第2話

 それから数日間、杉村先輩の付き合いが悪くなった。一緒に古本カフェに行こうと誘っても用事があると言って断られるし、毎日来ていた部室にも来なくなった。

 私は杉村先輩が何をしているのか疑問に思い、彼の後をつけてみることにした。


***


 ある日の放課後、杉村先輩は図書室にいた。何やら真剣な表情をして机に向かい、何冊もの本を開いている。私は彼が取った本の本棚を確認した。そこは福祉のジャンルの本が置いてある所で、に関する本がごっそりと取られている。恐らく、杉村先輩は点字について勉強をしているのだろう。


 杉村先輩が福祉に興味を持っているなんて話は聞いたこともないし、彼が点字の勉強をする理由が見当たらない。盲目の人にでも恋したのだろうか――なんて考えながら、私は杉村先輩に視線を戻す。

 杉村先輩は相変わらず机に向かっており、本を見ながら何やらノートに書きこんでいる。私は不意に彼への興味を失い、追跡がばれないうちにその場を後にすることにした。



 その翌日のことである。杉村先輩が久しぶりに部活にやってきた。その顔はどこかやつれて見え、目の下には隈ができている。その変わり果てた姿に、私だけでなく私を除いた部員も目を丸くしていた。


「大丈夫ですか?」


 ある部員がそう尋ねると、杉村先輩は親指を立てて見せ「大丈夫」と笑う。その笑顔はどこかスッキリしたような顔をしていて、私は彼に何があったんだろう――と小さく首を傾げた。


 ふと杉村先輩の視線が私に向けられる。私は曖昧に笑って返すと、彼はゆったりとした足取りでこちらに歩いてくる。そして私のすぐ側まで来た時、彼は耳元でこう言った。


「すべてが分かった。今から古本カフェに行こう」


 私は黙って頷くと、部員に帰ることを伝えて杉村先輩と共に古本カフェに向かった。


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