俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
楼手印
俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
別の冒険者が逃した、ゴブリンの生き残りを討伐するだけの簡単な仕事。
冒険者の活動に少しは慣れてきた俺とパンツなら、小遣い稼ぎに手頃な内容だっただろう。
実際、巣のリーダーらしいゴブリンシャーマンを背後からあっさりと仕留め、あとは残り4匹になった人間の子供程度の身長しかないゴブリンを片付けるだけだ。
下ろせば腰まで届く長い赤毛をポニーテールにまとめたパンツが、短めのスカートを翻して戦うのを後ろで眺めてるだけでも終わるだろう。
――パンチラが気になって、見えろ! と念じてたせいでパンツになってたが、俺の相棒は人間だ。
1歳年上の幼馴染で、戦闘には使えないものの便利な魔法系統の素質を持っている。
なのに俺が故郷を出る時に剣士として守ってあげる! とついてきた物好きだ。
……町にいれば、いくらでも働き口も結婚の申し込みもあっただろうに。
その礼として進呈した、倉庫でホコリを被っていた先祖伝来のスカートだが、本人には甚だ不評である。
まず短い。
普通にしていれば下着が見える事は無いが、戦闘の様な激しい動きとなればギリギリで見えないという、絶妙な長さをしている。
さらにスカートの上や下に下着以外の物を重ね着すると、その効力を失う。
効力というのは、並の金属鎧よりも頑丈な魔力だ。
このスカートを身につけるだけで、全身が騎士の甲冑並の防御力を得られる。
安全面を考えれば使わない手はない品なのだ。
どういう意図で作られた品なのか、俺にはよく分かる。
ありがとうご先祖様!
俺が先祖への畏敬の念を新たにしている頃、スカートから人に自慢できる美脚を晒して相棒が戦闘を優位に進めていた。
こうしている間にも相棒がゴブリンの1匹を長剣で斬り伏せ、残りは3匹。
だが断末魔をあげるゴブリンでも、最期のあがきを見せる事はある。
生き残った者達はその成果に弔いの喝采を送り、勇敢な仲間に敬意を表す。
「グキャキャキャッ!」
「よっしゃあぁぁぁ!」
「あんたまで喜ぶな⁉」
正面を仲間に任せて背後に回ろうとして果たせず、斬り伏せられたゴブリン。
だが最後の力で相棒にしがみつき、引き倒す事に成功していたのだ。
とっさに正面のゴブリンに視線と剣を向けて倒れた相棒だったが、四つん這いで片手の剣をゴブリンに向けては下半身までフォローしきれていない。
めくれ上がったスカートから、白い下着に包まれた尻を豪快に晒している。
「手伝った方が良いか?」
「いらないわよ!」
普段から前衛は任せろと豪語してるだけに、ゴブリン相手に不覚を取った事を恥じてるらしい相棒に提案を切って捨てられた。
それならばと赤い紐を腰で結んだパンツをじっくり観察する俺だが、さすがに幼馴染でもある相棒の敗北を願ってる訳じゃない。
後ろで見てるのは、俺が治療魔法を使えるヒーラーだからだ。
相棒が前衛、俺が後衛。
2人だけの冒険者パーティだが、一応はそういう事になっている。
おまけに他所で追い立てられて逃げてきたゴブリン達は、武器すら持っていないのだ。
残りは相棒が必死で隠そうとしてるパンツに夢中な、素手のゴブリン3匹と俺。
相棒なら1人でも問題ない数だろうとは思う。
