第二章 7.探していたもの
「リラ、お前はついてくんな! そんな怪我だらけじゃだめだ、引き返せ!」
「……大丈夫、この
「おい、リラ、しっかりしろ! くっそ!」
リラがその場に崩れ落ちるように倒れた。
分かっていた。
ふらふらになりながらでも必死にこの醜い戦場へずっと食らいついていたことを。
この細い体を抱きかかえると、より一層分かる。
弱り切ったリラの体には怪我が多すぎる。
それにまるで血を吸い取られたような青白い顔だ。
共にここまで来て、一緒に戦えていたことが不思議すぎるぐらいだった。
「ごめん……、エダー。下ろして、私、まだ、いけるから……」
「おまっ、何言ってんだよ! こんなふらふらで、血ぃ抜けたような顔しやがって! 戦えるわけねぇだろ!」
先程まで炎を吐いていた
すぐにでも
「くそっ! 第一部隊、撤退だ! 次の攻撃がここへ来る! 早く備えろ、備えるんだ!!」
残り少ない周囲の兵士達にそう叫んだが、どこまで皆を守り切れるのだろうか。
いつも決死な覚悟で必死に食らいついてくる仲間達。
リラだってそうだ。
王族の者でさえ、毎回この苦戦を強いられる悲惨な戦いに
何度も何度も、しつこくだって止めたんだ。
だが、一切聞く耳を持たなかった。
『これが今私に出来る、限られた事だから』と言って。
彼女がそう望んでいる。
たったそれだけで、どう
(俺がどうこう言ったって、この頑固な女は一切耳を貸さない。ほんとにいつも手がかかるんだ……昔から……)
「ここまで俺を困らすなよ……」
荒い息を吐きだす彼女を抱え、鉛のように重い自分の足を引きずるように駆ける。
敵から受けた傷がひどく痛む。
だがそれどころではない。
この腹わたを煮えくりかえらせる
「俺がいなくなったら、誰かコイツを守るって言うんだよ……」
あのどん底からここまで這い上がらせてくれた彼女を、必ず守ると決めたのに。
(お願いだ、
背後からあの忌まわしき
段々と背中に強い温度を感じはじめる。
これまでか、そう思った瞬間だった。
――泣きたくなるような優しい風と共に、誰かが背後に現れた。
そいつは信じられないぐらいに神々しい輝きを放った真っ白な剣を握りしめ、無数の小さな水の雫を体の周囲に
そしてあの炎をまるで
そいつは、夢にまで見たあのティスタ、いや、あいつだった。
こんな自分でも光を探していた、あいつに。
ティスタの生まれ変わりだと言う、あいつに。
少しでももし望みがあるのならば、その光に賭けようと思った。
だがそんな光はどこにもなかった、なかったはずだった。
なのに今、こうやって目の前で皆を救い、輝かしい光を放っている。
「行けっエダー! リラを、みんなを、安全な所へ……! オレは決めたんだ……自分の覚悟を……!」
お前のそのへなちょこな覚悟は分かっている。
だが、先程とは何かが明らかに違う。
その気迫、その表情、その背中、
何があいつをそうさせたのか。
まぁいい、その覚悟というものを見せてもらおうじゃないか。
「だ、れ……?」
「……アイツだ、助けに来てくれた」
リラは少し微笑んだ。その傷だらけな体で。
お前にこの悲惨な戦いを受け止められるか。
この国に、思いに、命を委ねられるか。
しっかり見てやろうじゃないか。
なぁ、ケイスケ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます