第91話 ナースエンジェルみずきSOS
「お、おかえりなさいませ?」
検査している間に帰ったと思っていたのに月見里さんは病室にいた。
それも恐らく自分のナース服を着て。
ただ、なんとなく心の中で安心感のようなものがあった。
誰かが待っていてくれるというものがそう思わせたのだろうか。
「どうしちゃったんです?」
思わず敬語に戻ってしまった。あまりの衝撃に。
「いやあの、さっきナース服を見たいとおっしゃってたので……」
そんな事言ったっけ?心の中で見たいと思ったような気はしなくはないけど。
もしかしたら、また漏れていたのかも知れない。そうだとすれば、恥ずか死ぬ。
「えーと、ナースエンジェル?みずきSOS?」
思わずそんな事を口走ってしまう。あれは小学4年生ではなかったっけ。
「黄葉さんの心の病は黒のワクチンの影響ではないですよ?」
そういう問題ではないような……色々大丈夫ですかね?
白い看護服はある意味扇情的だという事を理解した。
見てはいけないと分かっているけれど、色々ラインが……
悲しいかな、下半身は無反応のままだけど。
いや、こういう時に反応したらだめだろうけど。
「あの、ナース服は大変魅力的なんだけど、本当に大丈夫?夜勤明けで本来は休まないといけなんじゃ。」
検査といってもそれなりに時間を要しているのでもう少しでお昼だ。
なんならこのまま帰る途中で昼食を取ってからでも良いと思っているくらいだ。
「そうなんです。そうなんですけど、少しでも黄葉さんに元気になって貰おうと。男の人っていうのはメイド・ナース・セーラー服で元気が出ると同僚からうかがったものですから。」
その三大衣装について教えた推定同僚の人には説教が必要ではないか。
偏り過ぎでしょ、そのチョイス。
レイヤーでもカメコでもないコスプレとは縁のない人がチョイスするコスプレ三大衣装でしょう。
所謂着ただけコスプレってやつ。
あ、でも月見里さんのナース服は仕事着だ……
そして、くるっと回った時に見えてしまったのですよ。
何がってそれは想像にお任せしますとしか言えないけれど。
魅惑のラインとしか言えないよ。
昨日会ったばかりだというのにこの急接近はなんだろう。
嫌な気がしないからかも知れないけど、少し心にゆとりが出てきているのかもしれない。
「元気……確かに驚いたし、眼福だし、ある意味癒されはするけれど。昨晩話していた時と違って少し大胆?だね。」
「じ、実は少し恥ずかしかったりします。仕事の時ならなんてことはないのですけど、自分からこんな事するなんて初めてなので……」
恥ずかしかったというのはどういう意味だろう。その答えは当てられそうにない。
「っというか、そろそろ着替えますね。トイレ使わせてもらいます。」
そういって月見里さんはトイレへと消え、鍵のロックする音が聞こえた。
耳を済ませば恐らく衣音が聞こえるのだろうけど、そこまで変態になる事は出来ない。
少ない荷物を整理し……たけれど、あっさりと終わってしまった。
スーツ類はクリーニングという話だったし、鞄とポケットの中身くらいしか荷物はなかった。
しばらくして月見里さんが普段着に着替え、バックを片手にトイレから出てきた。
ありきたりな感想だけど綺麗だった。
先程のナースと今朝からのエンジェルでナースエンジェルみずきというのも本当かも知れない。
「流石に帰りますね。あまり迷惑をかけるわけにも行きませんので。」
本来であればそのまま別れるのが筋なのだろうけど、このままというのも失礼にあたるのではと思い、つい引き止めるように声をあげた。
「あ、待って。昨日のお礼もあるし、帰りにお昼ご飯でもどうかな。」
こんな事を言うとナンパ野郎に思われてしまうかも知れないけど。
礼には礼を以って尽くすのが正道だと思う。
休む時間を奪ってしまうのは申し訳ないとは思うけれど。
「あっはい。」
振り返った月見里さんは妙に嬉しそうに見えた。
ちょっとだけ「アッガイ」に聞こえたのは気のせいに違いない。
――――――――――――――――――――
後書きです。
月見里さんとの話があと1話交えた後、ともえ断罪へと移ります。
さて、どんな昼食を取るのかね?
牛丼?焼肉?ラーメン?うどん?シースー?
次点はお好み焼きです。
多分や〇い軒かな。味噌カツ定食かな。
しかし皆さんここがどこだか覚えておりますか?
真秋が元々住んでいた隣の駅になにがあるか覚えてますか?
つまり現アパートの最寄り駅に何があるか覚えてますか?
ヤンデレの……これ以上はもうバレてると思います。
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