……問題は無いだろうが、相棒のピンチを見てろってのは無理な話だ。
「エリック! あんたは後ろで見てなさい――いやこっち見るな⁉」
「これは仕方ないんだ、本能だから――なっ!」
ゴブリンに走り寄り、その頭に手に入れたばかりの金属製棍棒を振り下ろす。
片手でスカートを引っ張って尻を隠そうとする相棒に視線を向けてた割には、狙い通りに固くて薄い殻を割るような感触が手に伝わってくる。
相棒のパンツに夢中になりすぎたのがコイツの敗因だ、下手な魔法より効果的な気がする。
味方にも効果があるのが玉に瑕だが。
「あれは相棒が持ってる5枚の中でもフリルと装飾が良い仕事してるんだ。お前ら良い趣味してたぜ、分かりあえたかもしれないのにな……」
「ゴブリンと分かりあえたなら、私が討伐してあげるわよ」
悲しみを込めて敵を見つめる俺に向け、相棒から冷たい言葉がかけられる。
俺が1匹仕留める間に、残りの2匹を片付けたようだ。
さすがだな、パンツ丸出しだったけど。
「何怒ってんだよレベッカ」
「私1人でやれるって言ったでしょ⁉ それとその杖は殴る物じゃない! あとなんで私の下着の枚数を知ってるの!」
「宿の同じ部屋で寝起きして、部屋の中に洗った下着干してりゃ覚えるだろ普通」
「普通は見ないフリをするの!」
フリならやっぱり覚えてるじゃん、ハハッ! とか笑うともっと怒られるから止めておこう。
それに棍棒もとい杖だが、素手で殴るより何かあった方が強いじゃん。
ボスのゴブリンシャーマンが持ってた物だったけど、金属製で先端に魔石がついてる戦利品は高く売れそうだった。
依頼成功の打ち上げ宴会の足しになるかと拾っておいたんだが、殴っても結構効果的な事を実戦で証明してしまった。
護身用に持ってる剣より使いやすいし、良い物拾ったな。
「回復役が先に倒れ――ちょっと聞いてるの⁉ エリック・バイロン・カーライル!」
「フルネームはやめろよ……」
相棒のお小言を聞きながら周囲を探索するが、生き残りはいなさそうだ。
事前に聞いてた逃した数とも一致するし、依頼完了だな。
13歳になった時、1歳年上で幼馴染のレベッカと旅立ってから1年。
どうにかこうにか冒険者として仕事をこなせるようになってきた。
今回も巣穴を発見した時に、一度襲撃されて逃げた群れなら逃げ道を確保するんじゃ?
という想像が当たって背後からの急襲で真っ先にボスを倒した事もあり、スムーズに仕事は片付いたわけなんだが。
後は帰って報告するだけだってのに、相棒のご機嫌は中々直らない。
「入ったところから出られれば楽だったのに!」
「仕方ないだろ、崩れる仕掛けまで用意してるとは思わなかったんだから」
逃走路からの奇襲には成功したが、思ったより用心深かったゴブリン共のせいで、帰り道は比較的長い洞窟を歩かなきゃ行けなくなっていたのだ。
まあ家主のゴブリンは全滅させたんで、普通に歩いて帰るだけ――。
だったら良かったんだけどなあ……。
「なにこれ? 落とし穴の出来損ない?」
「侵入者への妨害用には間違いなさそうだな、自分達も出入りしにくいだろうに」
松明を掲げて洞窟を照らしながら慎重に進む俺達の前に、ザックリとえぐられた様に通路が途切れている場所が見えてきた。
向こう岸へは5m、深さは4~5mってとこだな。
道具も無しに……いや、ゴブリンシャーマンが居たんだ魔法使ったか?
