第11話 ネタバラシ

???


「なーに書いてるの?!」


 部屋のパソコンに向かってなにかを打ち込んでいる彼の背中に飛びかかり、イスごとぎゅうっと抱き締める。そのまま手を伸ばしてマウスを操作すると、はじめから読み始めた。


「ちょ、ちょっと! こんなの書かないでよ! すごく脚色されてるし!」


 ブツブツ言いながら読み進める姿を彼は笑いながら見ている。


「って、なにこの終わり方……趣味悪い。だいたいわたしたち喧嘩してもすぐ仲直りするから家出とかにならないし……」


 なぜ彼はこんなものを書いたのだろう?


 なぜ結末をこうしたのだろう?


 わたしはふと思ったことを尋ねてみた。


「……怖いの?」


「ん?」


「いつかこういう日がくるんじゃないかって」


「……かもね」


「大丈夫。わたしはいなくならないわ」


「……うん」


 まだ不安と信じたい気持ちとがない混ぜになっているようだったが、わたしは努めて明るく振る舞うことにした。


「はいはい、わかったらこんな駄文は消去消去! 完全に削除しますか? yesっと!」


「あっ、結構書くの苦労したのに……」


「いいの! さっ、お茶にするよ! 準備して!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る