第87話 一方その頃他の4人は。
「おい大丈夫かっ」
うぷっと声を漏らし吐いた黄葉はそのまま倒れ込んだ。
座敷タイプの飲み屋ではなく椅子にテーブルタイプのため、布巾で押さえてはいたものの、崩れ落ちる時に溢れたものが衣服等に付着していくのが周囲に見えた。
横に座っていた月見里が咄嗟に手を出したために激しく床にダイブはしなかったものの、月見里を巻き込むような形で黄葉は倒れ込んだ。
当然月見里にもその吐しゃ物は付着してしまっている。
懸命に呼びかけるが黄葉の意識は回復しない。頭はぶつけていないが身体は出来るだけ揺すらないようにしている。
月見里が意識のない人に対する対応は職業がら心得ているのだろう。
杜若が店員を呼ぶために席を離れた。
黄葉の正面に座っていた素麺が布巾を両手に黄葉の顔周りを拭き周辺も拭いていく。
月見里と素麺は阿吽の呼吸のようだった。
清水と物袋は二人の高校時代の友人だから知っているが、二人の息は当時からぴったりだった。
他の4人は近くに寄って声を掛けるくらいしか出来ない。
近くに消防があるのか、救急車は10分程度で到着した。
杜若に声をかけられた店員が店長を呼び即救急車を手配したようだった。
それから店内は慌ただしかったが、救急隊員から声を掛ける前に月見里が同乗すると名乗りを上げた。
自分は看護師なので状況も詳しく伝えられるからだろう。
杜若が自分もと言ったが、家族ではないからなのか人数制限なのかはわからないが、丁重にお断りされた。
「じゃぁ……あ、ヘイタクシー。」
ちょうどタクシーが見えたので手をあげた。
「俺も追いかけるわ。波多野、これ俺と黄葉と月見里さんの分のお金。多分3人分あるだろ。」
「あ、あぁ。」
波多野は戸惑いながらも福沢諭吉を数枚受け取った。
波多野は会費……そんなに高くないんだけどなと思いながら。
「お金が多いのはお店に迷惑かけたからな、多分弁償とかそういうのあったらいけないからな。」
「私もついてくわ。瑞希着替えもないだろうし。」
救急車の行き先が偶然とはいえ月見里瑞希の職場でもある病院とは思っていなかったが。
「全員で行っても仕方ないし、今日はこのままお開きという事で仕方ないな。じゃ、行ってくる。」
「さっきの救急車を追いかけてください。どこかの病院に行くと思うので。」
救急車で黄葉と月見里、タクシーで杜若と素麺と半分のメンバーがいなくなってしまった飲み会の残りの半分は……
店に代金を清算し終わると店の外に出て集まっていた。
幸いかはわからないけれど、迷惑料とかは請求されなかった。
「不完全燃焼ではあるよな。」
波多野がぽろっと漏らす。
「大事に至らなければ良いけどな黄葉。そんな飲んでもないのに心配ではあるけど。」
山口が続いた。山口の表情には本当に心配している事が窺えた。
先程はテンパっていたので声を掛けるくらいしか出来なかったけれど、本当は着いて行きたかったのかもしれない。
「杜若の言葉じゃないけどこれで解散かな。あ~あ。今日こそは合コンで彼女ゲットだぜと思ったんだけどな。」
山口が残念そうにノビをしていた。
「女性陣のいる前で言う言葉じゃないだろう。まぁ今日は仕方ない。ある程度時間経ったら連絡してみる。」
「じゃぁ私達は……帰りましょうか。」
清水は波多野の手を引っ張った。
「あーそうか。二人は付き合ってるんだっけか。」
「えぇ、突き合ってるわ。特定の人のいない3人ずつのための会だったんだけどね。また今度改めてしましょう。」
清水の言葉のニュアンスに違和感を抱きつつも山口は手を挙げて帰っていった。
「呼び止めないって事は……」
「そうだね。彼はそっちには興味ないだろうね。」
物袋がようやく口を開いた。
「じゃぁ、3人でする?中途半端なままだったから色々不完全燃焼だっただろうし。」
「私は良いけど、彼は良いの?」
彼とは波多野の事、3人でするとは夜のお相撲の事。
「さっき山口さんの問いの返事で突き合ってると言ったじゃない。」
「あぁ、言葉のニュアンスがおかしいと思ったらそういう事だったのか。」
「そう言う事。私は貴女がそっち方面な事を知ってるし、思い出したかと思うけど私が両刀なのは知ってるでしょ。」
それから3人は波多野と清水が同棲している家へと向かう。
「それにしても彼は本当に大丈夫かな。」
「カズの事?大丈夫だよ。私達二人はSとMを兼ね備えたハイブリッドだから。」
カズとは波多野和俊の事であり愛称である。
「いや、そうじゃなくて救急車で運ばれた彼の事。私達が到着してからそんなに経ってなかったでしょ。何かトラウマでも持っててそれが発症したような感じだった。」
「確かに心配ではあるけど……彼の事はカズからは一人来れなくなった人がいるから急遽メンバー追加したみたい。」
「野球部の仲間で、高校の頃から突き合っている彼女がいると聞いてるから本当の人数合わせで参加してたみたいだけどね。」
「それじゃぁ、今日のは合コンというよりは普通に飲み会の色が強かったわけだ。」
「でもこの後3Pで発散すれば良いじゃない。山口さんもあの感じだとまたやりたそうだし、メンバーはともかくまたやると思うよ。」
「発散って……まぁ彼女は数人いるけど男は久しぶりだけどね。」
「そんな相手を探すための場でもあったんだけどね。」
「そういうコミュニティに参加するのも気が引けるし。ああいうのはそれ目当てが来るから新鮮さとかないから。」
波多野と清水と物袋は波多野と清水が同棲する愛の巣へと消えてった。
一方その頃、帰宅を果たした山口邸……という名のアパートの一室。
「やっぱ一流企業に勤めているだけあって凛としていてカッコよかったなー。ああいう人を押し倒したい。ああいう人のくっころを見たい。」
どちらかの性格・性癖が真逆であったならば二人は付き合っていたかも知れない。
脳内でくっころをしながら自家発電に勤しんでいた。
その前に杜若にメールをした所、目を覚ました、大事には至っていないという返事を貰った後の行為ではあるが……
――――――――――――――――――――――――
後書きです。
一応残った4人も心配はしています。
心配はしているけれど、各々のしたい事をするために解散しました。
山口を3人のプレイを見せつけるとかいう案はありましたがやめました。
月見里以外のキャラについては当初存在しない者達だったので、掘り起こしても大変だなと思ってるので。
瑞希と柚希は百合なのか問題はマ〇コの番組で明らかに……ならなねぇ
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