何もさせずに倒したから、あいつが何が出来たのか知らないんだよなあ。
前の冒険者達の討伐依頼でも、真っ先に逃げたらしくて情報無かったし。
「この突き立ってる丸太を渡って通れって事よね?」
「そうしてたんだろな。ちょっと細いから自分達より大きい侵入者は苦労する、と」
そういう防御施設だと思う。
逃げ出した群れがここに逃げ込んでから、それほど時間は経ってない。
俺達が侵入に使った万一の隠し逃走路を考えても、あのゴブリンシャーマンは土精系統の魔法を使えたんだろう。
それを踏まえても、それほど複雑な仕掛けは用意出来なかったはずだ。
「罠とかそういうのは無さそうだ、渡ろうぜ」
「落ちて運が悪いと骨くらい折りそうじゃない? わ、私は大丈夫だけど、エリックがね⁉」
「先に渡って壁にロープ張ってやろうか?」
「……おねがい」
前衛で物理を担当してるレベッカだが、身が軽いのは俺の方だ。
偵察や罠の発見や解除、鍵開けなんかのスカウト的な役目もこなせなくはない。
子供の頃から、女の子の部屋や着替えや水浴びを覗くために頑張ってきた成果が、今の俺に力を与えていると思うと感慨深い物がある。
荷物から道具を取り出し、壁に打ち付けた木の杭に固定。
その後ひょいひょいと丸太を渡り、特に問題なく向かい側へとたどり着く。
「こっちも固定っと……いいぞレベッカ」
「い、いくわよ? ちょっと待っててね」
はいはい。
ゴブリンや山賊なんかとの斬り合いでは勇敢なんだが、こういうのは別らしい。
壁に張ったロープを掴み、カタカタと震える足を丸太に乗せている。
一気に渡った方が良いんだけどな……と、出来る俺は思っちゃうんだが。
口には出さずに、恐る恐る足を次へと進めるレベッカを見守る。
「え……わわっちょっと! ねぇっ⁉」
「ロープ離すなよ!」
さすがにレベッカでも、何事も無ければ丸太を渡りきっただろう。
が――その足元では片足を乗せた丸太が、グラグラと揺れ始めていた。
「エリック! ど、どうしよう⁉」
「落ち着け、根本が折れた訳じゃなさそうだ。倒れそうな側の足を次へ移すんだ」
「そ……そんな事言われても!」
ロープを掴んだまま、傾く丸太に乗せた片足が離れて行く。
戦闘に入る直前に放り出してた荷物も含めれば、今のレベッカの重量はゴブリンの2倍くらいはある。
それに足の震えや体重のかけ方もマズかったんだろう。
レベッカの足は少しずつ開いていき――。
「おぉ……もっと……もっとだぁぁっ‼」
「だから喜んでんじゃない!」
ミニスカートが、足が広がるにつれて太ももを伝ってめくれていく。
髪やスカートに合わせたような、パンツを固定している赤い紐までが松明の光にくっきりと――!
さっきは尻側を眺めさせてもらったが、今度はフロント側か!
スカートから下部分がちょっとずつ見えてくるのも高得点だったぞ!
「今日はなんて日だ……レベッカがそんなにサービスしてくれるなんて……」
「したくてしてるんじゃない! 助けてよ⁉」
感動に打ち震える俺に向かってまたもパンツ丸出しで叫ぶレベッカだが、そう簡単にはいかない。
今丸太を渡ってレベッカに手を差し出したら、絶対しがみついてくるからな。
2人で絡んで落ちるくらいなら、1人で落ちた方がまだ上手く落ちれるだろう。
かと言って助けてと言ってるのを放置するのも……。
俺に出来るのはこうしてレベッカのパンツを支える紐が、少しずつ緩んでいくのを見守るだけかも――。
ん、いや……パンツ?
「もうちょっと頑張ってろレベッカ!」
「エリック……危ない⁉」
レベッカが驚いたのは、俺が通路の凹みの底に飛び降りたから。
不安定な足場でレベッカは怯えてるが、その高さはたかが4mだ。
最初にレベッカが言ったように、運が悪いと骨折するかもしれない。
逆に言えばその程度の高さって事だ。
最初から着地するつもりで降りれば何て事はない……ちょっと足痛いが。
レベッカが足を乗せている傾いた丸太を、元の位置に戻してやる。
「ほら、下で支えてやるからさっさと行け」
「あ、ありがとう……」
気を取り直して足を進めるレベッカ。
後は渡りきってから、ロープを下ろしてもらえば良い。
若干の足の痛みなんて相棒の為ならばどうということもない。
