第8話 

深夜0時が過ぎた頃

私は大滝さんの車の中にいた。


黒のワゴンカーで微かなラベンダーの

匂いがする。


レンタルショップでは

田舎では考えられない品揃えの豊富さに

つい驚きと心が躍ってしまった。

そんな姿を見て配慮してくれたのか

一緒に店内を見て回ってくれた。


そして今は、笑笑ゴッド①を借りて

家まで大滝さんが送ってくれている

帰りの最中だ。


気づくともうこんな時間…

大滝さんといると

胸が締め付けられるのに

なぜか居心地がいい。


無言の時間さえも

苦しくて愛おしいとさえ感じる。

暗い車内にまばらに入る街灯の光と

大滝さんの横顔に見とれていた。


車はアパートの駐車場にとまった。


「あ、今日はありが…」

お礼を言おうと右に体を向けると

大滝さんの真っ直ぐな視線に言葉が途切れた

車内は暗かったけど

大滝さんと私の距離は近すぎて

きっとバレてしまった。


私が大滝さんに恋をしていること。


「大津さんって、

もしかして俺のこと好き?」


こんな顔してたら隠し通せない


勇気を絞って目を見て頷いた


見つめ合うだけの時間


「キスしてみる?」


「えっ///」


驚きすぎて声が漏れる。

けれど私はとっさに大きく頷いた。


大滝さんの顔が近づいてく


「わっ///」

思わず何かが溢れて体をさげてしまった。


「やめておく?」


「あっ、いえ!!

その私、初めてで緊張しちゃってっ」


身体が熱い

思わず顔を手で隠した。

ゆっくり深呼吸をして

手を下ろすと


大滝さんの額は赤くて


「そんなに緊張されると

なんか俺もドキドキするじゃん…」


そんな言葉がかわいくて

余計にときめきが加速する。


大きく息を吸って

目を閉じた。



私たちは

唇と唇がふれるだけの軽いキスをする。


そのふれただけの面積では

この気持ちはおさまらないほど

好きが溢れていく。


そっと唇を放して見つめ合う。


「もう一回する?」

大滝さんの言葉にもう一度頷いて

さっきよりも長く唇を触れ合う。


それから私たちはもう一度

キスをした。


キスで満たされる気持ちと

治らない気持ちが混ざりあった

不思議な感覚


ああ

ここから私は愛に溺れていってしまったんだ。

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