この世知辛い現代にダンジョンを!
@seidou_system
ワールドパート
――西暦202X年。世界にダンジョンが出現した
かつて、世界は神秘に満ちていた
神や悪魔がそう呼ばれるにふさわしい力を揮い 人が神秘を隣人としていた時代
その時代も原因不明の魔力の枯渇により 科学文明にとってかわられた
魔術も秘儀も力を弱め 信仰や風習 怪談やおまじないのなかに
僅かにその残滓を残すのみであった
だが 突如世界に魔力が戻ってきた
ダンジョンと言う姿を取って
ダンジョンからは魔物が現れ人を襲った
科学で作られた兵器は魔物の前には無力だった
だが 人々は無力ではなかった
人々は忘れられた秘儀の残滓をかき集め
ダンジョンから魔力を盗み出し
犠牲を産みながらも魔物との戦いを学び
新しい時代と戦い始めた
これは 現代の日本でダンジョンに潜り 明日をも知れない冒険を行う
命知らずの馬鹿野郎どもの物語である
さあ この閉塞した時代に今こそこう叫ぼう
この世知辛い現代にダンジョンを!
■初めに
この記事は「この素晴らしい世界に祝福を!TRPG」(以下、このすばTRPG)を使い、現代日本でダンジョンに潜り魔物と戦い宝物を漁るヤクザな商売「冒険者」を遊ぶためのシチュエーションデータです。現代ダンジョン。いいですよね。今2020年ですが「小説家になろう」とか「カクヨム」とかで結構流行ってるジャンルです。
さて、元となる「この素晴らしい世界に祝福を!TRPG」はF.E.A.R.社の刊行物です。まずはそれを手に入れましょう。気が向いたりもっとデータが欲しくなったら、同社の「アリアンロッド2E」や「剣の街の異邦人TRPG」にデータ互換性がありますので、買ってバランスを無視する勢いでぶち込みましょう。
■舞台
舞台は2020年代地球。異常気象や世界的疫病により混沌とした世界である事件が起こりました。一定以上の人口密集地帯にダンジョンが現れました。
世界中で、ほぼ同時に。
ダンジョンの入り口……もしかすると出口なのかもしれませんが、その形は様々でした。地下へ通じる石造りの階段、存在しないはずのビルのドア、空中にあらわれた重厚な鉄扉、空間の裂け目としか呼びようのないもの、円形に並んで生えたキノコ。形は様々でしたが、その機能は全て同じでした。
一つ、それはダンジョンと呼ばれる異世界への入り口として機能する。
一つ、それは異世界の魔力を魔物をこの世界にやってくる出口として機能する。
一つ、それは現在試されたすべての手段で破壊できない。
そして、異世界からこの世界にやってきた魔物は、おおむね人間を食料としてみていました。
世界中で大混乱が起きました。人食いの魔物ということもそうでしたが、世界で一般的に使われる銃が魔物に通じなかったことも混乱に拍車を掛けました。出てくる魔物はおとぎ話に出てくるような……というよりも、いろんなゲームの寄せ集めのような姿をしていました。おとぎ話のゴブリンは人食いではない妖精ですが、ダンジョンのゴブリンは人食いで女を攫いました。
ですが、人類は思いのほか早く対策を見つけました。地球上を覆いつくすネットワーク回線により小さな発見が瞬く間に多数の人間に共有され、わずかに残っていた神秘の専門家もできる限りの情報提供を行いました。
その結果、人類が1割ほど人口を減らしたあたりで機能的なダンジョン対策をあらゆる国家がとることが可能になりました。
前世紀から世界に残っていた課題は何一つ解決していませんし、ダンジョンと言う問題が増えた世界ではありますが、それでも新しい日常を歩き始めています。
そんな世界の日本が舞台になります。
■ダンジョンと魔物
ダンジョンとは何か。この命題に関してはいまだ明確な答えが出ていません。今わかってることを上げるとこうなります。
一つ、それはこの世界の通常の空間と別に存在する空間であり、入り口を通して出入りが可能。
一つ、中には魔力と呼ばれる何かが満ちており、魔力で体が構成された魔物と呼ばれる生き物が活動している。
一つ、ダンジョンには階層と呼ばれる区切りがあり、階層間は「入り口」で移動できる。
一つ、階層が「深く」なるたびに危険になる。
一つ、いまだに踏破されたダンジョンはない。
さて、ここで出てきた「魔力」ですが、これにも正確な定義ができていません。人や組織によっては「霊力」だの「マナ」だの「オド」だの呼ばれていたもので、見えませんし聞こえません。適性のある、以前は「霊感が強い」と呼ばれていた人であれば何となく感じることができるものです。「力」とついていますが力学的な力というより臭いや熱のように空間を漂うもののように感じられるようです。
この魔力がある程度強い、というか濃度の高い場所では、物理法則に従わない現象が起きます。魔物の出現がそうですし、また魔法なんかも使えるようになります。ですのでダンジョンの中やその近傍はかなりの危険地帯です。
この魔力でできた生き物のようなもの。それが魔物です。「生き物のようなもの」としたのは、ゾンビとかゴーレムとかそういうのも魔物だからです。魔物は魔力でできています。これがどういうことかと言うと、魔物は密度の濃い幽霊みたいなものとしてふるまいます。密度の濃い幽霊なので、銃弾とか刃物とか、そういうものはすり抜けてしまいます。ダンジョンの外の普通の壁もすり抜けてしまいます。ですが、どうやら生きてる人間の体にはある程度の魔力があるらしく、触れることができます。これは素手の拳骨なら魔物を殴れるということですが、魔物も人間を(着てるものを無視して)殴れるということになります。ここがダンジョン発生当初に被害を大きくした理由の一つです。ゴブリン程度ならともかく、オーガなどを素手で殴ろうとするような軍人も警官もいませんでした。
