第33話王都動乱2
森に入って諦めたのかお頭が先頭になって歩いて行く、俺はロープを握ってついていく。
馬車が見えなくなってしばらくするとお頭が何故か強気で脅してくる。
「おい、ガキ!今俺を開放すれば命だけは助けてやるぜ」
「あ、おかまいなく」
俺に瞬殺されたお頭さんの言葉を俺はスルーして歩かせる。
「俺の手下があそこにいただけだと思っているだろ?違うぜ。アジトには後五十人は手下がいる。お前がそこそこ強くても、どうやっても勝てない人数だ」
「五十人か・・・時間はかかるだろうけど何とかなるかな。強さはどれぐらい?あ、冒険者のランクで教えてくれるとわかりやすい」
「馬鹿が!調子に乗りやがって。ランクはCレベルがゴロゴロいる。お前はもう終わりだよ」
いやどう考えても嘘だろ、お頭さん自体がくっそ弱かったのにCランクレベルの強さの人がいるならお頭さんはお頭やってられないよ
Cランクレベルがいるなら冒険者の護衛がいるのが常識な馬車の襲撃に連れていかないわけがない。
「じゃあちょっとは歯ごたえがあるってことか。楽しみにしているよ」
悔しそうに顔をゆがめるお頭さん。
これで本当にCランクレベルがゴロゴロいたら大した演技力だ。
それからしばらく歩いていくと岩が積み重なっているような場所が見えてくる。
「ここだ。今ならまだ間に合う。俺を離して配下につけ。良い思いをさせてやる」
まだ諦めてないのかこの人は・・・。
案内はここまででいいだろう、俺はお頭を近くの木に縛りつけると口も塞ぐ、騒がれると奇襲ができなくなっちゃうからね。
ゆっくりと岩場に近づいていくと、見張りだろうか?盗賊らしき人が周囲を警戒しながら立っている。
ここからだと入り口が見えないな。
俺は短剣を抜くと一気に、立っている男に飛びかかる。
一瞬で首の頸動脈を断ち切ると、いや、ほぼ首を半分断ち切ると血が噴水のように吹き出し男は倒れて動かなくなる。
男の立っていた近くには岩が重なって、大きく口を開けたような洞窟がある。
ここがアジトの入り口か。
「索敵」
索敵を使うと穴の中には三人の気配がある、やっぱ五十人の手下は嘘だったか。
俺は短剣を抜いたまま横穴に入っていく、横穴はそれほど広くはなく大人一人が通れる程度の広さしかない。
たぶん深さはないとは思うけど岩で囲まれていて、地面は削っているのかとても綺麗で歩きやすい。
ここは何なんだろうな、分かれ道もなく石でできた通路が真っ直ぐ続いているだけだ、何かの遺跡跡なのかな?
少し歩いただけで三人がいる広間にたどり着く。
広間には盗賊三人が輪になってゲームか何かをしているのが見える。
特に隠れる必要性を感じないのでそのまま盗賊達に近づいて抵抗する間もなく首を斬りつける。
二人斬りつけた時点で三人目に気がつかれるも、声を上げる暇を与えず首を掻き切る。
「よし掃除は完了。他には・・・もういないな。」
広間から行ける扉は二つ、もう洞窟内には人がいないのか索敵をしても人の気配はない。
まずは一つ目の扉・・・ここはたぶんお頭の部屋かな、一つだけベッドがあり個人のスペースという感じだ、奥にもう一つ扉がある。
二つ目の扉は・・・ここはたぶん牢屋みたいな感じかな、鉄でできた檻が二つほどあるが今は何も入っていない。
お頭の部屋の奥にもう一つ扉があるから、そこにお宝があるのではないか?
お頭の部屋の扉をくぐると、今までに貯めたであろう武器、防具、アイテム、そして袋に大量に詰められた金貨!
「よし!これで王都で豪遊できる!まあ豪遊って何するのって話だが」
俺は部屋に入ると片っ端からアイテムボックスに武器防具や、何が入っているかわからない木箱をポンポン放り込んでいく。
そういえばこのアイテムボックスの容量ってどうなってんだ?
