第1章 エルフの町〈アルフ〉

第4話:出会いの旅【前編】

小鳥の鳴き声が耳に入ってきた。


体を起こし、腕をうーんと伸ばし、背伸びをした。綺麗な森の空気を吸う。


そう、森の空気を・・・。


今、俺が持っているのもは、何もない。お金も剣や魔法の杖も。

これ、結構やばくね?


とりあえず近くの村にでも行こう。それから今後の計画を立てよう。俺は立ち上がって近くの村に向かう。


・・・村ってどこにあるの?


そう思いながら適当に歩き回っているうちに岸辺に付いてしまった。


本当に綺麗な世界だ。


前方に広がるのは真っ青な海と雲一つない空。汚れがない空気がこの場を満たす。


広大な海は白い小波を立てている。

そんな綺麗な音を遮ったのは俺の腹だった。お腹が空いた。


丁度、海が目の前にあるのだから魚でも取ろうと思った。ただ竿が無かった。


辺りを見渡す。丁度いい木を探す。だが、どれも細い枝ばかり。いっそ、ここの木を切り倒せたら何とかなりそうのだが・・・。


あ、この世界には魔法があったんだ。


初めて魔法を使う事に胸を躍らせる。だが、どうやって魔法を使うのだろうか。いろいろ試してみよう。


「エアカッター!」


木に向かって叫び、右手を横に振った。結果、何も起きずただただ恥ずかしかっただけだった。


イメージが必要なのかもしれない。


俺は風が草木を切るイメージをして


「エアカッター!」


何も起きなかった。


なぜだ!なぜ魔法が発動しない!・・・!言語の問題か?


「風剣!」


適当にそれっぽい漢字を並べ、言ってみる。


何も起きなかった。


だよな!うん、こうなると思ったよ。


どうしたらいいののか。とりあえず海の中を見る。

魚の姿や影は全くなかった。


俺、これからどうしよう。


・・・


よし!この海の反対方向に向かって歩き続けよう。そうと決まればすぐに行動に移そう。腹はあとで満たそう。


そう心の中で言いながら海とは反対の森の中に入ろうとする。


何となくこの海を見るのが最後な気がした。だから最後にもうちょっとだけ目に焼き付けよう。


広大な海を見渡す。小波が岸に向かってくる。少し向こうで何かがバタバタしている。きっと誰かが溺れているのだろう。


ん?俺さっき爽やかに誰かが溺れてるとか言った?


いやまさかな。


そう思い同じ場所を見る。


やっぱり溺れているようにしか見えなかった。それに


「た、たす、だ、だ、か」

と聞こえてくる。


とにかく助けなければ。


そう思い海の中に飛び込む。すいすいと溺れている人のところに向かう。何とかその人が沈む前に手を取ることが出来た。

ただ人と言っていいのだろうか。


そんな言葉が過ってしまうほどそいつは小さかった。精霊?小人?人とは思えないほど小さいそいつは海水を吐く。


俺はこいつの事を後に考えることにして岸に向かった。


それから5分くらい経っただろうか。未だに岸にたどり着けず泳ぎ続けている。ただただ体力を消耗しているようにしか思えない。何だろう、波が岸とは反対方向に向かっている気がする。


もしかして、離岸流じゃないだろうな。いや、この際離岸流と同じ対処をしよう。


俺は岸の平行方向に向かって泳ぐ。離岸流から抜け出しのか体にかかる圧が緩くなった気がした。どうやら本当に離岸流だったようだ。


それから何とか岸までたどり着くことが出来た。そのころには俺は体力を大幅に取られ、体に疲れが溢れ出す。


小人は未だに目を覚まさなかった。


「おーい、起きろ」

そう言いながら頬を叩いてやる。


呼吸はしているから目覚めるのも時間の問題なんだろうが、俺は速くご飯を食べたいのだ。


「ん、ゲホッ、ゲホッ」

咳き込む小人。その後すぐに目を覚ました。

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