妻に浮気がバレました

うにどん

本編

「お帰りなさい」


 にっこりと笑う妻。

 その目の前には写真が二枚、俺が浮気相手と一緒にラブホテルに入るところと出たところをバッチリと写した写真だった。


 俺はそこら辺にいるようなサラリーマン、結婚して6年になる妻と五歳の息子と三歳の娘が居る。

 普通の生活に不満があった訳ではないが俺は浮気をしていた。

 相手は社内では美人と評判の二年前に入社した女性社員。

 彼女が入ってきたばかりの頃、助けた事が切っ掛けで交流を持ち、去年からアプローチをされ関係を持った。

 最初は既婚者だからと断っていたが、それでも必死にアプローチしてくる彼女に次第に絆され最終的には関係を持ってしまったのだ。

 ぶっちゃけると俺は天狗になっていた。

 如何にも何処にでも居る普通の容姿の俺に対して必死にアプローチして関係を持った社内で評判の美女、その事実に酔い痴れた俺は浮気に溺れていった。

 妻や子供達には仕事が忙しいと残業、休日出勤だと嘘をついて彼女とデートし体を重ねる日々に俺は愉悦を感じ、家族を蔑ろにした結果が・・・・・・。


「貴方、これはどういう事?」


 目が笑ってない妻と証拠の写真。

 俺は言い逃れ出来ないのだと解り、思いっきり妻の目の前で土下座した。


「ごめんなさい」

「謝るって事はこの写真は本物だって事ね」

「調子に乗ってました、すみません」

「謝るぐらいならしなきゃいいのに・・・・・・」


――しなきゃいいのに。


 その言葉が俺に突き刺さる。

 そうだ、相手が美女だからって誘惑に負けず調子になんか乗らないでしなきゃ良かったのだ。

 俺は恐る恐る妻を見る、妻の目には涙が溜まっていた。


「本当に謝るぐらいだったらしなきゃ良かったのよ。

子供達は休みの日でも仕事だって出掛ける貴方を見て寂しそうにしてたの知ってる?

毎回、子供達に仕事だからって慰めて・・・・・・。

頻繁に出掛ける事に不信はあったけど信じてたのよ、仕事が大変だって、それなのに・・・・・・。

本当に最低」


 泣くまいと必死に堪え、子供達を起こさない為だろう、声を張り上げることなく話す妻に俺は今までの行いを後悔して泣いた。


 俺はひとしきり泣いた後、妻と話し合った。

 離婚はしない事になった、子供がまだ幼く妻は復職している身とはいえ子供二人を抱えて生きていくのは難しいと判断したからだ。ただし、俺がもう一度、浮気をしたなら離婚すると言われた。

 浮気相手とは絶対に別れるように言われた、だけど二人きりで会うのは止めて妻も同席するという形で別れ話をする事になった、二人きりで会ったら、また絆される可能性が高いから仕方ない。

 俺は話し合いの後、妻の前で浮気相手に電話をして妻が仕事の方で忙しくなるからと一週間は暫く会えないと騙して一週間後にいつも利用してるカフェで会う約束を取り付けた、当然、妻も一緒に来ることは隠して。

 俺はその日の晩は一週間後に訪れるであろう修羅場を想像して眠れなかった。


 だが、修羅場は訪れる事はなかった。

 あの日から四日後、彼女が仕事を辞めたからだ。

 なんでも実家の都合で急遽、辞めざるえなくなったとか。

 俺は修羅場が訪れなかった事にホッとしたのも束の間、引き出しに彼女から俺宛の手紙があった、辞める前日に中に入れたのだろうか?

 直ぐに読みたい気持ちを抑えて俺は家に持ち帰って手紙を読んだ。

 手紙の内容は俺との関係は遊びだった事、俺より素敵な恋人が出来た事、その恋人と一緒に居たいから仕事を辞める事にしたというものだった。

 ショックだった。

 あんなに必死で俺にアプローチしてきたのに遊びだったなんて!!

 俺は泣いて泣いて、手紙を破り捨てた。

 俺は馬鹿だ、大馬鹿だ。

 こんな女に入れ込んで家族を蔑ろにした俺は大馬鹿野郎だ!!

 もう俺は浮気しないと誓った、結局、浮気なんて誰も得しないのだ。


「お父さん、早く早く!!」


 息子が嬉しそうにサッカーボールを持って公園に向かおうとするのを俺は苦笑いしながら見つめる。

 妻の言ったとおり子供達、特に息子は寂しかったようだ。本当に申し訳ない事をしたと思う。

 玄関を開けるとこれから出掛けるのかお隣に住むOLと会った。

 OLは俺と息子が出掛けるのだと解ると「久しぶりに一緒に遊びに行くんですね」と嬉しそうに話しかけられた。

 どうやらお隣も俺が家族を蔑ろにしていたのを解っていたのだろう。俺はぎこちない笑みを浮かべるしかなかった。

 まだ妻とはギクシャクしてるがこれから夫として父親として信頼を少しづつ取り戻そうと思う。


・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


 私はサッカーボールを持った息子くんとその父親の背中を見て幸せに浸かる。


「本当に良かった」


 私は隣に住む家族が大好きだ、余り良い環境とは言えない家庭で過ごした私にとって、ごく普通の家庭、ごく普通の幸せな家族を見てると幸せになれるから。

 だが、ここ暫く父親、旦那さんが仕事で忙しいのか休日でもスーツを着て出掛ける事が増えて奥さんが寂しそうな子供達を連れて何処か出掛ける事が増えたから探りを入れてみた。

 旦那さんが浮気していた、同じ会社の後輩、かなりの美人と。

 これは非常事態だ。

 私は動いた。

 まず、旦那さんの浮気の証拠写真を撮った。

 頻繁にデートしていたから難なく写真を無事に撮ることが出来た、その後、奥さんに写真を送った。

 奥さんは写真を見て狼狽えていたけど、奥さんも頻繁に出掛ける旦那さんを不信に思っていたのか写真を捨てる事はなく旦那さんが帰ってくるまで持っていて良かった。

 どうして、その事を知っているのかって?

 あの家に私は盗聴器、盗撮カメラを仕掛けている。

 推しの生活を、幸せを、毎日見続けたくない?

 それは置いといて、奥さんと旦那さんの話し合いをハラハラしながら見ていた、離婚したらしたでしょうがないという思いはあったけど離婚してほしくないという矛盾した気持ちを抱えていたからだ。

 話し合いの結果、離婚はしないという事になり浮気相手と別れるという事になってホッとした、けど、浮気相手が素直に別れると思えなかった。

 写真を送る前に浮気相手の事を調べて解った事だが、あの女、惚れた男に依存するタイプで徹底的に奉仕し最終的には男の方からウザがられて捨てられるを繰り返しているようだけど他の依存先を見つけるまで相手に対してストーキングしてきたようだ。

 そんな女があっさりと別れる訳がない!!

 だから、私は女に男をあてがった。普通の男じゃない、女を食い物にする男を。

 最初は殺そうと思ったけど犯罪者になるのは嫌だったから遠回しになると思ったけど男を宛がう事にしたのだ。知り合いの伝手で知り合った男で私に度々ちょっかいをかけてきてたからウザかったのもあるけど。

 私は男に女は知り合いだと偽って、この子、彼氏募集中だよ~と言ったら、早速、女に近づいた。

 女は最初は困惑していたが男がイケメンだった事もあってアッサリと靡いた。

 そして男の言われるまま、女は仕事を辞めて今に至るという訳だ。


 私はニコニコとまたあの家族の幸せな日々が見れることに至福を感じながら友達との待ち合わせに向かった。

 

 

 

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妻に浮気がバレました うにどん @mhky

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