第111話 需要高いのだろうか。あのお店。
「お兄ちゃん、どうだった?」
「ん、あぁ答えに困るけど、案の定とも言うべきか。女性恐怖症っぽいな。」
悠子ちゃんには病院に来る前に説明してある。
前日の日曜日は暇だったからその時間は充分にあった。
説明を聞いた後の、いや聞いている時からだけど悠子ちゃんは複雑な、そして申し訳なさそうな表情で一杯だった。
だから悠子ちゃんのせいではないと言ってはいたんだけど……
姉のせいでそうなってしまった事、そんな大変な中押しかけてしまった事。
普通に考えれば迷惑でしかないのだろうけど。
悠子ちゃんが訪ねてきたのも一つの転機なのではないかと思う事にした。
本当はもう少し一人でまったりしていたかったと思うけど。
世界はそれでも廻っている。人の数だけ廻っている。
俺の世界の廻りと悠子ちゃんの世界の廻りが隣接しただけの話だ。
先程月見里さんとばったりあったのも、いくらこの病院に勤めているのを知った上で来ていたとしても。
月見里さんの世界との廻りも隣接しているという事。
あまり人と関わりたくないと思う中、数少ない関りを持ちたいと思える人物。
それならもう少し連絡くらいしろよとも思うけど。
悠子ちゃんにしても月見里さんにしても、嫌な気はしない。
もう少し心にゆとりが出来ていれば遊びに行っても良いのではないかってくらいには。
先生は言っていた、誰かに協力してもらうのも一つの手だと。
あの先生の言う協力とは……表情と仕草を見る限りやらしい事にしか受け取れなかったけど。
「私に出来る事ってあるのかな?」
「う~ん。先生は誰かに協力してもらうのも手だとは言ってたけど。」
「お兄ちゃんは……裏切られたり陰で悪い事言われる事に過敏になっちゃったんだよね。」
「そうだな。センサーが働くのは無意識にそれを持ってる人を感じてるという事かなと思ってる。もしくはそういう偏見を抱いているんだろう。」
前者だとはずっと思っていたけれど、先生と話していてもしかすると後者も少なからずあるのではないかと。
ギャルとまでは言わないけど、見た目としてそっちに近い人でないとは言い切れない。
派手目な人、化粧濃いめの人が殆どだったかも。
最後のともえの見た目に近いというのは否定出来ない。
事実、古風っぽい人がセンサーに引っかかってはいない。
「それでも今の俺は一定の関係以上に踏み込めないのは事実だろうな。未成年の悠子ちゃんに言う事ではないけど、女の人に触れたいとかは今はあまり思えない。」
「だからこその誰かに協力と先生も言ったのだろうけど。結局少しずつ何かをしていって手探りで模索するしかないんだろうな。」
それ以上の意見はどちらからも出なかった。
結局はなるようにしかならない。未成年の悠子ちゃんに性的に協力してもらうわけにもいかないし。
ご飯食べたりするくらいならともかく。
結局それ以上何をして良いのか浮かばず少しずつ模索するという自己完結になった。
確かめる術はいくつかある。茜無料券を使えば色々わかりそうだし、最近知り合った月見里さんとご飯にでもいけばまた違ったものが見えてくるのではないかと。
しかしそんな自分の実験的なものに誰かを巻き込むのもどうなんだよと葛藤しているのも事実。
☆ ☆ ☆
「あ、お兄ちゃん。せっかくだからちょっとあそこに寄って行かない?」
病院からの帰り道、悠子ちゃんが指を差したのは、先日退院後に月見里さんと入ったあのねこみみメイド喫茶「アニスミア」であった。
近付いて行くとビラ配りのメイドさんからチラシを受けとる。
「月曜日限定、ポイント倍キャンペーン」と書かれたチラシだった。
裏を見てみると、「カップル限定、ポイント4倍キャンペーン。砂糖の多さによりプラスαあり。」と。
――――――――――――――――――――――――――――
後書きです。
月見里さんは仕事中なので流石に来ません。
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