震えながら渡るレベッカを下から見守る。
前後や下、色んな角度から見れたら良いなと思いはしたが。
ちょっと暗いけど、思った通り絶景だなあ……。
「もう、あんなの無いわよね?」
「外から見た限り、そんなに大きな洞窟じゃなかったからな。群れの労働力も大した事ないし」
丸太を渡り終え、ロープで引き上げてもらった俺達は、一息ついて再び出口へ歩き出す。
怖い目にあったのと弱みを見せた事を気にしてる様子のレベッカだけど、まあ大丈夫かな。
そんなに罠だのなんだの仕掛ける余裕があれば、俺達と戦う時に素手で向かってくる事も無かっただろうし。
でも小さい時からお互いに弱みなんてさんざん見てるってのに、レベッカは未だに気にするな。
昔から俺に年上ぶって振る舞ってたが、今もそれは変わってないか。
「ほら、せいぜいその横穴くらいだ。奇襲用かな」
「ほんとだ、横穴っていう程の大きさもないわね」
洞窟の中の曲がり角。
その湾曲の内側の壁に小さな横穴が出来ていた。
洞窟の奥から来た俺達には丸見えだが、ここに隠れれば外からの侵入者には見え難いだろうな。
まあ俺達は裏から入ったので全く役に立たなかった訳だが。
「あっ外の明かりじゃない? やっと雰囲気悪い松明の灯とさよなら――」
「……戻るぞ、急げ」
レベッカの手を取って、洞窟を来た方向へ走り出す。
どこに――あの凹みはダメだ、レベッカが渡るのに時間がかかり過ぎる。
底に隠れても万が一降りてこられたら……。
「ね、ねぇちょっとどうしたの?」
「ミノタウロスだ、洞窟に入ってくる」
「ミ……っ⁉」
凹みの丸太、あれは人間でも簡単に渡れる物だった。
なら人間対策に置かれた物じゃなかったのかもしれない。
例えばもっと大きな……ミノタウロス用。
縄張り争いでもしてたのか?
今は理由なんかどうでもいい、俺達2人じゃミノタウロスには勝てない。
ミノタウロスを安定して討伐するには、Cランクの冒険者5~6人のパーティが推奨されている。
俺達は駆け出しのDランク、しかも2人パーティだ。
「ここに入って静かにしてろ」
ゴブリンが隠れるために作ったんだろう窪みに、レベッカを押し込む。
屈んでいた腰を上げようとすると、慌てて伸ばされた手が俺の腕を掴んだ。
「エリックは? 一緒に隠れないの⁉」
「2人には狭いだろ。この曲がり道を来る瞬間を抜いて、外におびき出してみる」
「何言ってるの⁉ ダメよそんなの!」
ミノタウロスをこの曲がり道から先に進める訳にはいかない。
この横穴は裏からは見つけやすい、レベッカをここに隠して俺だけ奥に逃げると引き返された時に見つかるかも知れない。
仮に洞窟内でミノタウロスをスルーして逃げたとしても、追われたらヤバい。
相手の方がまず速いし体力もある。
おまけに整備されていない山中を、長距離全力疾走で逃げるのは難しい。
存在を知られないのがベスト。
俺が囮になるのは、レベッカの存在を知られずに済む次善の選択肢だ。
「囮なんてエリックでも逃げ切れないでしょ⁉ 2人でここに隠れて、ミノタウロスが奥へ行ったら逃げれば良いじゃない!」
「あの凹みはミノタウロスじゃ越えられないだろ、そこで引き返されたら逃げるには時間が足りない」
「それなら私が囮になる!」
「ダメだ、俺の方が逃げるのは上手い」
これは事実だ。
お互いに知ってる事なので、レベッカに反論の余地は無い。
戦えば間違いなく2人とも死ぬ。
逃げても逃げ切れない。
なら1人が囮になって、もう1人が助かればいい。
ミノタウロスの足音が聞こえてくる。
少しでも有利な立ち位置を確保しようと立ち上がりかけると、また腕を強く引かれた。
イラ立ちを込めて引かれた先を見ると、予想外に強い意思と感情を込めた目がそこにはあった。
「側にいて、エリック」
「……2人とも死ぬぞ?」
俺の返事を聞いた上で、なおも腕が強く引かれる。
――迷う。
ミノタウロスの足音はもう近い。
もう一度レベッカを見て……俺は松明を凹みの方向へ思いっきり投げ捨てた。
急いでレベッカのいる横穴に体を押し込む。
「……そんなに1人で隠れるのが怖かったのかよ」
軽口を叩いたが、さすがにこんな所に隠れるだけってのは俺だって怖い。
