第179話 ハーレム(仮)デートは目撃されていた
思わぬところで出会った真秋の後輩である朝倉という男。
彼は真秋の学生時代の一つ下の後輩であり、同じ野球部で揉まれていた関係でもある。
卒業後会う事は少なかったが、就職祝いに飲みに連れて行った事があった。
その時に就職先を知る事になり、真秋にとってはクライアントになりえる会社でもある事を知った。
朝倉は不動産業であるため、真秋の勤める会社に発注する事は大いにある。
仕事の話は都合上出来ないが、それ以外の話では盛り上がったりはしていた。
真秋はともえとの結婚式の時、招待状を送ったが朝倉の仕事の関係上辞退していた。
研修期間中は外出禁止というのを守ったに過ぎないが、実際は冠婚葬祭は別である。
馬鹿正直な朝倉はそれを知らずに研修期間は寮と研修所の往復しかしていなかった。
そんな朝倉であるが、飲みの中で一人の女性と付き合っているという話は聞いていたが。
それがまさか職質されそうな見た目の女性とは真秋も思ってはいなかった。
もっとも、真秋自身が暴露宴の後で余裕もなかったために、ほんの数時間しか就職祝いを出来ていなかったが。
「黄葉先輩、大変だって聞いてましたけど、今はハーレムですね。心配は無用そうで少し安心しました。」
朝倉達は真秋達の隣のテーブルに着席した。
「ハーレムって、やっぱりそう見えますか?」
茜が朝倉に問いかける。
「見えるよ。って貴女は……」
朝倉が少しエロティックな姿の茜に声を掛ける。
妖艶さでは環希が一番であるが、茜には違ったエロスが醸し出されている。
「あ、申し遅れました。私小澤茜と申します。ご主人様の性奴隷……になる予定です。」
「てめっ何さらっとエロ問題発言してんだよ。JKが二人もいるのにダメだろうが。罰として色々お預けだな。」
「はうっ、あぁっ。」
何故か感じている様子の茜。この程度の言葉でも責めになるのだろうかと真秋は頭を抱えた。
あ、パイセン言葉でイかせたパネェと思う朝倉だった。
「わ、私は安堂悠子です。おにい……真秋さんのお嫁さん……になる予定です。」
「ほら、悠子ちゃんに先を越されてるわよ。」
環希が瑞希を小突きながら小声で茶々を入れる。
「私は月見里瑞希です。看護師をしています。それと、私も……真秋さんのお嫁さん……になる予定です。」
「先輩、奥さんいっぱいいて羨ましいですね。」
その言葉に複雑な笑みと表情をする真秋。ともえとの事があるので、結婚とか夫婦という単語には思いがないわけではなかった。
勿論、朝倉に他意はない。ともえとの破局自体は聞いているし、おいそれとツッコミを入れるところではない事は朝倉自身知っている。
「私は月見里環希よ。瑞希の姉で、仕事は少し前まで都内で看護師をしていたわ。」
「挨拶が遅れましたが、俺は黄葉先輩の一つ後輩で同じ野球部に所属してました朝倉謙太と申します。今は不動産会社で働いている大卒1年目です。」
「私は小倉果凛と申します。謙太さんの彼女をしてます。高校1年です。近くに住んで居て受験勉強の時に家庭教師のお兄ちゃんをしていただいてましたが、今では恋人です。」
ショートカットの似合う身長もお胸もミニモニな彼女が挨拶をする。
中学3年の時、果凛の受験勉強を教えていたのが、近所に住む大学生だった朝倉であった。
二人は小さな頃から多少の付き合いがあり、親が認める仲でもあった。
えっちな事は18歳になってからという果凛と果凛の両親の言葉を守り、現在でも手を繋ぐ以上の事はしていないと言う。
デートも基本的には20時までであるが、行き先を伝える事でたまには大目に見られる事がある。
今日も水族館デートをしており、実は真秋達とはニアミスをしていたりもする。
あのイルカショーでは少し離れた最前列に陣取っており、同じようにイルカの潮洗礼を受けていた。
カオスな自己紹介が終わり、朝倉達は注文を確定しタッチパネルを操作する。
ジョブ:女学生1、看護師2、性奴隷1という奇妙なパーティであった。
「黄葉さんが羨ましい環境にいることはわかりました。例の事は話しに聞いていただけでしたので落ち込んでないか心配でしたが……」
「こんな素晴らしい女性陣達に囲まれていれば立ち直りが早いのも頷けます。皆さん、先輩の事をこれからもよろしくお願いします。」
