第27話 飛蝗
ようやく立ち直ったババぁ風のしゃべりをする幼女のところに俺たちはやってきた。周囲は相変わらず人の体である。この人体で作った建造物は一体何なんだろう。幼女が口を開く。
「よく来たの。中国にまだ人間が生きとるとは思わなんだが」
『中国の人間は宇宙に脱出したからな多くが……蟲化病に感染していない人間を選別して宇宙に上げた』
その声は哪吒だ。そういう経緯があるとは知らなかった。幼女が俺のほうを見てきた。
「ドライなのは相変わらずじゃな。でも中国語で翻訳できない奴もおるな」
「俺たちは日本から来た」
「О, Боже.……日本に人間が生きておるとは……」
「地下にずっと住んでたからな」
翻訳機が当たり前になっていると、多言語対応がやりづらいのはあるな。キリュウが口を開く。
「それでお嬢ちゃん、ここは何のためにあるんだ?」
「お嬢ちゃんといってくれるか。ワシは100は超えておるのじゃがな。もっとも今の体は10歳くらいかもしれぬが」
「どういうことだ?」
ノジマが驚いたような顔を見せる。
「何、知れたことよ。組織再生の研究も十分進捗があったんで、体の方を取り換えたと。それだけのことじゃ。失敗した組織でこの壁も作れたし一石二鳥というわけじゃな」
一同、ドン引きである。なんだそれ。このババぁよりによって人体の作り直しとかしとるんかい。
「蟲化病の治療にも使えるとは思うんじゃがな。最も神経までいかれてたら治療は不可能じゃろうが」
「ちょっと待てよ。それって今の体を捨てるってことなんじゃないのか?」
俺がそう聞くと
「そりゃそうじゃろ。必要な組織以外は取り換える。そもそも人間の細胞は3年で全部入れ替わっておるんじゃからそれを速めたところで問題はあるまい」
「問題しかないと思うが」
ノジマの身もふたもない意見に俺はうなづかざるを得なかった。
「ところでススムの声がしたようじゃがどこにおるんじゃ?」
「ススム?そういえばムシコロンってもともとは……」
「ムシコロンなら半壊してるわ」
呆れたように言うミコト。その姿を見て
「誰かと思ったら、久しいのミコト」
「そうね。マリア先生とはたもとを分かったつもりなんだけど」
「……人体の組織入れ替えはそんなに悪かのう」
「私はそう思うわ。組織再生だけならまだしも、全身の組織入れ替えて寿命を延ばすとか人間がやっていいことじゃない」
「そうかの」
何ともいえんな。蟲化病の治療になるなら正直なところ身体の入れ替えもありかもしれん、と少しだけ思ってしまう自分がいる。
「半壊ねぇ……あやつは完全に機械化しとらんのじゃろ?」
「そうね。人間の体を残してるみたい。理由はわからないけどね」
「そういうことならどれ、わしがちょっと診てやってもいいぞ」
「それもいい薬かもしれないわね」
三度悪魔の笑みを浮かべる
アメノトリフネに乗り込んだ
「さて、早速身体再生をするかのう」
『……そ、その声は!?まさか
「体のだるいのとれるし元気出るしいいことづくめじゃ。みんなやるといいのにな」
『って我の体に何を!?』
「知れたこと。蟲で代用してる身体を人体で置き換える」
『その人体どこからとるんだ』
謎の液体を持ってきた
「ほう、ここから組織が取れそうじゃな」
『勝手に見るな!』
「そんな生きてるだか死んでるだかわからない状態で蟲で体代用なんぞするからあちこち壊れるんじゃ。きっちり自分の身体をとりもどすんじゃな」
『無茶苦茶なことをいうな!!』
ほんとそこに関しては同意しかない。ムシコロンから人体を採取した
『まさかと思うが、これで直す気か……』
「死ぬほど痛いが気にするでない」
『もう何も言いたくない』
採取した組織をどうするのか考えるだけでぞっとする。蟲の体から人体に置き換えるつもりだろうか。そんな機械みたいにホイホイつくったりつなげたりするんじゃないこのサイコ
翌日になって
「ほう、よく来たな。伝導系の組織などを蟲から人間に置き換えるからの」
ミコトが手を額に当てている。
「人体を道具みたいに扱わないでほしいわね」
「何を言う。人体も所詮他の動物の細胞と違いはないのじゃ。親和性が高いものを使ったほうが良かろう」
「これだからたもとを分かったのにね」
「ススム、いやムシコロンじゃったか?を治すには他に手がないのは知っておるくせに」
「そうね」
人間の体組織に置き換えるとか意味が分からない。
「それはそうとじゃ。おぬしら、アブドラに行くつもりか?」
「そのつもりだが」
「やめておいた方がええ。あそこにはな、本当に無数の蟲がおる。
「無数って言ってもせいぜい数百とかそんなもんじゃないのか」
「馬鹿言うでない。桁が4つは違うわ」
数百万ってことかよ。さすがにそれはやばいな。
「だがムシコロンを完全な形態にしないと、ワシントンを奪還はできないわ」
「無理なことはせん方がいいと思うんじゃがな」
あきらめ気味の発言をする
「そりゃ
「そうかの」
「蟲化病に感染してるミコトとかはどうなる。いずれそれでなくても人類は蟲になってしまうんじゃねぇか?」
「そうかもしれんの」
「そんなの、俺はごめんだ」
「だが、あの飛蝗の群れはどうにもならんじゃろ?」
俺は少し口元に笑みを浮かべる。
「なるさ」
「どういうことじゃ」
「そうだよ、どうするつもりだよ」
「無理よ、数百万を相手にするのは」
一同否定的だが、相手は蟲なんだろ?いくら機体の性能が高い蟲機とはいえ、知能は蟲だ。だから。
「俺に考えがある」
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