超能力者珍伝説

松長良樹

不死身

 

 長年の日常生活の楽しみを犠牲にして博士はついに不死身の薬を作りあげた。この薬の効能が人類に計り知れない恩恵をもたらすのは間違いのないところだろう。



 早速博士は実験を始めた。まずは原始的に腹にナイフを突き刺してみたが、血は一滴も出ずナイフは自然に体から抜け、見る間に傷口は修復された。


 次に燃え盛る炎の中に身を投じたてみたが火傷一つしない。今度は嫌がる助手にピストルで撃ってもらったが、胸にあいた風穴はものの見事に修復され跡形さえ残さない。博士は不死身なのだ。



 最後に博士は絶壁から海に飛び込んでみた。やはり博士は死ななかった。コンクリートみたいな海面に身を打ち付けられても博士は平気なのだ。


 しかし困った事が起こった。博士は泳げないのだ。博士は見る間に波にさらわれ、やがて行方不明になった。


 捜索は懸命に行われたが、時間と費用が際限なくかかったので仕舞いには『どうせ不死身だ。死にゃしないさ』と早々に打ち切られてしまった。




 博士は今でも太平洋のどこかで溺れ続けている?  らしい。




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