今まで気にしてなかったが容量がかなり大きい、大量に入るのはいいのだがそのうち整理しないと大変なことになるだろう。
アイテムボックスにぶち込んでるだけなのに結構時間がかかった、よほど貯めてたんだな。
もしかしたら有名な盗賊団だったのかもしれない。
牢屋の方に気配はないから人はいないと思うけど、隠し部屋的なのがあるかもしれない。
一通り部屋を漁り、索敵で人がいないのを確認する。
もうここに用はないかな。
後は・・・外に縛って放置してきたお頭をどうするかだ。
王都までまだ二日はかかるから連れていくってのはありえない。
ただ見逃すってのも、後で被害がでる恐れがあるからそれはなるべくならしたくない。
完全に捕縛してるから、それを殺すってのもちょっと気が引ける。
そんな事を考えながらアジトを出て、お頭を縛ったところまで歩いていく。
こっちを睨めつけながらもぞもぞしてるお頭を、俺は縄を解いて開放する。
「何だ?一体どういうつもりだ?今更仲間にしてくださいなんていうんじゃないだろうな」
縛られていた手首をさすりながらお頭は聞いてくる。
「お頭さんはどうしたいですか?正直扱いに困ってます」
「だから俺の配下になれって言っただろう。まあ今回だけは許してやるから・・・」
あっ、これはダメなヤツだ、反省の色なし。
俺は短剣を抜くと話続けているお頭の首を掻き切った。
「言葉だけでも改心するって言ってくれたら、見逃したんだけど。やっぱダメか・・・」
やっぱ盗賊は殲滅するか町に連れて行って兵士に引き渡して、強制労働に行ってもらうしかないのかね。
俺は一度アジトの入り口に戻り、魔法で周囲の岩を崩して入り口を埋める。
「そのままにしておくと、魔物や新たな盗賊の巣になっちゃうからね。中も完全に潰したかったけど、ちょっと無理か」
岩場ごと崩すのはかなり労力がいるからな。
とりあえず入り口だけでも塞いでおけばそう簡単には見つからないだろう。
入り口を潰した俺は街道に出るために来た道を戻っていく。
街道に出る前にあたりは暗くなっていく、今日は出発が遅かった上に馬車イベントや盗賊殲滅イベントがあったからな。
街道に出るころにはあたりはすっかり暗くなっていた。
このまま夜通し歩いてもいいけどそこまでして急ぐ旅でもないからな、ここの周囲には魔物もほとんどいないし、今日はここで野宿でもするか。
・・・盗賊のアジトで一夜を明かした方が良かったのでは?という考えが頭を過ぎる。
いやいやいや、それは違う、盗賊を殲滅したからといって盗賊のアジトにいたら超低確率だけど討伐部隊が来る可能性だってある。
そしたら盗賊に間違えられる可能性だってあるし誤解が解けても盗賊のお宝は一つもない。
俺が全部もらったからな、そうなると確実にもめると思うんだよな。
盗賊討伐のメリットは、盗賊のものは俺の物ってルールが存在してこそ。
盗賊もいない、貯め込んだお宝もないじゃなんだかんだ理由つけて俺が討伐隊に襲われることだってありえる。
だから盗賊のアジトで休むのは間違い、街道で休むのは・・・正解といえるのか?
俺は街道の端の方でアイテムボックスに入れた盗賊から奪ってきた木箱を取りだす。
盗賊のアジトに大量にあったものだ、中身は確認してないが何か良いものが入っているだろう。
本当なら森で木を拾ってそれに火をつけるのだが、俺は木を拾っていないことに気がついた。
なので、木箱を燃やして焚火の代わりにしようと考えたのだ。
中に詰め込んである武器やアイテムを取りだすと、木箱をハンマーで砕いて、油を少々垂らして火をつける。
さらに魔物避けの結界を使用して魔物が寄ってこないようにする、たぶんここなら十分に効果を発揮してくれるだろう。
食事は・・・出来合いのものがあるのでそれを口にする、今日のメニューは何かがいっぱい入っているスープだ。
まあこれが食べれるだけでも十分だ。
その後は、手に入れたアイテムなどを仕分けする。
長剣、大剣、短剣、槍、弓、矢。
武器というと大体このあたりが主流なのかな、鈍器的なものはほとんどない。
後は盾か・・・そう言えば昼間の護衛の人達はみんな盾を持っていたな。
俺も初心者Aセットについていたが結局外した、なんだかんだと邪魔だったのだ。
ここで問題になるのが、この武器をどうするかだ。
俺はRPGなどをやっているときは武具は売らない派だ、金がなくても武具は売らずコツコツ稼ぐ。
ただ、ここでは一本一本に名前がついているわけじゃないから俺のコレクション魂は動かない、盗賊からもらったものはほとんど売りだな。
もう一つの木箱の中は、本が入っていた。
本は貴重品だからキープだな、何かしらの魔法書とかあると嬉しいんだけど、中身の確認はまた後日。
まずは売るものの整理。
整理をしていて思いだしたんだが、昼間会った女の子から貰ったナイフ、これを取りだしてみる。
鞘自体にも軽く装飾が施されているから芸術品の類なのかな?
ナイフを抜いてみる。
あれ?柄に近い部分に家紋的なものがついている、これ貰っちゃまずいヤツなんじゃないか?
俺はないだろうと思われる知識を振り絞ってみる。
家紋に見覚えはないし、そもそも家紋を覚えるような教育は受けてなかった。
それに俺が育ったのは帝国だ、ツリーベル王国の家紋なんかわかるわけない。
そして文化、家紋付きのナイフ、もしくは武器を誰かに渡すということの意味を考えてみたが何も浮かんでこない。
俺が知っている異世界転生ものでは・・・恋人に渡すとかそんなのがあったはずだけど、今回の場合はそれには該当しない。
何故なら初対面だからだ。
実は俺の考え違いで家紋じゃない可能性だってある、単なるロゴ、そう、誰々さんの作品ですよ、ここのブランドですよっていうヤツだ。
いろいろ考えてみたが意味のないことだと諦める。
初対面の子供に渡すようなものだ、本当に単なるちょっと価値のあるナイフってだけの可能性の方がはるかに高い。
家名を言わなかったから、彼女はたぶん商家の娘とかで自分のところの店のブランドか何かだろう。
俺はそこで思考を放棄して、毛布にくるまって仮眠をとった。
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