スグリノレクス⑪
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「……あなたよくそんなに呑めるわね」
役場の職員に無理を言って小さなグラスに少しずつの白グレプ酒を入れてもらった俺は、テーブルにそれを並べて味見を繰り返した。
勿論ちゃんとお金は払っている。
……呆れる
「グラスは多いけど量はそんなにないよ。……
彼女は役場の職員と今年の酒の状態についてずっと話している。
やっぱり貴族だけあるよな……
……その彼は丁度別の資料を取りに奥に引っ込んだところだ。
「私は平気よ。…………そうだ、キール」
「うん?」
「あなた〈宮廷カクトリエル〉を目指すのでしょう? ……私、最近成人したの。だから……」
「あれ、じゃあ
「えっ? ……あ、そうね……」
「じゃあ俺がお祝いに一杯作ろうか」
「! い、いいの?」
「うん? そりゃ当然いいけど。あ、でも期待しないでくれよ? ……俺も成人したばっかりだから味とかまだ全然わからないんだ」
そんなに嬉しそうにしてもらえるとは思わなかったな……。
俺は思わず笑って、受付にいた職員に声を掛けカクテル用の道具を貸してもらうことにした。
――決まりを守って呑む酒は人を笑顔にする。俺のカクテルで
……爺ちゃんが作ったら
気を抜いたら涙が滲んできそうだった。
「――
「えっと……甘いほうが好きだけど、子供向けの
「へえ。……そしたら今年の爺ちゃんのカクテルは……」
きっと気に入ったはずだ、と言いかけて……俺は言葉を呑み込む。
「……キール?」
「あ、いや、なんでもない。……じゃあ甘めにしようか」
――『建国祭』で最初にカクテルを口にする人……つまり女王様も
それなのにあのカクテル……甘い香りだったな。吞んだら甘くないのかな?
来賓も投票するから甘くないのがいいとも言い切れないけど……なんだか引っ掛かる。
村長と話すときに爺ちゃんがなにか言ってなかったか少し突っ込んで聞いてみるか……。
俺は考えながら酒場にある棚を見回して……柑橘の果実オランジュの酒を見つけた。
オランジュの酒は種類が豊富で皮の部分のほろ苦さと瑞々しい果実の甘みや酸味が楽しめる人気の酒だ。
スグリノ村はどうやら甘くないさっぱりした白グレプ酒が自慢みたいだし、合わせるならこれかな。
俺が手に取ったのはどっちかというと皮のほろ苦さが抑えられていて甘みが強いもの。
あとは少しの
そう思ったとき、横からするりと太い腕が伸びてきた。
「お客様にカクテルを作らせるなんてとんでもない! 私がすぐにお作りします、どうぞ席に」
「えっ? ……あー、えぇと」
彼はさっきまで
鼻息荒く言い切られたもんで、俺は困惑して
「…………キール、一緒に呑みましょうか」
苦笑した
まぁそうなるよな。
なんだか張り切っている職員を邪険にするわけにもいかないし、そもそもここは彼の店ってことになるし……。
どうやら俺が
「……ごめん
「ええ。楽しみにしているわねキール」
爺ちゃんのカクテルを探し当てて、爺ちゃんが起きて……そしたら爺ちゃんに教わって……とびきりのカクテルを
俺は密かにそう思って……彼女の隣に腰掛けた。
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