第7話:温泉の旅【後編】
ロビンに言われるまでもなく俺は服を脱いで温泉に飛び込む。熱が体の芯まで伝わってくる。髪から水滴が滴る。
「そういえば、まだタクミのステータス全部見れてないや。見せてくれ」
俺はロビンに言われてステータスを開く。
今更だがこんな簡単にステータスを見せていいものだろうか。
「年は23で、魔力は・・・・・・!」
ロビンが失言する。口をパクパクさせる。
そこまで驚くステータスなのだろうか。気になったので魔力を見る。
魔力:236784
・・・
あれ?チートは付いてこないんじゃないだっけ?どうしてだ?
いやその前に俺今23⁉だいぶ若くなってる。まあ若くなる分には構わないが・・・。
「しかも加護もある」
創造神の加護 生命神の加護 死霊神の加護 魔法神の加護
武神の加護 太陽神の加護 月神の加護 知医術神の加護
地神の加護 闇神の加護 大気神の加護
加護の量、多すぎない?これチートじゃないか。旅するには加護があるから大丈夫とかアヌビスさん言ってたけど、ちょっと多すぎだと思う。
「タクミ、ステータスは絶対誰にも見せるなよ。11神すべての加護を持ってる人間はこの世でタクミだけだと思う。それに創造神の加護は勇者すら得られなかった加護だ」
へぇ、勇者がいるんだ。なら俺は安心して旅ができるや。
「けど、へんだな。スキルが一つもない」
スキル枠だけ何も書かれていなかった。まあアトゥムからスキルや魔法は自力で習得しないといけないと聞かされていたので驚きはしない。
それより、どうやって魔法を習得するのだろうか。
「ロビン、魔法ってどう使うんだ」
「魔法石が無いと習得できないぞ」
何その凄そうな石。つまりその石を沢山集めれば、たくさんの魔法が使えるってことか。
「けどタクミは人間だから一つしか属性を持てないと思う。精霊は2つも持てるんだぞ」
まじか・・・。まあ安全に旅が出来たらそれでいいか。でも少し残念だ・・・。
「そろそろ戻るか。あ、ここに来たことみんなには内緒だぞ。怒られちゃうからな」
「分かった。みんなに言ったら独り占めできないもんな」
「そういう意味じゃない!本来、水浴びは清水じゃないといけないんだ」
ソウナンダ!でもそれ精霊だけの話だろ?人間には関係ない、とは言わない事にした。
それから俺たちはアルフへ戻る。
戻ったころには日が暮れていた。
「どこへ行っていたんだ?ロビン」
「ギクッ!」
ロビンが肩を震わせ声を上げる。
「えっと、山の方に、」
「知っとるぞ。水浴びに言ったのだろ?」
ルイラットさんは完全に怒っていた。ガチだった。目が笑っていない。なんだか俺も怖くなってきた。ちびりそうだ。
「それも湯の地で、だろ?」
「た、助けてくれ!タクミ!」
ロビンは俺の背中に隠れる。そして俺を押し出そうとする。もちろん体が小さいロビンの力は俺を一歩も動かすことはできない。
「すいません。俺の故郷ではお湯で体を洗う風習でして、ロビンに案内してもらっただけです」
しばらく間、沈黙という冷たい空気が流れる。
ルイラットさんは俺をじっと睨み後にひょっこりと顔を出しているロビンを見てから大きくため息をついた。
「それはすまない。さぁ宴はもう始まってます。ごゆっくり」
そう言って大樹の方を指す。町の精霊たちが食べたり、酒を飲んで顔を真っ赤にしている精霊もいた。
「今日は何かの祝い事でもあるのですか?」
大樹の方に歩いていこうとするルイラットさんを止めて尋ねる。
「タクミ・クリハ殿、精霊一同、あなたを〈アルフ〉に歓迎します」
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