仲間との初めの一歩

俺とロビンはここ、エルフの町〈アルフ〉を出る準備をしていた。


とはいえ俺が準備する物は凄く少ない。


なんせ私物は調味料と魔導書のみだからだ。


部屋を最後の確認を済ませた後俺はロビンの待つ場所に向かう。


「遅いぞ」


謝ろうとするがロビンが手ぶらなことに気が付き、謝る気を失せた。


そりゃあ、何もいらないならな。


思わず突っ込みたくなるが堪える。


「それじゃ、行ってくる」


ロビンは今まで世話になった人たちにそう告げる。


「今までありがとな」


長のルイラットさんに言う。


ルイラットさんは頷くだけだった。一緒に旅してほしいと言ったルイラットさんは本当は寂しいのだろう。


だからこそ、ルイラットさんは堂々とロビンを見送るのだろう。


子供を持ったことのない俺だが、それぐらいは分かる。


「それじゃあ、タクミ。出発だ!目指すはドワーフ国、〈イルーヴァタール〉だ」


その言葉に反応した俺とルイラットさん。


ドワーフ、あのドワーフ。いい武器を作ってもらえるかな。


呑気に先のことを想像する俺。


「ロビン!」


しかし、俺たちが足を踏む前にルイラットさんが声をかける。


「イルーヴァタールに行くなら顔を見せてあげなさい」


「わかってるよ」


俺には何のことか分からない。


だが、何となく察しは付いている。俺は心配でロビンの表情を伺う。


一瞬、ロビンの顔色が暗くなるが、その暗さを吹き飛ばすほどの笑みを浮かべて


「今度こそ、行ってきます」


ロビンと俺は旅の初めの一歩を踏み出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る