でも触れ合ったレベッカの体は、俺以上の恐怖に震えてるようだった。
呼吸は小刻みに荒く、手足が、歯がカタカタと音を立て、ギュッと閉じた目から頬には涙が伝ってる。
声こそ押し殺せているが、死の恐怖に押し潰されそうなのが見て取れる。
――怖がりのクセに、こんな選択しやがって。
「バカだな……助かったのに」
押し殺した俺の声に、今度は返事がある。
「……ずっと、一緒が良い」
膝を抱えて座った姿勢のまま、隣のレベッカに引かれて倒れ込む。
頭を胸元に抱え込むその手に、俺の手を重ねる。
指でさすってやると、きゅっと親指を握り込んできた。
少しだけ鎮まった震えを感じながら、ミノタウロスの足音を聞く。
身動きの出来ない場所で、ミノタウロスの斧が振り下ろされるのを待ちながら。
俺は――せっかくの状況なのに革鎧が邪魔だなあ、と思っていた。
「結局あのミノタウロスは、何しに来たんだろうな?」
五体満足のまま帰り道を歩きながら、隣の相棒に声をかける。
「知能は牛なんでしょ? 来てみたけど、通れそうに無い凹みがあったんで帰ったんじゃないの?」
「自分の巣穴には向いて無いとでも思ったのかな」
結局俺達2人は助かった。
ミノタウロスはロクに周りに注意を向ける事もせず、洞窟内を歩いて凹みを視界に入れた辺りであっさりと帰っていったのだ。
「あんなもんがいるって情報が無かったぞってクレーム入れたら、ギルドが報酬に色つけてくれたりしね~かな~」
「止めときなさいよ、ただでさえ問題起こしてるのに」
カツカツって程でもないけど、少しくらい蓄えは欲しい。
でも相棒にはそれが通じないみたいだ。
「将来ってもんをちゃんと考えてるのは俺だけか……」
「あ! ん! た! が‼ 冒険者とか受付の人にセクハラしまくるからでしょうが! なんで私たちが2人でしかパーティ組めないと思ってんの⁉」
そうは言うがな、女の人に声をかけないのは失礼だし。
服を内側から押し上げる胸や腰は相棒には無いモノだし……。
――男連中はレベッカ目当てだったりしたしな。
「まあまあ、帰ったら真面目に組んでくれる人探そうぜ? 俺はホラ、あの人が良いな酒場で占い師やってる人、お姉さんも魔法が使えるって……」
「占い師と踊り子を冒険者に誘ってどうするのよ⁉ 真面目って単語が数秒も保ってないじゃない! もうやだ! 帰ったらすぐ、私だけ移籍先探すからね⁉」
パーティ解散を高々と宣言した相棒が、獣道を先に歩いていく。
実際レベッカが望めば、格上のパーティだって喜んで加入を認めるだろう。
レベッカが持っている魔法の素質系統はそういう物だ。
このままだと幼馴染の相棒に追放された俺が、成り上がったあげくハーレムを作って見返す事になりかねないな。
なんてこった、俺はそこそこの冒険者としてスローライフがしたいのに。
「まあそれは良いけど、帰ったら宿のベッド窓側と内側どっち使う?」
「窓側!」
怒った声のまま、即答するレベッカ。
俺は内側か……そっちだと夜中トイレに行ったレベッカが、たまに間違えてもぐり込んでくるんだけどなあ。
移籍する! とレベッカが叫ぶ事よりも、よっぽど重大な悩みだ。
……怒るならまだしも、恥ずかしがられたら気まずいし。
「早く来なさいよエリック! 夜までに猟師小屋に行ければ見張りいらないのよ!」
「分かってるよ、急ぐのは良いけど足元気をつけろよ?」
「そんな事ぐらぁぁぁっ⁉」
豪快に踏み外した相棒に手を伸ばすと、よっぽど焦ったのか涙目ですがりついてきた。
俺も大概問題児な自覚はあるが、レベッカもなあ……。
ちょっとした小遣い稼ぎの依頼、最後はちょっと予想外だったがどうにか達成。
次からもきっとこの調子なんだろうな。
礼を言いつつも言い訳も並べる相棒と、繋いだ手をそのままに歩きながら心の中で声をかける。
――ずっと2人でいられれば良いと、俺も思ってるよ。
俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ 楼手印 @lowteenU15
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