朝倉は深く頭を下げていた。よく出来た後輩である。ここまで何も知らないはずの4人の為人を挨拶だけで見抜いたと言うのだろうか。
「やめろって」
照れてしまうだろうが。それと茜が調子こくだろうがと真秋は思ったが時すでに遅しであった。
「任されました。ご主人様は私達が身命を賭して愛していきます。」
朝倉と彼女である果凛が立ち去った後。
真秋は茜の脇腹を抓っていた。
「ねぇ、なんで勝手な事言うの?煽るの?朝倉が盛大に勘違いしてるじゃないか。何さハーレムを肯定してさ。」
「いたきもてぃいいぃぃあっぁぁあぁぁ。」
今の後半の叫びはマジ痛みというもので、決して感じての事ではない。
「この真秋、容赦せんッ。茜にはなっ!」
抓る力を強めただけだった。
「ひゅーひゅーだよ。まーさあーきくん。ひゅーひゅーだよー。ハーレム王キング!」
王とキングが被ってるというツッコミはしてもスルーされるので誰もツッコミはしない。
東京のラブなストーリーの名台詞の一つを叫ぶのは瑞希の姉、環希であった。
「一番年上なのに一番子供っぽいなっ。それに俺を槍の名前のエロい人みたいに言うなよ。俺は鬼畜じゃねぇ。」
「鬼畜……だよねぇ。私を始めて呼んだ時、何したっけ。」
あれはあのお方との繋がりを持つ人物との繋ぎ手として、茜を呼んだ時の事だったけれど……
そんな過去の事は知らんと真秋は突っぱねる。
「なんだよ椅子になって喜ぶような奴が俺を脅す気か。」
「脅すだなんてとんでもない。ただちょぉっ~とだけ摘まむ指の力を抜いていただきたいなぁって。ただ痛いだけかなぁって。」
バカなことは置いて帰路につく。歩道を占領しないよう広がっても横二人となって。
罰として茜は一人、有馬記念でのツインターボのように大逃げ隊列を組まされていた。
ある意味ではご褒美だという事で回りも気にしないようにしていた。
段々と茜の扱い方を心得ている真秋以下他3人の女性陣。
環希が順応しているのは年の功か。
茜は一人で1階の自宅、月見里姉妹は2階の瑞希の家へ、真秋は悠子と一緒に3階の自宅へと帰宅した。、
自宅内に入ると、ひとまず荷物をリビングに置いて一息ついていた。
そんな真秋とお土産を見て悠子は問いかける。
「そういえば、一つ多く買ったのは……」
悠子がさりげなく聞いてきたのは、悠子とお揃いのマー君ぬいぐるみの事である。
「あぁ、あいつのだよ。流石に直接渡せそうにはないから……郵送するだろうけど。手紙の一つも添えればカッコつくだろうかなって。」
あいつとは真秋の実妹・黄葉深雪の事である。
深雪は悠子にアパートの住所を教えてしまって以来、真秋に対して気まずいのだろうか、積極的な接触は避けていた。
「あいつも実家や隣家の事でそれなりに大変だろうからな。今は受験対策で忙しいかもしれないが。」
深雪は14歳ではあるが、誕生日が来ていないだけで中学3年生である。
本来であれば、恋に勉強にと四苦八苦している時期である。
「深雪ちゃんね、私と同じ学校を受けるんだって。」
それはつまり真秋の母校でもある。
悠子とも3つ離れているので深雪が合格したところで学校で鉢合わせする事はない。
悠子自身、まだ進路を決めあぐねているというのに、妹分でもある深雪の心配をしていた。
「そうか。そういえば、前にそう言う事を言っていたな。そういう悠子の進路はどうするんだ?就職ならもう既に一時試験とか終わってる時期だろ。」
進路については聞いていなかったと思っていた。戦後処理のような事をしていたため、現状の関係をどうするかで精いっぱいだった。
悠子に至っては夏休みからの例の事で大変だったし、殺人事件のような通常なら人生で一度でも鉢合わせもしたくない事が起こり。
気が付けば少しは暖かい恰好をする人が街中には出てくるに至っている。
今年度も半分を切っているのだ。
「永久就職出来たら良いなとは思ってるけれど、いきなりは迷惑だから……」
真秋は気が付けば悠子の口調が大分くだけているなと感じていた。
これも茜の影響だろうかと考えているが、実際の所はどうであろう。
案外、真秋が名前で呼んで良いと言った事から砕けているのではないかと推測も出来る。
「実は私……」
その後に続いた悠子の言葉に真秋は絶句する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます