第946話 帝国西部噂
ドラセム侯爵領が活性化する一方、明らかに状況が悪化していく地域があった。レーベルク帝国の西部である。
ここは現皇帝の弟を支援する派閥の拠点が多い地域であり、コルマノン王国への無理な侵略行為、現皇帝派と皇弟派との内乱など軍事行為ばかりしていたため、内政がおざなりになっていたからである。
サラたちも流入してくる商人たちの噂話や各地に送るようになった諜報部隊からの情報でそれらを把握していた。特に水精霊シルビーによる情報網は、他国も含めた動向把握において、≪転移≫と併せてドラセム家の基幹となっている。現状、これだけ最新情報をすぐに入手して追加確認もできる体制はどの国家にもない。コルマノン王国だけがドラセム侯爵家から重要部分を抜粋して伝えられるぐらいである。
コルマノン王国の宰相ジョエリー・ヤンクシオに情報提供のために訪問する。
「そうか、やはり帝国西部の状況はかなりまずそうか」
「何か手をうたれますか?」
「いや、その状況でヴァーヴ侯爵領へ再度侵略してくる余力も無いであろうし、基本は他国のことであるので皇帝の対応を様子見とする。もちろんこちらから侵略するつもりは無いが、他国の国力が少々低下してくれる方が王国の平穏に繋がるのでな」
「かしこまりました」
「王城に来たついでに魔術師団に顔を出してやって貰えないか。魔術師団長が、ドラセム侯爵を領主になんか任命するから魔術師団の底上げが滞ってしまっていると嘆いていたぞ。ま、本気もあるだろうが、顔を見たいとの愚痴でもあるだろうから、たまには、な」
「はい」
宰相の指示に従い、王国魔術師団長ブロワール・レデリクスのところにも寄る。
「ドラセム卿、忙しい中に来て頂いてありがとうございます!」
「ご無沙汰して申し訳ありません」
「いや、もう交換でお見せするめぼしい魔導書も無いのが申し訳ないのですが、魔術師団員の活気が変りますので、これからもたまで結構ですのでお願いします」
その後は適当な魔法の実演を行って見せてから、帰宅するのであった。
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