第21話:鉱石採取の旅【中編Ⅱ】
そんなこんなで大会は順調に勝ち進んでいった。
まあ、一回戦の時から俺への誹謗中傷は止まないのは辛い。
なんせ、この大会では賭けがあるそうで、運が良ければ、大金が入ってくるそうだ。
しかし、初めてこの大会に参加した、色白よりで華奢な俺が何勝もすると、賭けは大きく外れることになるだろう。
その賭けにどれだけ賭けたか知らないが、大損なのは分かる。
しかし、この中で勇逸、得をしてるのは、トーリンさんとロビンだけだろう。
抜け目がない二人だ・・・・・・。
『さぁ、いよいよ最終戦です!前回優勝者、クロムイー氏、そして対する相手は前代未聞、初出場のタクミ選手!さてどちらが勝つのでしょうか!』
相変わらず、実況者が言っている事が毎度腹が立つ。
一回戦はちょっとしたミスで気絶させたが、それ以降はちゃんと剣のみで勝ってきた。
魔法を使うとロクなことがない。
しかし、今更だがこの大会は良くできている。
魔法や剣をそのまま生身で受けると大怪我をしかねない。しかし、ドワーフ国で開発された魔道具によって、どんな傷を癒す魔道具があるそうだ。
さっき、トーリンさんに聞いた。
「言っておくが逃げるなら今のうちだぞ」
相手のクロムイーさんが言う。逃げるなら最初から逃げているよ。
「そっくりそのまま返しておくよ」
俺は相手を煽る。
理由はいくつかある。
一つ目は煽ることによって、相手を怒りのままに戦わせる。それによって、剣筋や魔法が荒くなる。
二つ目、単純に俺の方が強いのが分かるから。俺の算段では、お互い本気で戦って、いい勝負をしてぎりぎり俺が勝つ風に戦うつもりだ。
三つ目は・・・・・・あれだ。
俺はちらりと相手のクロムイー側の観客席に目をやる。
『頑張って~!』
可愛い子たちが声を上げている。
その声に反応して、手を振るクロムイー。
『きゃー』
悲鳴を上げる女の子。
この羨まし状況、屈辱的だ。
「始め!」
審判の合図でクロムイーは動き出す。
俺は鞘からトーリンさんから貰った剣を抜き取って構える。
もちろん構えは適当だ。
魔法スキル、身体強化で攻撃力、防御力、速度を上げる。
相手は剣に炎をまとわせる。そして、俺の剣とクロムイーの剣が交えた。
ジュリ
瞬間、溶けるように剣を貫通し、俺の頬に傷を負わせた。
俺は瞬時にクロムイーから距離を取って、状況を整理する。
クロムイーの足元に落ちている剣先の欠片。剣先がない俺の剣。
どうやら、あの剣にまとっている炎は剣を溶かすほどの高熱だったようだ。
しかし、相手の剣は一ミリも歪みもしていなかった。よっぽど良い鉱石を使っているのだろう。
剣が折れた以上、魔法を使うしか手段はなさそうだ。
さっき負った傷は知医術神の加護で治癒する。
ほんと加護ってなんでもありだな。
魔導書を書いた人物もすべての神の加護を持っていたようで、その加護の使い方も記していた。
あ、そういえば、アルフで作った鉄の槍があったんだ。
俺はそれを思い出して、時空間収納魔法から槍を取り出す。
しかし、また溶かされそうだ。まあやるだけやってみよう。
「竜炎!」
クロムイーが詠唱すると、クロムイーの背後に炎の竜が形作られた。その竜と同時にクロムイーも襲ってきた。
俺は時空結界を発動する。そしてその結界の中に竜は吸い込まれて行き、それに動揺しているクロムイーに槍で剣を粉々に斬り、最後に結界内から竜を出す。それをクロムイーにぶつける。
女の子たちは倒れるクロムイーを見て唖然とする。
ふん、これが俺の力だ。
女の子たちの前で情けない負け顔を浮かべているクロムイーは、見ていて、高笑いしたくてたまらない。
俺の圧勝。そしてロビンとトーリンさんは懐が大金で溺れた。
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