんだそれ?


俺はロビンを見る。ロビンは俺と目が合うなりすぐに逸らす。


「何のことか分かっているんだな?」


俺はロビンを問い詰めた。


「わ、わるい。すっかり忘れてた」


貴華街。それは貴族が足を運ぶ店が並ぶ街。その街に並ぶ商品は全てが高級で高値が付く品が並んでいるそうだ。


どうりで俺たちが探している服が見つからないわけだ。


「貴華街の裏に行くといいぞ」


トーリンさんに言われて、昼食後、改めて彼女の服探しに行った。

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