第19話
「ねえ、奏空」
隣に座ってくれている琉愛が声をかけてくれて、思いにふけているところから抜け出し、現実に戻る。
私は一応、バドミントンも経験者だし、シャトルが飛ばないとかの若干の問題はあったとしても、空振ることはブランクがあったとしてもないと思っていた。だけど…だけど、私は空振った。なぜ?なんで?ブランクが長すぎた?どういうこと?
「ねえ、奏空。もしかしてなんだけどさ」
「ん?琉愛、なんかわかった?」
「多分なんだけどさ、前打ってた時よりも腕のリーチとか短くなってたりするんじゃない…?」
「え…?」
「多分なんだけどさ、あっちにいた時の奏空よりも身長が低くなってるんだよね。だって、あっちにいた時の奏空は私より大きかったのに、今じゃあ、女の子になって、私よりも身長低くなってるよね」
「…そうだね」
「となると、腕の長さも短くなってるよね」
「…うん」
「となると、今までの長さで打つような感覚でやってると、空振るっていう感じになるんじゃないかな」
身長、リーチの長さ。
バドミントンはテニスやバレーボールと同様にネット競技。ゆえに身長が高ければ高いほど有利と言われている。身長が低くても運動神経やフットワークや球種のうまさなどの技術で補い、世界の第一線で戦っている選手も多くいる。がしかし、スマッシュやカットの角度や威力、相手にした時の圧迫感など、やはり、身長が高いほうが有利である。リーチの長さはその身長に比例する。リーチの長さは先程の身長と同様、長いほうが有利。取れる球が違ってくるから。リーチが長ければ…というシャトルもよくある。そのリーチも感覚でこれぐらいだということを覚えて打つ。となると。
「となると、私はかなり危機的状況に陥っているかもしれない」
「…かもね」
「ここで打てるというのを感覚でやってるから、身長、リーチが違うと、かなり変わってくるよね…」
「…そうだね」
「となると、私も琉愛と同じ状態か…。琉愛、ごめんね、私、全然、琉愛に教えられるぐらいの状態じゃなかった」
琉愛にあんなに教えておいて、この状態とはなんて自分が惨めなんだと思ってしまう…。顔を俯けて、泣きそうになってしまう。こんなの琉愛に頼られる要素、私にはもうなにもないじゃん。
「そんなことないよ!」
「…琉愛?」
「確かに奏空の身長は私よりも低いし、シャトルを上手く打てないかもしれない。だけど、日本一をとってるダブルスの一人なんだよ?私が琉愛みたいにうまくできるわけないじゃん」
「琉愛、まさか、聞こえてた?」
「頼られる要素がないとかは漏れてたよ」
「まじ…?」
「あのね、言っておくけど、私は奏空のことを『努力』の天才だと思ってる。別に生まれつきバドミントンの才能があったなんて私は思ってない。私以外の周りの人はそう言ってたみたいだけど、私は思ってない。確かに少しはあったかもしれないけど、あそこまでやれたのは、あなたの『努力』のおかげだって私はわかってる」
「…琉愛」
「だから、もう一回、『努力』して?奏空。私はそれについていくから」
「…私にもう一度、あの頃みたいな『努力』ができるのかな?」
「できるかな?じゃなくて、しようよ、奏空。私も頑張るから。ね?」
「…うん」
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テスト前のくせに、小説を書く。テスト前に部屋の掃除がはかどる感じと同じ…
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