モテ期到来?

第102話 お兄ちゃん入れて……

 あれから数週間が経ち、8月になった。

 ちょうど世間では夏の甲子園が始まる時期。

 真秋の母校は県大会2回戦で敗退していた。

 この間に刑事裁判は進められ、第一回公判でほぼ出し尽くしともえは何も否定せず第二回公判であっさり刑が確定した。

 あの時に田宮未美が漏らしたように2年の実刑、初犯であるとか背景が複雑であるとかを加味しても、証拠映像にある通り刃の向きが殺意を明確にしている事。

 そこはどうしても減刑対象にはならない。そしてともえも反論する気はなかった。

 完全に田宮未美の身内で固めてある裁判といえどもおかしいくらいに淡々と進むのはともえが全面的に全てを肯定すると決めていたからだった。


 これをともえの反省と受け取れば周囲からみれば心地いいものに映る。

 その真実はともえ本人にしかわからないのだが、ごねて刑について不服を申し立てはしなかった。


 自己防衛をしていて怪我をしていない事も5年以上にならなかった要因の一つかもしれない。

 ただし執行猶予は付かなかった。

 そこについても甘んじて受け止めるともえ。

 見る者が見れば牙を抜かれたゴブリン……オーク……狼。


 ともかくあっさりとともえとの決着だった。


 後は喜納貴志であるが、こいつは正直女性陣連盟という感じがするので、真秋は一人出しゃばる必要性を感じていない。

 二人も自殺未遂に追い込み、強姦数件、薬物強制使用。

 殺人未遂5年、強姦5年、薬物が10年以下と単純に考えて20年。

 一番多いのを採用なんてさせないとの事。累計でぶちこんであげるとの事。


 最低でも25年以上はとも田宮は言っていた。

 

☆ ☆ ☆




 8月に入ってからは特になにもなく過ごしていた。

 普通社会人なんてのはこんなものだ。

 特筆する事なんてない。仕事に行って家に帰って、また仕事行って。

 休日は甲子園のテレビ放送を見て。


 仕事なのだから何かイベントがあるわけではない。

 学生ならば休み時間、体育の授業、給食なり昼休み、実習、体育祭や文化祭、登下校とあるだろうけれど。

 社会人で社内恋愛でもしていなければ、何もない。


 小澤茜無料券を使うか月見里さんを飲みに誘うくらいしかないのだが……

 二人共酒弱いのにという思いもある。


 ともえとの事が片付いて、喜納はほぼ何もしなくてももうシャバには戻れないだろう事は裁判を待たずともわかっている。

 


 イベントなんてないなんて思ったのがフラグだったのだろうか。

 甲子園の第四試合を見ていると突然玄関のチャイムがピンポーンと鳴った。


 7回の攻防で良い所なのにと思いながらも玄関に行き、覗き穴から来訪者を確認する事無く扉を開ける。


 「はいはーい。お待たせしま……せんでした。」

 がちゃっと開けてがちゃっと締めた。


 胸の鼓動が早くなってくるのを実感する。

 何を今更。

 それはお互いであるのだろうけれど。


 「帰ってく……」

 俺は今はただ自堕落に仕事して家でごろごろしての生活を満喫していたい思いが強く、誰の来訪であってもあまり歓迎出来るゆとりはなかい。

 帰ってもらおうと思い伝えようとするけれど……


 「お願い。お兄ちゃん、入れて。」

 その声は震える声の悠子はそのまま泣き出してしまいそうだった。

 その声と、ドアを開けた一瞬の表情でそこまで感じ取ってしまえる程には悠子はわかり易かった。



 そして俺はと〇美氏の【お兄ちゃん入れて】を思い出したりしていた。



――――――――――――――――――――――――――――


 後書きです。


 さって、そろそろ悠子ちゃんひんむくよ。

 真秋にヘイト集まって来るヨ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る