ですのでダンジョン出現当初はなすすべもなくやられ、半年もたつと頭のおかしい一部の格闘家と思い込みの力で魔法を使い始めた一部の宗教家が反撃をはじめ、そして、ダンジョンから出てくる魔力に適合し、魔力を使いこなす人間が出てき始めました。全人類の数%ぐらいの割合で存在する魔力適合者は、ダンジョン由来の素材でできた武器や防具を使って、魔物を駆逐し、ダンジョンを探索できることがわかってきました。そしてそのうちダンジョン由来の素材が人体に対して有用な薬の素材になることもわかってきました。
こういった経緯があり、日本では魔力適合者が講習を受けて資格を取ってダンジョンに潜り、出てくる前の魔物を狩り、ダンジョン由来の素材を回収してくる「冒険者」という職業が成立するようになったのです。
ダンジョンの入り口は破壊はできませんが、囲うことはできます。そこで政府は入り口周辺を囲い、冒険者の出入りを管理することにしました。中で手に入れた素材は行政が定価で買い取り民間に売ります。こういった管理組織及び施設にはそこそこ長い正式名称があるのですが、いつしか皆「ギルド」と呼ぶようになりました。最近では職員の方も諦めてギルドと名乗っています。
■日本の冒険者
日本における冒険者がどんな立場かと言うと、「合法的な最後の仕事」です。低レベルの魔物を暴力で駆逐し、低い階層の素材を拾い集めて売ることで日銭を稼ぎ、安い居酒屋で飲んだくれる。それが3割から4割ぐらいの冒険者の日常です。
残りはと言うと、定職や学業のある人の小遣い稼ぎだったり、一発当てたいという上昇志向だったり、有名冒険者にあこがれてだったり、合法的な暴力が大好きだからだったりと人によって異なります。魔力適合者に認定された義務教育修了者であれば、ビデオ講習で免許が取れるので、割といろんな人がいます。
そんな冒険者が魔物と戦うにあたっては、おおむね武器が必要です。稀に素手で戦う趣味人はいますが、一般的とはいいがたいです。さて、「魔物には銃が効かなくて大変だ」と前述しました。じゃあ冒険者はどんな武器を使うのかと言うと、ダンジョン由来の素材を加工した剣とかを使います。とはいえほんとに刃が付いた武器だと銃刀法違反になってしまいます。そこでダンジョン用の武器はおおむね「魔力に反応してダンジョン内部でしか武器として意味をなさない」といったものになっています。ダンジョンの外だとウレタンとか硬質ゴムでできたコスプレ用武器模型ですが、ダンジョンの中に入ると本物さながらの強度と重さを得るわけですね。そんなファンタジックな仕組みになっているため、弓矢などは弓だけ持っていけば矢はその場で魔力から生成されるという便利な仕様になっています。ダンジョンの宝箱から見つかる武器や防具の類も、ダンジョンから出してみると錆びて折れていたり、ボロボロの麻のシャツだったりします。ともあれ、法的規制が必要なものではないです。
「じゃあ魔力的なものを弾で打ち出す銃を使えば楽に戦えんじゃね?」と思われた方もいらっしゃると思いますが、なぜか銃ではうまくいきませんでした。とある研究者の説によると、魔物との戦いは剣で攻撃しているように見えても本質的には「魔物自身に倒されたと思い込ませる」ということが重要で、知覚できない速度の弾丸では「説得力に欠ける」からだ。とのことですが、これも仮説であり、明確な理由はわかっていません。
この「説得力理論」の傍証として、ダンジョンの中では自分の力量に見合わない武器や防具が使えなかったりします。何をもって力量とするのかは不明ですが、冒険者の間では「レベルが足りない」という言い回しで表現されます。
武器と同じく、魔法も冒険者の大切な力です。魔法とは何か、と言う定義も今のところまだ不確かですが、なんかそれっぽい動きとか呪文とかをやることで発生する、物理法則に反した現象を指すことが多いです。分かり易いものだと、当たると痛そうな炎とか雷とかを魔物に飛ばす奴とか、祈りっぽいことをすると怪我が治ったりするやつです。魔法を使うための技術は、いまだに体系化されていません。個人の才能と努力に完全に依存するものです。「技術と言うより技芸」という言い方がよくされます。その為同じ効果の魔法でも術者によって、呪文を詠唱したり指で印を組んだり聖なるポーズをとったり気合いとともに尻から出したりと様々です。なお、回復魔法による医療も研究されていますが、今のところ魔力適合者以外には効果が薄いです。
冒険者の主な収入源としては、魔物からのドロップ素材、自然発生する宝箱、ダンジョンに自然発生する魔力の結晶、などなどのダンジョン由来物質の回収です。また、魔物が外に出てくることを抑えるためにギルドが魔物の間引き依頼を出すこともあります。変わったところではダンジョン内部の研究をするために、研究者を護衛する。未探索部分の地図を作る。特定の魔物からしか取れない素材を個人的に手に入れたい。動画取りたい。夫を殺したオオアリクイの魔物を倒して仇を取ってほしい。などの依頼を受けて報酬を受け取るという形態の仕事もあります。
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